あきののに つまなきしかの としをへて なぞわがこひの かひよとぞなく
秋の野に 妻なき鹿の 年をへて なぞわが恋の かひよとぞ鳴く
紀淑人
秋の野に、妻のない鹿が長い間「なぜ自分の恋には効きめがないのか」と、「かいよ」と鳴いている。
「かひよ」は鹿の鳴き声の擬音で、これに効果という意味の「かひ(効、甲斐)」をかけています。
作者の紀淑人(き の よしと/よしひと)は平安時代前期から中期にかけての貴族にして歌人。醍醐朝では武漢、朱雀朝、村上朝では地方官を歴任しました。古今集への入集はこの一首のみです。