ふじのねの ならぬおもひに もえばもえ かみだにけたぬ むなしけぶりを
富士の嶺の ならぬ思ひに 燃えば燃え 神だに消たぬ むなし煙を
紀乳母
富士山のように、かわなぬ思いに燃えるなら燃えるがよい。神でさえ消すことのできない、むなしくくすぶる煙よ。
恋の歌で「思ひ」の「ひ」に「火」を掛けるのは常套手段ですね。火山である富士山が煙を吐いている光景が普通に見られたことを物語る歌でもあります。
第57代陽成天皇の乳母であったので紀乳母(き の めのと)と呼ばれた紀全子(き の ぜんし)の歌が 0454 以来の登場。古今集への入集はこの二首です。