ひとにあはむ つきのなきには おもひおきて むねはしりびに こころやけをり
人にあはむ つきのなきには 思ひおきて 胸走り火に 心焼けをり
小野小町
思う人に逢う手立てのない闇夜には、熾き火のような思いで起き、胸が騒いで走り火に心が焼けることです。
「つき」に「手立て」の意と「月」が掛かっているのは一つ前の 1029 と同じですね。「思ひ」の「ひ」は「火」、「おきて」は「起きて」と「熾」、「走り」は胸騒ぎがする意の「胸走り」と「走り火(ぱちぱちと跳ねる火)」が掛かっています。掛詞を巧みに多用している分、現代人にはなかなか難解な歌ですね。