かくれぬの したよりおふる ねぬなはの ねぬなはたてじ くるないとひそ
隠れ沼の 下よりおふる ねぬはなの 寝ぬ名は立てじ くるないとひそ
壬生忠岑
隠れ沼の底から生えている 「ねぬなは」の名のように、共寝をしていないという噂は立てないでおこう。だから私がやって来ることを、どうかいやがらないでほしい。
「隠れ沼」は人目につかないひっそりとした沼。「ねぬはな」は蓴菜(じゅんさい)のこと。「共寝をしていないという噂は立てない」なので、回りくどいですが、共寝しているとの噂が立っても構わないということですね。第五句がわかりづらいですが、「来る+な+いとひ+そ」で、来ることをいとうなという命令表現となっています。