漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 041

2023-05-27 04:56:13 | 貫之集

こゑをのみ よそにききつつ わがやどの はぎにはしかの うとくもあるかな

声をのみ よそに聞きつつ わが宿の 萩には鹿の うとくもあるかな

 

鹿の鳴く声をいつも遠くに聞くばかりで、私の家の萩には鹿はいっこうに寄って来ないことよ。

 

 「わが家の萩に寄って来ない鹿」はもちろん、来訪してくれない愛しい人の比喩。
 鹿と萩の組み合わせは多く歌に詠まれ、貫之集の 235 にも類歌がありますし、古今集の 0215021602170218 も同様ですね。また、本歌と同じく、鹿が萩を恋するという構図も定着しています。

 

とめきつつ なかずもあるかな わがやどの はぎはしかにも しられざりけり

とめきつつ 鳴かずもあるかな わが宿の 萩は鹿にも 知られざりけり

(貫之集 第三 第235番)