延喜十三年十月、尚侍屏風の歌、内裏の仰せにて奉る
野に人あまたいるところ、秋
まねくとて きつるかひなく はなすすき ほにいでてかぜの はかるなりけり
招くとて 来つるかひなく 花薄 ほに出でて風の はかるなりけり
延喜十三年十月、尚侍(ないしのかみ)の四十賀が内裏で催された際に奉った歌
野に人がたくさんいるところ、秋
私一人が招かれたと思った来たのだけれどその甲斐はなく、花薄の穂が出て自分が招かれているように見える風のいたずらだった。
少し歌意がわかりづらいですが、花薄の穂がでた時期の野辺に大勢の人が繰り出している絵柄の屏風絵でしょうか。密かに想いを寄せる異性からの招きに心ときめかせて出かけていったけれど、その甲斐もなく、実は他にも大勢の人が招かれていたということを、屏風絵に準えて詠んだものでしょうか。
詞書にある尚侍(ないしのかみ)は藤原定国の妹藤原満子(ふじわら の みつこ)のこと。001、002 が詠まれた定国四十賀の主催者でもあります。兄の四十賀から8年を経て、自身の四十賀が催されたということですね。028 までの六首、この時の屏風歌が続きます。