すみのえの まつにはあらねど よとともに こころをきみに よせわたるかな
すみのえの 松にはあらねど 世とともに 心を君に 寄せわたるかな
住吉の松ではないけれども、いつの世にもかわりなく、あなたに心を寄せ続けています。
「すみのえ(=住吉)」が松の名所であることから、同音の「待つ」にかかる枕詞で、ここでも「松」には「待つ」も含意されているのでしょう。「住吉の松のようにいつまでも」「住吉の松ではないが待っている」の両義ということですね。
この歌は後撰和歌集(巻第十「恋二」 第638番)に入集しており、そこでは第二句が「波にはあらねど」とされています。詞書には「こころざしありける女につかはしける」とあります。