おほかたは つきをもめでじ これぞこの つもればひとの おいとなるもの
おほかたは 月をもめでじ これぞこの 積もれば人の 老いとなるもの
在原業平
そもそも月を賞美するのはやめておこう。月こそが積もり積もって人の老いとなるのだから。
「おほかた」は少し訳しにくいですが、ここでは「大雑把に言って」くらいの意味でしょうか。天の月と暦の月を掛け合わせて、あまり月を賞美すると自身の老いが早まってしまうよと詠んだ機智ですね。業平の歌にしては珍しく詞書が付されていない作。伊勢物語では第88段に載っています。