漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0706

2021-10-05 19:38:01 | 古今和歌集

おほぬさの ひくてあまたに なりぬれば おもへどえこそ たのまざりけれ

大幣の 引く手あまたに なりぬれば 思えどえこそ たのまざりけれ

 

よみ人知らず

 

 あなたは、大幣のようにたくさんの女性から引く手あまたになってしまいましたので、愛しいとは思っていても、とても頼みにすることはできません。

 「大幣」の意味を weblio古語辞典 から引用します。

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①大串(おおぐし)に付けた「幣(ぬさ)」。「祓(はら)へ」に用い、終了後、人々がこれを引き寄せて体をなで、罪やけがれを移して川や海に流した。
②引く手あまた。引っ張りだこ。多情。移り気。▽①の用例の和歌から生じた比喩。
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 最後の一文の「①の用例の和歌」というのがまさしくこの歌で、これがもととなって②の意味が生じたということですね。「思へばえこそ」の「え」は、後に打消しの語を伴って「とても~できない」の意を表す副詞。詞書には「ある女の、業平朝臣を所定めずありきすと思ひて、よみてつかはしける」とあります。「所定めずありきす」は、あちらこちらと多くの女性のもとに出かけていく意で、その状態を「大幣」に喩えたのですね。次の 0707 が、この歌に対する業平からの返しになっています。



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