かりてほす やまだのいねの こきたれて なきこそわたれ あきのうければ
かりてほす 山田の稲の こきたれて なきこそわたれ 秋のうければ
坂上是則
刈り取って干す山田の稲が扱きこぼれるように、涙をこぼしながら泣き続けているよ。雁が鳴きながら空を渡るように。秋がつらいので。
詞書には「屏風の絵によみあはせて、書きける」とあります。冒頭の「かり」は「刈り」と「雁」、第四句「なき」は「鳴き」と「泣き」の掛詞になっています。また、第三句「こきたれて」が稲がこぼれるさまと涙がこぼれるさまの両義、第四句「わたれ」が雁が鳴いてわたるさまと作者が泣き続けるさまの両義となっていて、巧みに二重の意味が詠み込まれていますね。
0863 から始まった巻第十七「雑歌上」はここまで。明日からは巻第十八「雑歌下」のご紹介です。