あけたてば まづさすひもの いとよわみ たえてあはずは などいけるかひ
明けたてば まづさすひもの いと弱み たえてあはずは など生けるかひ
夜が明け始めて日が差すと、まず最初に腰の紐を挿して締めるが、その糸がとても弱くて切れてしまうのと同じように、私たちの仲が切れて逢えなくなってしまったら、どうして生きている甲斐があるだろうか。
「(日が)射す」と「(紐を)挿す」、「日」と「ひ(も)」、「いと(たいそう、の意)」と「糸」と、掛詞を駆使した技巧的な一首。「たえて」も、糸が切れる意を仲が途絶えてしまう意の両義になっていますね。冒頭「明けたてば」の「たつ」は立春、立秋などという場合の「立」と同じ語法でしょう。