あづさゆみ いそべのこまつ たがよにか よろづよかねて たねをまきけむ
梓弓 磯辺の小松 誰が世にか よろづ世かねて 種をまきけむ
よみ人知らず
この歌は、ある人のいはく、柿本人麿がなり
磯辺の小松は、いったい誰の世に、万代も先を見越して種を蒔いたのだろうか。
「梓弓」はここでは「磯辺」の「い」にかかる枕詞。弓を「射る」ことから、同音の「い」にかかっています。第四句の「かね」は「かぬ(兼ぬ)」の連用形で、ここでは「予測する」意。生長の遅い松がここまで大きくなるのにどれほどの時をへてきたのか、との詠嘆の想いですね。