わたのはら やそじまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出ぬと 人にはつげよ 海人の釣り舟
小野篁
広々とした大海原に、多くの島を目指して漕ぎ出したと人に伝えておくれ、漁師の釣舟よ。
詞書から、隠岐に流罪となるに際して詠まれた歌であることがわかります。2年後には都に召喚されることにはなるのですが、流罪となり遠方の島へとまさに舟が出ようとするその瞬間の無念さ、失望は想像するに余りありますね。
作者の小野篁(おの の たかむら)は 0335 に続いて2度目の登場。この歌は百人一首(第11番)にも採録された名歌ですね。
まったくの余談ですが、古今和歌集に百人一首採録の歌は21首ありますが、二首続くのはこの箇所だけです。