あけぬとて かへるみちには こきたれて あめもなみだも ふりそほちつつ
明けぬとて 帰る道には こきたれて 雨も涙も 降りそほちつつ
藤原敏行
夜が明けて、愛しい人のもとから帰る道々では、雨も涙もしきりにこぼれ落ちることであるよ。
「こきたれて」は漢字で書けば「扱き垂れて」で、「しきりにこぼれ落ちる」意。現代の語感からするとやや特異な印象を受ける語ですね。古今集ではこのあと 0932 でも登場します。
かりてほす やまだのいねの こきたれて なきこそわたれ あきのうければ
かりてほす 山田の稲の こきたれて なきこそわたれ 秋のうければ
坂上是則