九月、霧山をこめたり
ちりぬべき やまのもみぢを あきぎりの やすくもみせず たちかくすらむ
散りぬべき 山の紅葉を 秋霧の やすくも見せず 立ちかくすらむ
九月、霧が山を覆う
いずれは散ってしまう山の紅葉に秋霧がかかっている。どうして霧がこうして美しい紅葉をたやすくは見せずに、隠してしまうのだろう。
せっかくの美しい紅葉を霧が立ち込めてかくしてしまっているという歌ですが、それを嘆いて見せつつ、その実は霧を通して紅葉がほのかに(おそらくは薄紅色に)見える情景の風情を愛でてもいるのでしょう。
この歌は拾遺和歌集(巻第三「秋」 第206番)に入集しています。