漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 139

2023-09-02 05:39:33 | 貫之集

延長二年五月、中宮の御屏風の和歌、二十六首

集まりて、元日、酒のむところ

きのふより をちをばしらず ももとせの はるのはじめは けふにぞありける

昨日より をちをば知らず 百年の 春のはじめは 今日にぞありける

 

延長二年(924年)五月、中宮様に奉呈した屏風歌二十六首

集まって元日に酒を飲んでいるところ

昨日よりも以前のことはさておき、これから百年も続くご長寿の最初の春が今日という日なのです。

 

 「中宮」は第60代醍醐天皇の中宮藤原穏子(ふじわら の おんし/やすこ)を指します。「二十六首」とありますが、実際には二十二首の採録です。中宮の長寿を願う歌ですが、考えて見れば昔はいわゆる数え年で、元日には全員が一つ歳を重ねたわけですから、元日を祝う感覚は現代よりもずっと大きかったのでしょうね。