70年弱にわたる投資歴を持ち、その資産を18億円にまで膨らませた87歳の現役デイトレーター、藤本茂氏。そんな藤本氏が、「株を選ぶときに一番重視していること」 や「企業の経営収支の中で投資家がみるべきポイント」は?
株を選ぶときに何を見ているかというと、一番のポイントは「増収・増益・増配」であるかどうかです。要するに、売上が増え、利益も増え、利益が配当に回っているかどうかを見るのです。
デイトレードは短期的な値動きで売買を繰り返しているので、長期的な利益をあまり気にしないデイトレーダーもいます。しかし私としては、その考え方は違うと思いますね。やっぱり株を買うのは、長期的に成長が見込める株がいいと思っています。
「成長している株ならば、長期で持っていたほうがいいのでは?」と思うかもしれません。けれど、長期的に株価が上昇する株も、値上がりと値下がりを繰り返すわけですから、デイトレードで回転売買したほうが多額の収益を得られます。
たとえば、1株1000円で1000株購入した銘柄が、毎日上下50円の範囲で株価が動きつつ、1年後に2000円の値を付けたとします。長期保有していれば、100万円の利益です。
これに対して、仮に底値で買って天井で売ることができれば、1日で5万円の儲けです。1か月間(市場が開いている20日間)毎日たった1売買するだけで、1か月で100万円の儲けとなります。長期保有で1年かかる儲けを、たった1か月で得ることができるのです。
もちろん実際には、どんな手練れの投資家であれ、底値で買って天井で買うことは難しいので、その半分の25円でよしとしても、1か月で50万円。1年もあれば600万円の儲けです。
しかも長期投資では、仮に先ほどの株が1800円まで上昇していたら、「もう少し下がるまで待とう」と考えていたら結局手を出せずに終わってしまった……ということがよくあります。
ところがデイトレードでは、すでに上がっていたとしても、「明日上がる」と思ったら買いにいくことができます。
たしかに値下がりしている株でも、値上がりしている株と同様に上下動はあるので、いいタイミングさえ捉えれば利益を上げることはできます。ただし、上昇基調にある株よりもリスクは高くなりますから、なるべく手を出すべきではないでしょう。
ネットで決算情報を検索すれば、「増収・増益・増配」のデータはすぐにわかります。とくに私が重視しているのは「増収・増益」かどうかです。
売上高が増えていても減益になるケースも少なくありませんから、この2つが揃っていることに大きな意味があります。
収益率のなかでも、とりわけ「経常利益」「純利益」を見るようにしています。「営業利益」はあまり見ていません。本当は全部見てもいいのですが、常に時間が足りない状態なので、自分のパフォーマンスに一番直結する指標に絞っているのです。
経常利益は会社の収益力を示すものですから、非常に重要です。純利益だけでは、たまたま臨時的な収入があったり一時的な損失を出したりしたケースも含まれるので、不十分なのです。
ただし、配当金の利益は純利益ですから、純利益が多いほど配当金支払余力が大きくなります。そのため、株主にとっては純利益も重要なのです。
企業が株主に利益を配分する配当利回りは、3%くらいあれば、まぁいいほうだと思います。私がもらっている配当金は年間合計3000万円程度なので、資産18億円からいえば2%もありません。
配当利回りが5%を超えるような、非常に高い配当をくれる会社もありますが、私は「高配当」よりも「成長性」を重視しています。
また、「高配当」といえば聞こえはいいですが、利益が下がれば配当率は上がりますからね。ですから、「高配当=優良株」とは断定できません。
高配当の銘柄を購入したはいいけれど、株価が下落してしまった……というケースは多々あります。また、業績が悪くなったから高配当になってしまったような銘柄では、そのまま業績が悪化し続けた場合には、企業から「配当予想の修正」が出され、減配となるケースもあります。
「配当が高ければ高いほど株主が得するのでは?」と思う人はよく考えてみてください。税引後の利益である「純利益」のうち、会社がどれだけを配当金の支払いに向けたかを「配当性向」といいますが、大企業を中心に配当性向は30~40%のところが多いです。
配当性向が高いということは、その分「会社の利益を株主のために使ってしまっている」ことを意味します。
とくに新規上場したばかりの企業に多いのですが、配当ゼロで利益を「今後の成長のために先行投資する」と表明する企業もたくさんあります。私は成長していく企業が好きなので、配当をそこまで重視していないのです。
その会社が配当についてどういう考えを持っているかを知ることは重要ですが、高配当狙いのときにも、配当利回りの高さだけに注目するのでは、そのうち足をすくわれるでしょうね。
単に高配当だからといって銘柄を選ぶよりは、業績が安定していて、安定的に同じ水準の配当金を出す企業を選ぶのがいいでしょう。