『名も無く豊かに元気で面白く』

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中国で“なんちゃって都市”「ゴーストタワマン」が増えている…

2025-02-09 05:13:34 | 日記
縮小が続く中国不動産産業、その象徴的存在がかつて業界最大手だった不動産デベロッパー・碧桂園(カントリーガーデン)だ。必死に生き残りの道を模索しているが、売上は半減。危機的状況が続いている。 1月14日、碧桂園は公表を先送りしていた2023年通期、2024年上半期の決算を発表した。2024年上半期の売上は1021億元(約2兆2000億円)、前年比55%減と大きく落ち込んだ。最盛期と比べると、ほぼ3分の1にまで減少してしまった。 売上は減っても、借金が減ったわけではない。社債や銀行融資は別にしても、下請け業者への未払いなどを含む買掛金残高が4065億元(約8兆9000億円)、すでに販売済みで工事を完成させる義務があること示す契約負債が4201億元(約9兆2000億円)と天文学的な数値だ。この返済に全売上を投入しても丸4年が必要となる。 碧桂園は2010年代半ばから怒濤の急成長を続け、そして2020年代の不動産市場急落の波に飲まれて墜落した。この短い栄光は習近平総書記の肝いり政策に始まり、習近平政権の規制で終わった。 
2010年代、中国の中西部には巨大タワマン団地が多数建設された。それはいったいなぜか? 中国は上海市や広東省を属する東部沿海地域が経済的先進地域で、中西部の発展は遅れていた。東部では20世紀末から不動産価格の上昇が続いてきたが、中西部で本格的な上昇が始まったのは2010年代半ばからだ。 その背景には政治的要因が大きくかかわっている。習近平政権は2014年に新型都市化と呼ばれる新政策を打ち出した。人口が農村から都市に移る都市化は近代化において必然の過程だ。一般的に都市住民のほうが生み出す付加価値は大きい。都市住民の比率が高まれば、それだけ国の経済力も増すことになる。 ただ、急激すぎる都市化は混乱を招くとして中国政府は慎重なペースを守ってきた。悪名高い戸籍問題はその象徴だ。都市住民の戸籍と農村住民の戸籍は厳格に区別されてきた。農民は都市労働者となっても戸籍を移転することはできず、「出稼ぎ農民」という身分から抜け出せない。都市に住んでいても異邦人扱いで、子どもの教育や社会保障などは戸籍のある住民とは差別がある。 新型都市化は農民が都市住民となるための条件整備を明確にし、都市化を加速させる政策だ。ただし、どの都市でも受け入れが自由になったわけではない。 
都市の規模別に常住人口1000万人以上を超大都市、500万~1000万人未満を特大都市、100万~500万人未満を大都市、50万~100万人未満を中等都市、50万人未満を小都市と分類した上で、超大都市、特大都市への人口流入を減らし、それ以下の都市を発展させるという方針だ。都市化といっても大都市をさらに巨大化させるのではなく、小粒な都市を増やす、中規模の都市を大きくするというわけだ。 新型都市化によって中西部の都市の住宅需要が増加するはず。そうした思惑から住宅建設が進められた。東部とは違いなかなか不動産価格が上がらず資産を増やせていなかった中西部の住民たちにとっては千載一遇のチャンス到来と、不動産投資が一気に拡大した。 ただ、中国の新型都市化は戦略を大きく間違えていたと言わざるをえない。というのも、多くの人々は単に「都市に住みたい」のではなく、「北京や上海のような大都市に住みたい」と考えている。ハコだけ作ってもそれに見合うだけの需要はない。 そもそも都市は一定の空間に産業と人口が密集することにより、効率を上げ、人間の交流に伴うイノベーションを促進させることに真価がある。先日まで畑だったド田舎に巨大マンション群を作り上げたとしても、それは“なんちゃって都市”にしかならないというわけだ。 実際には人口の移動・定着が思うように進まず、更には将来的な人口減少が予測されるにも拘わらず、住宅建設は主に中小の都市に集中してきた。 
住宅だけではない。高速鉄道も日本の新幹線建設と比べると、中国の開発ペースは異常に早い。というのも、駅や線路は都市部ではなく郊外に通すことが多いため、土地収用などの手間があまりかからないからだ。 スムースに建設できるが、その代わりに誰も使いたくない辺鄙な場所に駅ができることになる。鉄道効果で周りが発展すればいいが、大失敗して乗降客数が1日十数人、駅にはバスもタクシーもいない、といったゴースト高速鉄道駅が爆誕することになる。 都市建設が「低密度」❝「低密度」とは上海交通大学教授陸銘は、中国政府が進めてきた都市化政策が、中小都市の建設にこだわるあまり、大きな非効率を生んでいることを指摘し、それを「低密度の都市建設」と名付けている。 ❞であることによって、サービス業の発展が抑えられる、労働者の実質賃金が抑えられる、あるいは過剰な債務を地方が負うことになるといった様々な問題が生じている、というのだ。その上で陸は、今後は人口500万人以上の都市に人口を集中させるよう、戸籍改革を含めた都市化政策の見直しを行うべきだ、と提言している。三線以下の都市居住者は全都市人口の66%を占めているにすぎないが、都市における住宅ストックの72%以上を占めている。また、2020年には、三線都市における建設業の総生産額は、全国の約80%を占めていたという。 しかし、上述のような「低密度の都市建設」と急速な高齢化が相まって、三線都市では今後の住宅需要の回復が見込めない。 加えて、三線都市では大都市に比べて家計資産のうち不動産の占める割合が著しく高く、また地方政府は財政資金調達における土地依存の度合いが高い。大都市には不動産以外にも住民の投資対象、政府の税収源が多いが、地方都市には選択肢が少ないことの表れだろう。それだけに住宅価格の下落がもたらす影響は大都市以上に大きい。 すでに三線都市の不動産空き家問題は一線および二線都市と比べて深刻化している。日本の空き家問題は「住む人がいなくなった地方の古い家がたくさんある」ことだが、中国では「地方の新築マンションが空っぽのまま放置されている」ことが大きな問題なのだ。 新型都市化の波に乗って成長した碧桂園。一時は大成功を収めたが、そもそも住みたい人がいない不動産を作りまくっていたという致命的な欠点があった。これを放置していればバブルのリスクが高まると懸念した習近平政権は不動産産業の野放図な発展を抑止する規制を2020年に発表、これが引き金となって碧桂園と中国不動産産業の転落が始まった。 やがて行き詰った中国の不動産業界では、「史上最大の粉飾決算」が巻き起こる。そして大きすぎて潰せないという問題が発生する。

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