KINDLEで本を読み始めて数カ月がたった。
TABLETで本(電子本)を読む、というのは目が悪くなって細かな文字に難儀する人種にとって、ひとつの福音の様なもの、そんな風に思っている。
まことすばらしい、とりわけ電車の中、それも座席を確保した時などは無上の喜びですらある。
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さて、H.G.ウェルズの短編「世界最終戦争の夢-傑作集2」、あらためて読んでみて(数十年ぶりに)やはり傑作ストーリの集合であることを再認識した。
(傑作集1には有名な「タイムマシン」が収録されている)
独特の語り口と19世紀の英国風俗が入り混じって英語版では多分読解できなかったろうと思う、日本語版で大正解、本当に面白かった。SF中毒だった若い頃に比較して冷静に向き合える分、今読んだほうが面白くも感じた。
傑作集1(文庫本)は今でもとってあるので、当時は傑作集2は残す価値が無い、と判断した様である、あまりにも昔のことで良く覚えていない。
幾つかのエピソードを紹介すると、
「珍しい蘭の花が咲く」
蘭の花が自らを繁栄させるために人をコントロールして、、、、このパターンのSFは筒井康隆の短編にもあったので、これが原型かも知れない。
「盲人の国」
外界から閉ざされた盲人の国に紛れ込んだ男が、ここの王になろうとするが、反対に追い詰められて逃げ出す羽目になる、、、 ショーン・コネリー主演の映画で「王になろうとした男」というのがあったが、これがソックリ似た話。
「故エルヴシャム氏の物語」
これはトワイライトゾーン”ネタ風”の不死をテーマにしたエピソードで、ドラマ化したら面白いと思う。
「ダチョウの売買」
この話が一番好きで、SFでは無く詐欺ネタのエピソード。
船の中で、ある金持ちの乗客の高価なダイヤが、ダチョウ(動物園への売り物)に食われて、そのダチョウは他の五羽にまぎれてしまった。ダチョウの持ち主は1羽づつセリを行うこととし、大勢がそのセリに参加することとなった。
「最後のラッパ」
世界の終末をファンタジーとして表現したもので、コミカルな味わいがある。
「世界最終戦争の夢」
第二次世界大戦を予言した話というか、ヒトラーの台頭を”夢”と”入れ替わり”を使って、戦争に踏み切ることの是非を問うている様な話。 まぁこのエピソードが書かれた時代はナチスの勢いが現実となっていたはずなので予言では無いと思うが、独特の語り口が”うまい”。
他にもいろいろとあったがどれも今日のSFの様々なジャンルの原点とも言える内容。
やはりこの人はSFの祖というに相応しい。
PS:その後調べてみたらこれの文庫本(創元推理文庫)があった、やはり昔から気にいってた様である。