どちらもともに川島雄三監督の面白い映画、ともに映画館で見損なってネットで何とか。
さて「とんかつ大将」 (1952年公開)
この映画は1952年公開とあって画面がスタンダードサイズ(10年前のTV画面のサイズ) 、モノクロでともかく画面が暗い。
天井の電気を消して暗闇で初めて画面が見える、そんな感じで昔は暗くないと見れないのが映画だった。
そんな古き良き映画の香りが漂う名作。
「長屋に住む青年医師荒木勇作は俗称「とんかつ大将」と呼ばれみんなに親しまれていた。純情の艶歌師町田吟月と兄弟のようにして同居していたが、吟月は、浅草裏の飲み屋「一直」の女主人菊江に惚れて、一夜勇作を誘って飲みに行った。折も折、菊江の弟の周二が喧嘩で~」
主人公がとんかつが好きで、皆からそう呼ばれていただけのことで、戦後10年もたってないこの時期ではかなりのご馳走だったろうと思う。
古き良き時代の人情話、悪徳地上げ業者登場で長屋住民立ち退き話有り、盲目の少女の回復美談有りと、今これをリメークしたらどんな名人が監督しても嘘っぽい造りになって実現不可能だろうと思う。
なおこの映画では知ってる役者は皆無。
「とんかつ一代」 (1963年公開)
これは昔良く見た喜劇、昔は「社長シリーズ」とか「駅前シリーズ」とかが怪獣映画との二本立てなんかで良く見た記憶がある。
この映画「とんかつ一代」 もそんな東宝の喜劇シリーズの匂いがいっぱいの映画。
「上野本牧町の一角に日本一の味を売るとんかつ屋、とん久の観爺久作は青竜軒のフランス料理で鍛え上げた腕前である。恋女房の柿江は青竜軒のコック長伝次の妹で、意地ッ張りだが人情もろい名人気質の久作に惚れて嫁いだ。フランス料理を捨てた久作、柿江夫婦を道楽だと言って絶縁した伝次は、実は彼の息子に後を継がせたいという気持を知った久作が~」
こちらは役者陣が森繁久彌、加藤大介、三木のり平、山茶花九とかともかく馴染み(でもみんな既に他界)で気楽に楽しめた。
時代背景が何とも楽しい、例えば道楽息子演じるフランキー堺が転がす車が軽乗用車(たぶんマツダクーペ) とか周りの風俗も結構楽しめる。
時代も所得倍増計画とかで高度成長に向かう時期だったろうから全体に活気もある。
当方にとって、川島雄三と言う監督はここ最近注目している監督で、最近名画座で特集をするのも理解できる。
そしてこの当時の映画は”それで生活をしていた人たち=俗に、それで食っている人たち”が寄ってたかって作り上げた様な真剣な雰囲気がとても好き。これが残念ながら今の映画(特に邦画)には無い、出ている人たちや作っている人達がいかにも片手間で仕上げた様な造り、そして後はTV局や雑誌が適当に宣伝して、有象無象の観客が大枚叩いて一貫の終わり。