構造改革をどう生きるか 森永 卓郎
第64回 政府税調、本間会長は辞任したけれど‥‥
本間税調会長はもう辞任したから今さら咎めても、と、思いつつ読んだけど、やっぱり腹が立った。
それはともかく、今回のコラムで自分が重要だと思うのは次の箇所だ。
「大企業はもうかっているが、消費者にはおカネが回らない」……こんな税制で、本当に景気は回復できるのか。ワーキングプアに加えて、ホワイトカラーの一部がホワイトカラー・エグゼンプションで残業代ゼロになればさらに中流層は薄くなっていく。それで、日本は、大丈夫なのだろうか……。
第64回 政府税調、本間会長は辞任したけれど‥‥
本間税調会長はもう辞任したから今さら咎めても、と、思いつつ読んだけど、やっぱり腹が立った。
それはともかく、今回のコラムで自分が重要だと思うのは次の箇所だ。
月例経済報告や日銀総裁の談話でも現在、消費の弱さが指摘されている。実際、11カ月連続で消費は前年を下回り、景気の最大の懸念要因となっている。その理由は労働者の給料が増えていないからだ。
大企業はもうかっているが、消費者にはおカネが回らない。本来であればもうかっているところから税金を取り、国民に分配して消費を盛り上げるのが当たり前だが、本間氏はまったく逆のことをしようとした。
既に定率減税全廃は確実で、国民には増税となる中で、企業には大規模な減税を行うというわけだ。本間氏が会長を辞任してよかったと思うが、それでは後任の香西泰氏はどうだろうか。
香西氏は旧経済企画庁出身で、日本経済研究センター特別研究顧問として、わたしの大先輩でもある。本間氏とは違って、人の話をよく聞く人である。日本経済研究センターのパーティーでお会いしたときも、ずいぶん年下で、考え方も違うわたしの話をちゃんと聞いてくれた。
香西氏の会長就任で税調はより民主的になると思うが、一方で、竹中平蔵氏と共に小泉構造改革を支えた人でもあるので、結果は同じかもしれない。
もし、後任に税調会長代理の神野直彦・東京大学大学院教授が就任していたら、革命的な変化が起きたかもしれない。神野氏はわたしが委員をしていた連合の税制改革アドバイザー会議の座長を務めている。日産自動車で働いていた経験があり、サラリーマンの立場がよく分かる人だ。当然、サラリーマン増税は反対で、額に汗して働く人から税金を取るのではなく、企業のあぶく銭に高い税率をかけるような税制を目指したことだろう。
「大企業はもうかっているが、消費者にはおカネが回らない」……こんな税制で、本当に景気は回復できるのか。ワーキングプアに加えて、ホワイトカラーの一部がホワイトカラー・エグゼンプションで残業代ゼロになればさらに中流層は薄くなっていく。それで、日本は、大丈夫なのだろうか……。