南シナ海での米・フィリピン合同演習 オバマ大統領の本気度を問う
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8066
南シナ海情勢が非常に緊迫する中、世界一の軍事大国アメリカが、中国の無法な拡大路線を、どれだけ"本気"で止めようとしているかが問われている。
ロイター通信によると、フィリピンとアメリカの両国海軍が、6月26日からの約1週間、南シナ海で合同海軍演習を行う。米軍からは、ミサイル駆逐艦を含む5隻の軍艦と、約1000人の兵士が送り込まれ、フィリピンとの協力海上即応訓練(CARAT)に参加。スカボロー礁をパトロールする中国公船から80海里(約150キロ)の海域での実弾演習も、その演習には含まれている。
スカボロー礁は、フィリピンのルソン島から西に220キロの海域にある環礁で、フィリピンの排他的経済水域内に位置している。しかし、2012年4月にフィリピン海軍が、停泊中の中国漁船8隻を拿捕したのに対して、中国は監視船などの公船を送り、その海域の支配権をフィリピンから強奪した。本件については、フィリピンがオランダ・ハーグの国際司法裁判所への提訴を提案しているが、中国が頑なに拒否しているため、解決の糸口は見えない。
今回の合同演習について、フィリピンのロドリゲス海軍報道官は、「毎年恒例の演習であり、中国とフィリピンの間の領有権争いとは無関係だ」と説明しているが、中国に対するけん制の目的も含まれているだろう。ロイター通信も、今回の合同演習が「中国の怒りを買うことはほぼ間違いない」と指摘している。
中国の南シナ海での無法な動きを抑えるためには、オバマ大統領の本気度をしっかりと示す必要がある。オバマ大統領の得意な「言葉」よりも、今回の軍事演習の実施のような「行動」が、中国の動きに大きな影響を与えるからだ。
過去、南シナ海で中国が拡大行動に出たのは、およそ米軍が消極的な姿勢を見せた時だ。パラセル諸島を接収した1974年は、ベトナム戦争直後で厭戦ムードが高まっていたため、アメリカが海外派兵に“及び腰"な時期であった。また、スプラトリー諸島を強奪した88年は、アメリカが対ソ連戦略で中国と連携を深めようとしており、「領有権問題には介入せず」の立場をとることになった。ミスチーフ礁に軍事施設を建設した95年は、米軍がフィリピンから完全撤退していたため、十分な「行動」をとることはなかった。
今年4月末、オバマ米大統領のアジア歴訪の際、フィリピンとの新軍事協定が締結され、1992年に完全撤退した米軍が再びフィリピンに戻ることになったが、フィリピンに拠点を置く米軍の規模や活動範囲、軍事演習の実施状況をしっかりと見ておく必要がある。これからしばらくは、南シナ海でのオバマ大統領の“本気度"に各国の注目が集まりそうだ。(HS政経塾 森國英和)
【関連記事】
2014年6月1日付本欄 南シナ海 日米がけん制する一方、中国はASEAN切り崩し 「力」の行使も辞さない決意を
http://the-liberty.com/article.php?item_id=7937
2014年7月号記事 武力行使自体を悪とする思想には善悪を分かつ智慧がない - 「愛が時代を動かす」 - 大川隆法総裁 法話レポート
http://the-liberty.com/article.php?item_id=7898
2014年7月号記事 緊張状態が続く南シナ海中国の横暴を座視するな - The Liberty Opinion 4
http://the-liberty.com/article.php?item_id=7875