大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖
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日々の恐怖 10月19日 足(1)
ある日、俺は友人と2人で飲みに行く約束をした。
その日は予約を取っていたので、待ち合わせの時間の少し前に店に到着した。
用意された個室に案内され、俺は席についた。
部屋には、まだ誰もいなかった。
畳敷きの個室で、床には座布団があり、背の低いテーブルの下は床が一段低くなっていて、
足を下ろして座れるような作りになっている。
とりあえず座りながら上着を脱ぎ、自分の横に置く。
何の気なしにメニューを眺めながら友人の到着を待っていると、俺は足の先に何かが当たるのを感じた。
覗いてみても何もない。
テーブルの脚かと一瞬思ったが、よく見るとテーブルからは短い脚が畳敷きの床の上に伸びている。
つまり、今俺が足を下ろしている空洞には、何も無いはずなのだ。
俺は足を少し動かしてもう一度先程の感触を探す。
” あった。”
ちょうど自分の正面のあたりに、少し丸みを帯びた、それでいて少し平たい様な物体がある。
もう少し足を動かしていると、今度は足先ではなく、脛の外側辺りに何か縦に長い物が触れた。
床に対して垂直ではなく、少し斜めに伸びている。
その先に、丸くて平たい物。
俺はそれが何であるか直感で理解していた。
あるいは似たような経験をした事があるからかもしれない。
足。
今、自分が足で触れているもの。
それは紛れもなく人間の足だった。