大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

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C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 1月30日 ガキの頃の話 (6)

2025-01-30 23:49:38 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 1月30日 ガキの頃の話 (6)






 しばらく沈黙のやりとりが続いた後、そこはやはりリーダーなわけで、Sが最初に沈黙を破った。

「 見ただけで、何で俺たちと分かるんや?
俺たちの顔まで見たんか?
俺ら一人一人の名前も分かるんか?」

教師らは誰も口を開かない。
立場が逆転したようにSは続ける。

「 証拠もないのに、呼び出してええんか?
悪さって何や?
俺らが何したって言うんや?」

と、一気にまくしたてたSに、

「 言うてええんか?」

と、Sの担任がSを牽制したが、勢いが止まらなくなったSを誰も止めることは出来なかった。

「 言わんかい!」

と、売り言葉に買い言葉なSをみて、俺はバレた後のことを考え始めた。
しかし、どう考えても、それは胡麻化しようがない状態な訳で、俺は親に知られてぶん殴られ
ることを覚悟するしかなかった。
 そして、俺の担任が俺に言った。

「 空き家に入りこんだな?」
「 ・・・・・。」

俺は何が起きているのか理解が追いつかずにいた。

” 空き家・・・・・???”

Kを横目で見たが、俯いているので表情までは見れなかった。
 続いてMを見たが同じ。
Sは顔面蒼白。
そんな三人を見て、更に俺は取り残されたまま沈黙した。
 賽銭泥棒の件で呼び出されたと思っていたはずが、空き家に不法侵入の疑いがかかってい
ることに理解が追いつくはずもない。

「 知りません、空き家って、何?」

と、やっと俺は始めて口を開いた。

「 まだ惚ける気か?」

と担任に詰め寄られたが、

「 知らんもんは知らんのや。
何や、空き家って!」

と、今度は俺がSに噛みつく形に変わった。









 
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日々の恐怖 1月22日 ガキの頃の話 (5)

2025-01-22 20:02:51 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 1月22日 ガキの頃の話 (5)






 帰り道の途中、どちらかが言うわけでもなく公園に立ち寄り、俺とKはブランコに腰をかけた。

「 Mがチクったんやろ?」

最初に口を切ったのはKだった。

「 何でや?
自分も一緒に居て、Sにお菓子買って貰って食べた癖に。
しかも、Sは兄ちゃんやぞ。」

とKはつづけた。

「 だいたい、誰にチクったんやろ?」

そんな話をしながら何も答えもでず、Mは裏切り者ということだけが延々と繰り返された。

 それからしばらくしてSは学校に登校してきたけど、何となく俺もKもあの日以来、SとMに
近寄ることを避けた。
放課後に4人で帰ることも遊ぶこともなく、自然と俺・KとS・Mという組み合わせで別々に
帰る日が続いた。
 喧嘩をした訳でもないから、気まずいまま数週間が過ぎた頃、担任から呼び出しをくらった。
体育係だった俺とKが、放課後活動で体育館周りの草むしりをしていた時だった。
最初は掃除サボれてラッキーだったはずが、別室に呼ばれてドアを開いた瞬間にS、Mも呼
び出されたメンバーだと分かると鼓動が跳ね上がるのを感じた。
 今更だがSは1学年上。
俺とKは同い年同じクラス。
Mは1学年下。
 それぞれの担任が俺たちの前に座り、これから裁判が始まるかのような重々しい空気が流
れていた。

「 お前ら、最近、放課後に悪さしよるんと違うか?」

最初に口を開いたのはSの担任。
俺たちは誰も何も言わず俯いたまま。

「 立ち寄り禁止場所にフラフラ上がって行きよるの見たって学校に連絡があったんやが、どう
じゃ?
お前らか?」

つづいて俺たちの担任が追い打ちをかけて、更に鼓動が早まりながらも一様に黙秘を続けた。
 Mの担任は女。
ただ黙ってその場に居たが、圧力だけはヒシヒシと感じるくらいのベテラン女教師だ。
俺たちがいつまで黙秘権を行使できるか見物と言わんばかりにしばらく教師も口を開かないで
いた。









 
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日々の恐怖 1月13日 ガキの頃の話 (4)

2025-01-13 10:16:39 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 1月13日 ガキの頃の話 (4)






 風邪の割には中々登校してこないSを、俺もKも心配して何度もMに、

「 Sの風邪、大丈夫か?」

と尋ねても、

「 Sは熱と言ってもそんなに高熱じゃないし、咳も出よらん。
元気にしとるけど、体にブツブツが出来て、それが引かんから登校出来んだけ。」

と聞かされた。
 医者に行ったけど伝染病の類いでもないし、蕁麻疹と診断され大事をとって休
んでるとのことだった。
それを聞いて安心した俺とKは、

「 うつる病気じゃないなら会いに行けるし、今日、一旦家帰った後お見舞いに
行く。」

とMに伝えた。
 放課後、見舞いに行くとMから聞かされた通り、Sは元気そうな様子で俺らを
迎えてくれた。

「 悪いな。
大したことないんやけど、おかんが外に出してくれんのや!」

と、ふて腐れたようにベッドに座りながら、俺が親から手渡された差し入れに手
を伸ばすSは、本当に病人なのか疑わしいレベルで、我先にチョコレートケーキ
を選んで食べた。
 しばらく談笑したり漫画を読んだりして楽しみ、そろそろ帰る流れになった
頃、Kが元気付けの意味も込めて、

「 そんなけ元気なら明日には学校来れるやろ?
お前が休みよったら退屈。
はよ、おっさん探し行こう!」

と言ったのを機に、Sが黙り込んだ。
何となく踏み込んでは行けない場所に踏み込んだ気がして、気まずくなった俺た
ちは、早々と切り上げるかの様に、

「 とにかく、早よ治せよ。」

と言い、腰を上げようとした時、

「 チクったやろ?」

とSがボソっと言った。

「 俺が賽銭盗んだの、チクったのお前らか?」

とまた俯きながら呟いた。
俺がKを見ると、Kは頭を横に振り否定のポーズをとった。
 勿論、俺も誰にも話してなどいない。
Mをみると、Mは俯いて黙り込んでいた。
明らかにMが犯人だと分かったが、誰もその場では何もかも云わなかった。
 微妙な空気に耐えられなくなった俺もKも、

「 何のことか分からん。
誰もチクったりせん。
チクったら自分らもグルやのに、そんなアホなことする奴おらん。
気のせいやろ?」

とだけ言い残して、逃げるようにSの家を後にした。







 
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日々の恐怖 1月4日 ガキの頃の話 (3)

2025-01-04 11:18:20 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 1月4日 ガキの頃の話 (3)





そんな俺らを気にも止めずSは、

「 あのおっさんが賽銭置きに来よったん辞めたんやろ。
あいつ、俺が盗みよるの見たから置きにくるん辞めたんやわ。」

Sによると最後の賽銭に有り付いた日、その日は五百円玉と十円玉が数枚。

「 まぁ、こんなもんか・・・・。」

と賽銭をくすねて駄菓子屋に向かうために山を下りようとした時、山の反対から男が登ってく
るのが見えた。
賽銭泥棒がバレたと思ったけど一向に男は神社に入ってくる気配もなく、ただじっとそこに
立ち止まっていただけだった。
 何故、俺達に今まで黙ってたかと言うと、

” 誰もおっさんの気配に気付いてないことが怖かった。
みんなに確かめて、おっさんが自分にしか見えない存在だとしたら、それを認めるのは怖い。”

というようなことを言った。
Sの話を聞いて薄ら寒いものを感じ、皆がしばらく無口になった。
 そんな空気を変えたのはまたしても、言い出しっぺのSだ。

「 でも、それからや。
賽銭なくなったの。
やっぱりあいつが賽銭置きに来よったけど、俺が盗みよるの見て置くのやめたんやろ?
だから、あいつは普通のおっさんや。
幽霊でもなんでもない。
あいつ近くに住んでるんちゃうか?
明日探しに行こうや!」

怖いもの知らずな俺たちの次なる遊びはおっさん探しに決まったとこで、その日は解散した。
 ところが、その次の日から、

” いざおっさん探し!”

となるはずが、しばらく梅雨独特のシトシトした雨が続き、外出ができないまま数日が過ぎた
頃、言い出しっぺのSが急に熱を出して学校を休んだ。
弟Mによると、夏風邪だろうとの事で特に気にも止めなかったが、今思えばこの辺りからSの
奇行が始まったように思う。








 
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日々の恐怖 12月26日 ガキの頃の話 (2)

2024-12-26 21:24:17 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 12月26日 ガキの頃の話 (2)





 ただ毎日賽銭にありつけたわけじゃない。
最初に書いた通り寂れた神社だ。
寧ろ賽銭がある方が謎なくらい。
それでも、毎日通えば2週間に1回くらいのペースで数百円の賽銭を見付けることが出来たし、
運が良ければ千円札の時もある。
ガキの頃の話だから曖昧で、賽銭箱があったかどうかは定かではないが、賽銭はいつも箱には
入っていなかったように思う。
 無造作に置かれていて、簡単に盗めたと記憶している。
賽銭箱をほじくったり何か道具を使ったり苦労して盗んだ記憶もない。
それも盗みを働いてる罪悪感を薄めた要因のように思う。
 そんな日が続いてしばらくは遊び場にも困らず美味しい思いをしていたが、急にパッタリと賽
銭にありつけなくなった。

「 今週は外れや。」

から、

「 今週も外れや。」

に変わり、

「 今月はアカンのちゃう?」

からとうとう、

「 もうアカンな。」

に変わるのは案外早かった。
その頃の小学生にとっての一ヶ月は、大人が長い年月を経て何かを諦める事に等しかった。

「 もう、ここはアカンな。
他の場所探すか、何か他の遊びしようや。」

とリーダー格のSを先頭に、その日は早々に山を下りた。
 近くの駄菓子屋で、それぞれ親から貰った小遣いで駄菓子を買い、近くの公園で次なる悪
巧みを練っている中、Sが急に思い出した様に言った。

「 絶対、あのおっさんや!」

突然の言葉に、俺とKとMは、

” どのおっさん・・・・?”

と言わんばかりの顔で、互いの顔を見合わせた。









 
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日々の恐怖 12月17日 ガキの頃の話 (1)

2024-12-17 20:36:42 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 12月17日 ガキの頃の話 (1)




 もう40年近く前、ガキの頃の話。
田舎の悪ガキだった俺は、大人から立ち寄ることを禁止されていたある場所に、
秘密基地と称して学校帰りに遊びに行くのが日課だった。
 何故、禁止かと言うとそこは町内では知らない人はいないというくらい有名な
自殺スポット。
小さな山を少し登ると寂れた神社と境内に大きな木があって、その木で首吊り自
殺が時々おきるような場所。
 俺らの親が子供の頃から有名らしいが、頻繁に自殺騒ぎがあるわけではない。
忘れた頃に誰かが首を吊るというような数年に一回有るか無いか。
ただ、俺の田舎は如何せん閉鎖的な小さな村だから、

「 〇〇とこの××さん、自殺神社で吊ったらしいで。」

と直ぐに噂は広まり、そんなことが何回か繰り返された後、滅多に人が近寄らな
くなり、理由は何となく誰も語らないまま子供には危ない場所だから立ち寄り禁
止、と大人から教わっていた。
 前置きが長くなったが、何故そんな場所を遊び場にしてたかというと、俺が小
学生だった頃は長らくその場所で自殺があったなんて一度も耳にしたこともな
かったから、噂好きの大人たちが作った都市伝説みたいなもんだろうと信じてな
かったし、何よりいつも連れ立っていた中でも特に悪ガキのリーダー格Sがその
神社で賽銭を盗んで買ってくれるお菓子や玩具につられていた。
 賽銭泥棒は罪という概念はあっても自分が盗んでるわけではないし、Sが頼ん
でもないのにお菓子や玩具を買ってくれるというのが、俺らの罪悪感を薄めた。
そんな悪ガキ仲間は俺、Sとその弟Mさらに、SとMの従兄弟にあたるK。
いつも悪巧みを働く時はこの4人だった。






 
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日々の恐怖 12月14日 コンビニの災難 (3)

2024-12-14 10:16:27 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 12月14日 コンビニの災難 (3)






 しかし奇妙なことに、捨てられた時間帯にいたはずの店員や当日いたという客
も含め、誰もゴミを持ってきた人間を目撃していないというのである。
ゴミ箱に投棄する音などの気配すら無い。
監視カメラには入店して捨てて帰るまでバッチリ映っているのに、その間は誰も
気付いていないのだ。
 原因は何なのか心当たりはあるのか聞いてみると、彼は暫く考えた末に、

「 なくはないんですけどね。」

と答えた。

「 ホラ、ウチの店の裏に神社あるじゃないですか。」

壁に遮られて見えない神社の方角を指差す。

「 神社の駐車場に、あるゴミを投棄していくヤツが増えてるらしくてですね。」
「 ゴミ箱を店内に移動したから?
それで神様に変なゴミを捨てられる呪いをかけられたって?
いくらなんでも逆恨みじゃない?」

そこはゴミを捨てた人間を呪うべきだろう。
そんな私の言葉に、彼は、

「 いえいえ・・・・。」

と手を振った。

「 そのゴミっていうのが、釘が打ち付けられた藁人形とかの使い終わった呪い
の道具らしくてですね。」

呪ったはいいが、どうもその後の処理に困って神社の近くに捨てていくらしい。

「 で、これは僕の推測ですが・・・。」

と彼は口を開く。

「 捨てられる度に呪いの残りカスみたいなのが蓄積してですね。
だけど当然ながら神様には影響がなくてですね。」

苦笑しながら言葉を続ける。

「 すぐ下にあるウチの店に、そういうゴミ的な呪いパワーが流れてきてるん
じゃないかと思うんですね。」
「 考えると変なゴミの大半って”使用済みの呪術アイテム”っぽいですしね。」

と彼は言う。

「 呪いのゴミ箱と化したウチの店が潰れちゃったら、次は近所の何処かがゴミ
箱になるんでしょうかね?」

別れ際に、彼はそう疑問を口にしていた。
そのコンビニのオーナーさん夫婦が夜逃げしてしまったので店舗が閉鎖されたと
耳にしたのは、つい先日である。









 
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日々の恐怖 12月5日 コンビニの災難 (2)

2024-12-05 20:04:59 | B,日々の恐怖





日々の恐怖 12月5日 コンビニの災難 (2)





するとアッサリ犯人は判明した。
近所にある幼稚園に勤める年配の男性事務員さんだったそうで、供述によると、

” 園で管理していた園児の短パンが不要になったため、コンビニに捨てただけ。”

という迷惑きわまりない理由だったそうである。

「 そりゃあまた迷惑な話だなあ。
しかし、幼稚園で短パンなんて管理してるものなのかね?」
「 警察もそこは疑問に思ったらしくてですね、いまも調査中なんだそうですよ。」

なかなかに業の深そうな話だったが、語る店員の顔は優れない。
どうしたのかと尋ねてみれば、話のオチはそこではないらしく、むしろそれが始
まりだったのかもしれないと大きな溜め息を吐く。

「 なんかですね、その日を境にですね、ウチのゴミ箱に変なのが捨てられるよ
うになってですね……。」

 ある時の深夜には血が染み込んで乾いたティッシュが大量に捨てられていた
り、ある時の早朝には緑色の液体(警察が教えてくれなかったので中身不明)が
満タンに詰まったアクエリアスのペットボトルが何本も捨てられていたり、切り
刻まれ、血のような赤黒い液体で汚れたアニメキャラの人形(クレーンゲーム
で取るぬいぐるみ)が何体も捨てられていたり、何処の国の文字かわからない言
葉で表も裏も”みっしり”と書かれたハガキが何百枚も捨てられていたり。
 一番最悪だったのが”魚の内臓を大量に入れたビニール袋”が捨てられていた時
だったそうだ。
小動物の内臓や血だと勘違いした店員が卒倒し、警察と病院が駆けつける騒動に
まで発展したのだとか。

「 えっ、もしかして同一犯?」
「 いえ、それぞれ別の人の仕業だったんですけどね。」








 
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日々の恐怖 11月23日 コンビニの災難(1)

2024-11-23 11:53:29 | B,日々の恐怖





日々の恐怖 11月23日 コンビニの災難(1)





  取引先のコンビニで店員さんから聞いた、数年前の話です。
大抵の場合、今のコンビニはゴミ箱を店内に設置している。
これは家庭で出た未分別のゴミを投棄されたり、収集車に回収してもらえなかったゴミ袋をゴ
ミ箱の前に放置していったり、衛生上問題のあるゴミを入れられたり、充分に火を消していな
いタバコの吸い殻や熱を持った状態の灰皿の中身を捨てられて火事になるのを防ぐ為でもあ
る。
 そのコンビニも最初はゴミ箱を店の外に置いていたそうだが、レジカウンター周辺の改装を期
に店内へと移設した。
やはり家庭ゴミの放置等が問題になっていたのと、立地的に店舗のすぐ裏の山に稲荷神社
があるということで近所からも”神様が見渡す範囲にゴミが散乱しているのは良くない”と苦情
が入っていたのだ。
 店内に移動したとはいえコーヒーマシンやイートインスペースも(店内スペースの関係上)
近くに設置しているので、マナーの悪い客に対しては厳しく対応するよう店員は強く教育され
ていたそう。
 そんなある日、満杯になってるかどうかゴミ箱をチェックしにレジを離れた女子店員が悲鳴を
上げた。
何事かと駆け寄ると、2つある燃えるゴミの箱に小豆色のものが詰め込まれているのが見てと
れた。

「 なんだ、これ・・・?」

よくよく見ると何十枚と重なった大量の布、というか短パンだった。
しかもサイズ的に幼児の、幼稚園の体操着らしいのだ。

「 へ、変態だ~!?」

しかし具体的に何をどうすれば良いのか判断に困った店員は、とりあえずオーナーさんと警察
に連絡し、両者の到着を待って監視カメラをチェックすることにした。








 
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日々の恐怖 11月16日 国有鉄道宿舎(3)

2024-11-16 20:18:42 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 11月16日 国有鉄道宿舎(3)





 とりあえず何とかなってるからいいか、と思っていたのも束の間、ある日、
夜8時過ぎに電話がかかって来た。
障子の向こうから、とうに亡くなったはずの自身の祖母から語りかけがあった、
という電話だった。
今現在、襖が開かないので外に出られない。
どうしよう、というものだった。
 内容が内容だけに、合鍵を持って今から宿舎に行くことになり、中学生の私も
同行することになった。
ただでは行けないので、知り合いのお寺でお札と御守りを貰って行くことにし
て、さっそくお寺に電話すると、

「 すぐ来なさい。」

とのこと。
お寺でお経をあげてもらい、お札と御守りを持って父のいる宿舎へと向かった。
 片道1時間半ほどで着き、玄関を開けた。
確かに父のいる寝室だけ電気が点いていたが、すぐに宿舎中の明かりを点け、寝
室の襖を開けた。
 何の抵抗もなく襖は開いたが、父曰く内側からは開かなかったとのこと。
お寺の住職の言いつけ通り寝室にお札を貼り、御守りを父に渡し、父は機関区
に、母と私は来た道を帰り、夜半過ぎには帰宅した。
その後、宿舎で寝泊まりしても何も起こらなくなったという。
 後日、父が玄関わきの、北隣の墓地との境の掃除をしていたら、土の中に白い
かけらがあったという。
その昔、生で埋めてた名残で、年を経て流れて来たのかな、と言っていたもの
の、やはりあまり居心地のいい宿舎では無かったらしい。
 国有鉄道が無くなって久しいが、生前、父は、

「 あの街の宿舎は嫌だったが、職場は最高に良かった。
人に恵まれたし、街も良かった。」

と良く言っていた。
また、

「 奇妙なことも多かった。
昔と今の境だったのかもな。」

とも。
 コロナの前、自分の娘と一緒に列車の旅をしてその街に行ってみたが、当時の
面影もないくらい発展していたし、宿舎も取り壊されて土地だけになっていた。
時の経つのは早く、もう一度この目であの宿舎を見たいと思っていたが、叶わな
かったのが残念でならない。









 
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日々の恐怖 11月10日 国有鉄道宿舎(2)

2024-11-10 10:09:12 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 11月10日 国有鉄道宿舎(2)





 日は山に沈もうとしている。
私は、

” 一見してのどかでいい街だなぁ・・・。
転校してこの街に来たら、どんな毎日だったかなぁ・・・。”

と考えながら、玄関を出て通りまで歩いて自販機のジュースを買って戻ると、
縁側に座った母が驚いて声をかけて来た。

「 今までお前がトイレから風呂場にかけて掃除をしていたのではないか?
下から登って来たから驚いた。
今の今まで音がしていた。」

という。
 私は縁側から駆け上がってトイレから風呂場、台所、寝室と見て回ったが、
何の姿も無かった。
私がさっきトイレから出たら人の気配がしたと母に告げると、とりあえず戸締り
をきちんとして暗くならないうちに帰ろうということになった。
 台所の窓を閉める時、北側の斜面の高いところに墓地が見えた。
上の方に墓地があると母に言うと、斜面の上に寺があると言う。
鍵をしっかり掛けて、この日は帰った。
 父が単身赴任生活を始め、宿舎と機関区、休日は自宅宿舎のある管理局のある
街と、三角ベースのような動きをして三ヶ月くらいが経った頃、

「 あの宿舎にはちょっとお化けのようなものが出るような気がする。」

と言い始めた。
そして、

「 夜寝るのに電気を消すと、障子に人影が写るので、電気を点けて勢いよく障
子を開けると誰もいない。
気のせいかと障子を閉めて電気を消すとまた人影が写る。
気持ち悪いので電気を点けたまま床に就こうとすると、今度は襖を誰かが叩く。
開けようとすると開かないのだ。
食事も外で済ませ、洗濯と入浴だけ宿舎でして、機関区の仮眠室で寝ている。」

というものだった。







 
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日々の恐怖 11月2日 国有鉄道宿舎(1)

2024-11-02 10:33:27 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 11月2日 国有鉄道宿舎(1)




 かつての国有鉄道には宿舎があった。
アパートみたいなところから一軒家のようなものまで様々で、家族が住んでいる、管理局のあ
る街とは離れたところへ転勤命令が出た場合、単身で赴任先の街に行く事がしばしばあった。
 父も、とある街へ首席助役として赴くことになったが、機関区の近くの宿舎ではなく、300m
ほど離れた小さな山の中腹にある一軒屋、いわゆる高級宿舎に入ることになった。
最も、山と言ってもその街の駅前にある繁華街の傍なのだが、山のふもとにある専用の駐車
場に車を止め、斜面を歩いて20mも登るかどうかの距離でその宿舎の玄関まで行くことが
できた。
 昭和の終わり頃の当時でさえ、その宿舎がかなり古い建物であることが分かった。
中学生だった私は、母と共に宿舎の鍵を開けて玄関から中に入り、荷物をクルマから運び入
れるため駐車場と何回も往復した。
前の住人がきれいに掃除したのだろう、しかし少しカビ臭く、窓という窓(しかも木製枠)を
開け、持ち込んだ掃除機で掃除したり、座敷箒で畳の上を掃いたり、拭き掃除をしたりした。
 掃除の途中、私は催してトイレに行った。
水洗だが、木製の箱で覆われた水タンクが天井近くにあるタイプでもちろん和式だ。
用が済んだら、把手付きの鎖を引っ張るやつだ。
今ではとんとお目にかからない。
ここから想像すると、昭和20年代半ば頃にこの宿舎は建てられたのではないかと思われた。
 トイレを出ると、不意に人の気配がした。
母かと思って呼んだが返事がない。
誰だろうと思っていると、母は外で庭の掃除をしているのがわかった。
この時は不思議に思わず、私は部屋の掃除を続けた。
 街の中心部にある火の見櫓のスピーカーから、午後5時を知らせる音楽が流れ、

「 良い子は家に帰りましょう。」

とのアナウンスがあった。









 
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日々の恐怖 10月25日 足(2)

2024-10-25 11:02:26 | B,日々の恐怖
 





 日々の恐怖 10月25日 足(2)





 もう一度自分の置かれている状況を思い出す。
個室に、ひとり。
顔を上げてもそこには誰の姿も見えない。
それなのに、足がある。
 体は金縛りのように動かなかった。
俺はその姿の見えない存在に言いようのない恐怖を感じていた。
足が触れ合ったまま動けないでいると、ふとその足の感触が消えた。
おそらくその足が消えてなくなったわけじゃない。
机の下で足が当たった時に誰しもが取る行動。
どけた。
ただ足をどけたのだ。
 目の前の存在が多少人間的な行動をとった事で多少冷静さを取り戻した俺は、
とりあえずトイレに向かった。
さっきのは何だったんだ。
幽霊?
妖怪?
用を足しながら1人考えを巡らせる。
いや、あれには感じなかった、何か、意志のようなものを。
まるでそこにいるのが当たり前の様に、そこにいた。
考えがまとまらないまま個室に戻ると、そこには見慣れた友人の姿があった。

「 よう・・・!」

ぎこちなく声をかけながら正面に座る。
しばらく飲みながら何気ない会話を交わしていると、話の途中で不意に友人が、

「 あ、ごめん。」

と言った。
俺には彼がなぜそれを言ったのかわからなかった。
わからなかったからこそ、わかってしまった。
おそらく彼の足は、触れたのであろう。
誰のものかわからない、あの足を。

「 別にいいよ。」

とは、言えなかった。










 
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日々の恐怖 10月19日 足(1)

2024-10-19 16:05:18 | B,日々の恐怖

 

 

 

 

 日々の恐怖 1019 足(1)

 

 

 

 

 ある日、俺は友人と2人で飲みに行く約束をした。

その日は予約を取っていたので、待ち合わせの時間の少し前に店に到着した。

 用意された個室に案内され、俺は席についた。

部屋にはまだ誰もいなかった。

畳敷きの個室で、床には座布団があり、背の低いテーブルの下は床が一段低くなっていて、

足を下ろして座れるような作りになっている。

 とりあえず座りながら上着を脱ぎ、自分の横に置く。

何の気なしにメニューを眺めながら友人の到着を待っていると、俺は足の先に何かが当たるのを感じた。

覗いてみても何もない。

 テーブルの脚かと一瞬思ったが、よく見るとテーブルからは短い脚が畳敷きの床の上に伸びている。

つまり今俺が足を下ろしている空洞には何も無いはずなのだ。

 俺は足を少し動かしてもう一度先程の感触を探す。

 

 あった。

 

ちょうど自分の正面のあたりに、少し丸みを帯びた、それでいて少し平たい様な物体がある。

 もう少し足を動かしていると、今度は足先ではなく、脛の外側辺りに何か縦に長い物が触れた。

床に対して垂直ではなく、少し斜めに伸びている。

その先に、丸くて平たい物。

 俺はそれが何であるか直感で理解していた。

あるいは似たような経験をした事があるからかもしれない。

足。

自分が足で触れているもの。

それは紛れもなく人間の足だった。

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
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日々の恐怖 10月14日 IPad(2)

2024-10-14 09:41:17 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月14日 IPad(2)





 姉は赤ちゃんを膝に乗せなおし、

「 はい、おじいちゃんって言ってごらんー!」

と赤ちゃんにIPadを向ける。
 赤ちゃんはその日一番長々と、

「 うあうあー!きゃきゃー!!あーい~、きゃきゃ~!」

とIPadの画面を叩きながらはしゃいだ声を上げた。
すると画面に、

”大宮さんがきよる”

と表示された。
 姉が、

「 えー、なんか文章になった!
すごい~!
大宮さんて誰かな~??」

と笑う。
すると祖父母が、

「 えっ!?」

と画面に顔を近づける。

「 大宮さんて、この機械に入れよるんかね?
名前を入れよるんかね?」

祖父が不思議そうに画面を眺める。
姉は、

「 えっ??」

と祖父を見る。
 祖母が、

「 大宮さんて網元の、おじいちゃんのお友達じゃった人じゃが。
大宮さんが来よる、いいよるね・・・・。」

と、同じく不思議そうに画面を見る。
すると母親が、、

「 あの・・・・・。」

と窓を指差す。

「 離れの方に・・・・。」

全員が窓の外を見ると、庭の向こうの離れの前に、日よけの帽子を被ったような人影が
俯きがちに立っているように見えた。
 祖父はすぐに、

「 大宮さんじゃね・・・。」

と呟く。
祖母も、

「 大宮さんじゃあ。
2月に亡くなりはったんじゃけどね、なしてじゃろうね・・・。」

と窓の外を見つめる。
 俺たちは、

「 え?え・・・・?」

と、よく分からずに、窓の向こうを覗き込むように首を伸ばしていると、祖母が、

「 いけんいけん、いけんよ。」

と立ち上がり、カーテンをスッと閉めた。







 
 
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