大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 1月23日 俺を呼ぶ声

2015-01-23 19:02:03 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 1月23日 俺を呼ぶ声



 昔、実家の近所に一人暮らしのおじさんが住んでいた。
平日の午後になるとその人の家の前にイスを置いて座り、下校する子供たちに手をあげ、

「 よぉい!」

と挨拶をするおじさんだった。
雨の日も雪の日も、さすがに台風とか大雨のときには居なかったと思うが、傘をさして座っていた。
 俺が高校生になった頃に足を悪くして家から出られなくなったそうだが、家の前の通りが見える二階の部屋のベッドから、

「 よぉい!」

と手を振っていた。
 要はちょっと心の壊れてる方だったのだが、子供たちもみんな、

「 よぉい!」

と返すくらいに親しまれていた。


 もう亡くなられてその家は空き家になっているのだが、先日久しぶりに実家に帰ってその家の前を通ると、

「 よぉい!」

という声が聞こえ、二階の部屋の窓には手が見えた。
 近所の同世代と飲んだ時にこの話をしたが、同じ経験をしたというヤツは何人もいるようだ。
でも、今の子供たちは聞いたことがないらしい。
 ホラー的なものというより、

“ 当時を思い出した俺たちが、懐かしんで見えてしまうのかな?”

と、少ししんみりした。









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