日々の恐怖 7月3日 寂れた旅館(3)
女将は、
「 別館には配電盤はありませんし、私にはわかりません。」
と言う、なんともよく分からない答えが返ってきた。
女将は明らかに別館に行きたくない様子だった。
正直、私も行きたくないけれど火災になったら嫌だったので、危険性を説明してなんとか見せていただけないかと交渉していると、
「 別館のことは、主人じゃないと分からない。」
という答えに変わった。
そんな問答をしていると、女将の旦那さんが帰ってきた。
それで、私は今の状況を説明した。
すると旦那さんは、
「 別館に配電盤はあるが、別館には入れたくない。」
とのことだった。
女将さんと同様に、旦那さんも別館に行きたくない様子だった。
行きたくない理由なんて聞けないし、聞きたくもなかった。
私は、
「 忙しいのであれば私がひとりで行きますから、大まかな場所だけ教えていただけませんか?」
と訊ねた。
すると女将と旦那さんから、
「 1人ではダメだ。」
と強い口調で返された。
次に、旦那さんはこう切り出した。
「 向こうは出るんだ。
だからダメなんだ。」
何が出るとは聞けなかった。
仕事モードの私は、
「 出ても大丈夫です。」
と言う意味不明の回答をしました。
すると旦那さんは、
「 それなら、私と行こう。」
と返事をしました。
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