日々の恐怖 4月1日 村岡君(3)
突然大きな雷光があたりを照らし出しました。
と同時に、生徒たちや隣組の先生が悲鳴をあげました。
「 うわっ、こっちに来よるっ!」
見える生徒たちが悲鳴をあげながら教室を逃げ回ります。
廊下の生徒達も恐怖で泣きながらあわてて教室に入ってきます。
「 なんじゃあ、こりゃあ!」
と隣組の先生もまるで松田優作のジーパン刑事みたいな声をあげて、でも体が動かないのかそのまま立ち尽くします。
教室には怒号と悲鳴と泣き声の生徒達が逃げ惑います。
まるで長い時間のように思えましたが、実際は数十秒だったのでしょう。
やがて、
「 消えたっ!」
と誰かの声が聞こえ、教室にはパニック状態だけが残りました。
泣いている生徒、腰が抜けてへたり込んでいる生徒、そして立ち尽くすジーパン刑事。
ただ、見えない私達にはまったく何も見えませんでしたし、感じませんでした。
結局このことはかなりの騒ぎになり、その日保護者に急遽連絡が取られ、すぐにそのまま帰宅となりました。
後日、全校朝礼で校長からの厳しいお叱りがありました。
そのときは見たと言った隣組の先生も、それ以降見たとは言わなくなりました。
” 思春期による集団ヒステリーである。”
そんな言葉でこの一件は片付けられてしまいました。
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