日々の恐怖 4月12日 中古の家(2)
父は後部座席の母に、
「 母さんわかった?」
と聞いた。
母は、
「 いや、私は特になかったけど、雰囲気重いなぁ・・・、とは思った。」
と返事した。
それで父が言うには、弟が泣き出したときに指さした方向を見たら、見えはしなかったが、
「 出て行け。」
という声が確かに聞こえたと言った。
その声は、すごくじめっとした老人っぽい感じの声だったそうだ。
父は、
「 いやあ、あそこ絶対いるだろ、やばかったな。」
と言った。
その後、父と母は終始、事故物件がどうのとかいう話をしていた。
俺はそれを聞いて、あそこだけは住みたくないな、と思った。
結局、翌年に一軒家はわりと近所の物件に無事決まってホッとした。
それから10数年後。
地元を離れて就職している俺は、毎年夏休みがある。
去年も1週間休みを取り、帰省した。
すぐに高校時代の友達と会うことになった。
会ったのはいいがまだ時間的に15時とかだったので、飲むのも早いし、かといって他にやることもないので、友達の運転でドライブに行った。
それでブラブラ遠くまで回っていたら、なんとなく見覚えのある景色があった。
「 俺このへん来たことあると思う、なんだっけ・・・?」
考えてみると、高1の頃に見に来てすぐに帰ったあの家へ近づいているようだった。
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