日々の恐怖 3月7日 レクイエム 5
僕の右耳には携帯が当てられていて、僕はストレッチャーの上だった。
窓を見ると街灯が素早く移動する。
明らかに救急車の中だった。
全てを察して、僕は母親に言った。
「 えらいことになってしもた!
ごめん、ほんますまん。」
そう、僕は途中でトラックと交錯して、事故を起こして気を失って搬送されている最中だった。
それまで見た風景は、たぶん夢かなんかなんだろう。
そう思って目を閉じたらそのまま気絶した。
次に目を覚ましたのは、いわゆる集中治療室だった。
自分の間近で鳴ったナースコールで目を覚ました。
夜中に目を覚ますと、看護師がやってきて、安心させるような言葉をかけて、去っていった。
そこでまた気を失った。
翌朝、鏡を見て驚愕した。
事故の影響でボコボコに腫れていた。
医者は笑いながら、大体治るから大丈夫、と言葉をかけてくれたが、目の下の骨をおり、網膜も少し傷が入ったようで、経過観察と絶対安静を余儀なくされた。
僕を見て母親と姉は泣いた。
僕は本気で詫びた。
その時初めて自分の命が自分だけのものではなかったことを知った。
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