日々の恐怖 3月20日 井戸(1)
俺は建設業をやっている。
マンションを造っているんだが、施工前に地鎮祭というのを近くの神社から神主さん呼んでやる。
普通は業種的に地鎮祭には呼ばれないんだが、その物件では呼ばれた。
元々は立体駐車場で、頻繁ではないが事故も起きており、敷地の片隅に古い小さな祠があり、中にこれまたかなり古いお地蔵さんが収められていた。
4スパン地上13階建てのマンションの建設が始まった。
打ち合わせも終わり基礎の乗り込み前に、所長に躯体業者でもう一度御祓いを行うと集められた。
こんな経験は今まで初めてで、俺は所長に、
「 この現場は何なの?」
と聞いた。
「 ○○君は現場で変な経験とかない?
霊的なもんとか・・・・。」
正直、この所長は頭おかしいと思った。
話が面倒くさい感じだったから、
「 僕の家には家系図が残っていて、先祖に神主さんがいるから平気です。」
と言っておいた。
この棟はD棟と呼ばれ、他に同じ敷地内にA棟B棟C棟が既に施工中で、D棟が搬入路として後から施工が開始された。
D棟の基礎掘削工事から、小さなトラブルや労災適用には至らない事故も起きている事を鳶の職長から聞いて、俺は細心の注意を持って施工に当たろう思った。
基礎の深さは地上からおよそ10mで、貯水槽や設備室を兼ねていて、普通の基礎よりは深く複雑だった。
現場は海の近くで地質は砂、水も湧き出でウェルポンプも常に稼働、そんな状況での基礎工事だった。
湧き出る水を汲み上げるウェルポンプの能力も限界で、一次コン打設を急いだ。
俺は、現場のほぼ中央付近に不自然にパネコート材で蓋をされてる場所が気になった。
捲ってみると石の板みたいな物が数枚置いてけぼりあり、それを隠しているみたいだった。
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