日々の恐怖 9月12日 不動産屋(1)
俺は一年前から不動産の仕事をしている。
主な仕事は部屋の紹介など。
そこの不動産会社は高校の部活の先輩、Mさんが勤務していて、そのつてで紹介してもらった。
ある時、二十代ぐらいの男性が部屋を探しに来た。
その男性、Kさんからいわくつきの物件を紹介して欲しいと言われたのだ。
突然の事に要領の得ない俺の様子をみて、先輩のMさんが間に入ってくれた。
「 お客さん、そうゆうものをお探しならこちらへ。」
「 後は俺がやるから大丈夫だ。」
と代わってくれた。
Kさんが帰った後、Mさんが事情を話してくれた。
Mさんによると時々、Kさんの様にいわくつき部屋を狙ってやってくる客がいるのだそう。
目的は大体二つに別れていて、一つは怖いもの見たさや興味本位で、もう一つは家賃が安いからとの事。
Kさんは後者だった。
この仕事をしていれば、いわくつきの部屋というモノにいつかはぶつかるのだと思っていたが、まさかそこに自ら住みたいという人がいることに驚いた。
しかしMさん曰く、Kさんの様に自らすすんで部屋に住みたい人は少なくないのだという。
「 霊とかオカルトを信じない人には、ただの格安物件だからな。」
とMさんは笑いながら話していた。
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