一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

弁護士の失踪リスク

2007-07-10 | 法律・裁判・弁護士

前回のエントリの続きです。

OHT株の株価操縦だか鉄砲だかは知りませんが、弁護士の「失踪」というのは相当はた迷惑な行為です(自発的に失踪したのか、誰かに連れて行かれたのかは知りませんが。)。

六本木ヒルズの大家の森ビルも、契約解除するにも訴訟をして(しかも訴状は公示送達)判決を取って初めて明け渡しの強制執行ができます。
また、家具は動産競売にかけてしまえばいいですが、訴訟やM&A関係の書類も一緒に処分するとあとあと面倒な感じもしますので倉庫に保管しなけりゃいけないのでしょうか。

一方で依頼者側も、M&Aや訴訟の書類がたなざらしになっているというのはとても気持ちが悪いですし、かといって事務所に立ち入って自分の関係の書類を持ち出すこともできません。 こちらの新聞記事によると

代表らが所属する第一東京弁護士会は、残された若手たちに登録事務所を変えるようにアドバイスした。そのままにしておくと、六本木ヒルズの元の事務所で執務していると誤解を与えるためだ。

と、弁護士会もクライアントのことよりは所属若手弁護士のことを優先しているようです。

代表者の名前を冠している事務所ですから、おそらく代表者(ボス弁)がクライアントとの間を取り仕切っていたものと思われ、クライアントとしても、若手の先生にそのまま依頼をすればいいというわけでもないでしょう。
移籍先が訴訟などの相手方事務所の場合もあるでしょうし。


また、事務所に預けた書類に個人情報(M&Aのデューディリジェンスでの株主とか従業員情報とか)が含まれていて、それが散逸または行方不明になってしまった場合、依頼者は個人情報保護法上の委託先の監督義務(22条)違反に問われてしまうのでしょうか。
そうでなくても、情報の提供を受けた相手方に対しては守秘義務違反になりそうですね。

守秘義務契約には、情報を提供していい相手として「弁護士、会計士等の専門家」というのがあることが多いのですが、そこに「ただし、当該専門家が失踪した場合は責任を負わない」などという条項を付け加えなければならなくなります。

またJ-SOX法上は、全社的リスク管理として、弁護士に依頼する際には、万が一のときは提供した情報や書面を依頼者が取り戻せる権利を明記しないといけなくなるのでしょうか(執行を担保するために即決和解でも結ぶ?)


リスク管理をつきつめると、結局、ボス弁が一人の事務所は個人の信用リスクがあるので、大手ローファーム系にしか依頼できない、ということになってしまいます。

司法試験の合格者増に伴う新人弁護士の就職難とか、大手事務所への人気集中というような話を聞きますが、弁護士の先生方も企業にコンプライアンス経営を説きながらこのような事件が続くと、結局自分で自分の首を絞めているような感じもします。

そのうち、賠償責任保険に加入している弁護士に委任することがJ-SOXの条件になるかもしれませんね。


PS
大手でもあさひ狛のように空中分解してしまうところもあるので必ずしもローファーム一人勝ちとはいえないかもしれません。
(そういえばあさひ狛の弁護士の移転先でクライアントの取引相手方の仕事を受任していた場合のコンフリクトの問題はどうしているのでしょうか。)

コメント
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