一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『ベルナール・アルノー、語る』

2007-07-12 | 乱読日記

日本語の正式な書名は『ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る』という長いものです。
以前の記事でパリのブランド争奪戦について触れたので、もうちょっと知ろうと思い読んでみました。


中身はそのまんま、LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)グループのオーナー経営者であるベルナール・アルノーのインタビューです。
ベルナール・アルノーはフランス北部の建設会社を経営する一族に生まれ、クリスチャン・ディオールの買収を皮切りに有名ブランドを次々と傘下におさめLVMHグループの総帥になった人物です。
マスコミの前に姿を見せない彼のフランスの著名経済ジャーナリストがインタビューしたのをまとめたのが本書です。

フランス人同士の会話なのでその前提条件についての解説(たとえばアルノーの出身のフェレ・サヴィネル社の経営規模とか、出身地のフランス北部というのがフランス経済界に占めるポジションとか)があるとわかりやすいのですが、訳注は一般常識的なものにとどまっているのが残念ではあります。

ただ、会話の端々にフランス人らしい(というほどフランスのことは知らないので、正確に言えばアメリカ人の経営者にはない)理想主義と現実主義のバランスが見られる一方で、グローバル企業の経営者としてのフランス経済の保護主義的傾向への不満を表明するなどリアルな実像を描いているように思われます。

グループの成長につれマネジメントのスタイルを変えていくあたりは参考になります。


本人の書いたあとがき

本書で言いたいのは次のことだ。あなたが地球規模の事業に一年中お金を賭け続けるなら、二つの制約への対処を学ぶことになる。ひとつはもちろんリスクだが、二番目は慎重さである。
グループの規模が大きくなればなるほど、慎重さが要求される。あなたと一緒に働き、会社に貢献する全社員に対する責任から、自ずとあなたは用心深くなるだろう。事業を始めたばかりの頃はリスクを冒す覚悟もあったのに、今では社員を危険にさらす権利はないと感じている。しかし企業家にとってリスクを冒すことは呼吸のようなものだ。生命を維持し、生き延びるために欠かせないものなのだ。そのうえ、チームを率いて世界中に進出するようになれば、賭金とリスクが大きくなるだけ一層感動も大きくなる。あなたが会社の経営者兼所有者なら、あなたは株を買ってくれる株主全員と結びついており、この結びつきがあなたのビジョンに強い影響を及ぼす。高くつく取引や合併や買収については、経営者として会社の利益を図るだけでなく、主要株主として別の角度から検討することも必要だ。自分の金を賭けながら、純粋な経営者として私はこのように行動しているだろうか?必ずしもそうとは限らない。それでもLVMHのようなグループの株主が安心するためには、経営者兼所有者が必要なのだ。慎重さとリスクの対立が必ず繰り返されるにしても、この二項対立の矛盾をはらんだ経営こそが進歩を生み出すのである。

日本の某オーナー兼経営者も、せめてこのくらいのことを言ってほしかったですね。


本文自体は実質200ページ強しかないので、時間があれば一日で読めます。
インタビューは2000年に行われたもので、IT企業への投資については、その頃らしいな、という感じもしますが、読んでみても時間の無駄にはならないと思います。






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ブロッコリー

2007-07-12 | よしなしごと
「自然はフラクタルである」というマンデルブローの言葉を思い出しました。




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