一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

代書屋

2009-06-12 | あきなひ

GMの破たん処理で「悪材料出尽くし」とかいう話もありますが、まだまだ先は長いという話もあります。
わたし自身は金融マーケットの動向については語る能力がないので、片隅でトラブっている話を。


CMBS(商業不動産担保証券)という証券化商品がありますが、米国でこの処理がはかどっていないという話です。

CMBSはそれぞれ利払いの優先順位によっていくつかの「トランシェ」に分かれています。
この証券のもとになっているローンの利払いが行き詰った場合に、抵当権を行使するか、ローンの償還期限延長かなどについて投資家が協議して決定することになるのですが、契約上は劣後するトランシェを持つ投資家にも投票権があります。
このため、今回のように資産価値が急落した局面では、劣後する部分の投資家は抵当権を行使して売却すると明らかに自分の取り分はゼロになるので償還期限延長をして相場回復を待つ(祈る)という「問題先送り」の行動をとり、早期に売却して資金回収を図りたい優先部分の投資家と合意が形成できないという仕組み上の問題があるので、なかなか処理が進まないんだとか。


で、米国の弁護士になんでこんなことになったの、と聞いたところこんな回答が
(以下私の超訳)  

正直言って、劣後するトランシェがみんな全損するような不動産価格の下落は想定していなかったんだ。こういう状況では本来劣後トランシェの連中は投票権を失うべきで、そうじゃないと失うもののない連中は相場回復という望みにすがって期間延長に投票する結果、優先部分のトランシェまで毀損することになってしまうよね。

これは弁護士がいけない、というよりはこの投票メカニズムを考えたビジネスサイドが相場がクラッシュするようなリスクを想定していなかった、またはこのメカニズムの部分にリスクがあると考えずに弁護士にドラフトを任せたのがいけなかったんだと思います。 
万が一の時に金をスルのは弁護士ではなく自分たちなのですから。

この辺アメリカ人のインベストメント・バンカーの交渉への集中力というか執着心というのは(かかっている報酬の大きさもあるのでしょうが)ものすごいものがあるので、こういう部分を見逃していたというのは意外ではあります。
ただ、証券化商品が大量に供給される(そして商品を組成するそばから売れていく)中では、仕組みの部分はデフォルト化してしまって誰も問題意識を持たなくなっていたのかもしれません。
(でも、少なくともそれをレビューすべき格付け機関くらいは気づいていてもよかったとは思いますが)  

起きてしまったことは仕方がないので、将来に向けての反省としては、弁護士は依頼人の依頼事項を契約書に反映することはできるけど依頼者以上の問題意識を持ってチェックしてくれるとは限らない、ということでしょうか。  

やはり自分のお金は他人任せにせず自分で守らないといけないということですね。


逆に弁護士の立場からすれば、依頼者がトンチンカンだとどうしようもないし、後で文句を言われても困るよ、ということでしょう(要領が悪い依頼者のほうがタイムチャージを稼げていいというような人はさておき)。

そのいい例がこれですね。
(あ、決して弁護士センセイを代書屋扱いしているわけではないので念のため。)

代書屋 桂春団冶(1/2)

代書屋 桂春団(2/2)



<おまけ>

弁護士氏は

ちなみにアメリカでは不動産担保ローンが5つくらいCMBSベースのCDOに入っていて結果的に数十人の利害の異なる投資家が発言権を持っているという"sliced and diced"な状態に比べれば、日本のCMBS(構造的には同じメカニズム)はそこまで細切れじゃないのが不幸中の幸いだよね。

と言ってます。
でも、米国の証券化商品に突っ込んでいる日本の機関投資家も多いでしょうから、あんまりうれしくもないですよね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする