米国流の「強欲資本主義」が崩壊したなどという話がよく出ますが、日本では金持ちでない庶民のの射幸心や「藁をもつかむ」気持ちを利用して商売をする「小欲資本主義」というか「弱いものいじめ資本主義」が跋扈しているような気がしてなりません。
それに対しては射幸心を煽るのを制限しようという動きもちらほら。
FX:レバレッジ倍率、規制強化 投資家反発も--金融庁
(2009年6月12日 毎日新聞)
金融庁は、外国為替証拠金取引(FX)について、少ない証拠金で高額の取引ができる「レバレッジ」の倍率規制に乗り出した。今月29日まで一般から意見を募集し、今夏からの施行を目指す。投資家保護を目的とする規制強化だが、賛否が分かれ、保護対象になるはずの投資家から反対の声もあがっている。
金融庁が規制に踏み切るのは、高いレバレッジ取引を提供する業者が増えているためだ。FX業者は約120社あり、半数以上が100倍以上のレバレッジを提供。600倍の取引を提供する会社もあるという。株の信用取引の証拠金倍率は約3倍、商品先物取引は10~20倍程度に規制されており、FX取引の倍率の高さが際立っている。
このため、同庁は先月末、約1年間の猶予期間を経てFX取引のレバレッジ上限を1年間は50倍、2年目以降は25倍とする規制案を公表した。100万円の取引をする場合、取引に必要な証拠金は50倍だとわずか2万円だが、25倍だと4万円が必要。レバレッジ倍率が高いと、少額の投資で大きな取引が可能となる半面、予想と逆の相場展開になった場合、わずかな値動きでも証拠金を全額失う。さらに、追加証拠金が必要になるなど損失拡大のリスクも大きい。
金融庁のパブコメはこちら
高レバレッジのFX取引については、
①顧客保護(ロスカットルールが十分に機能せず、顧客が不測の損害を被るおそれ)
②業者のリスク管理(顧客の損失が証拠金を上回ることにより、業者の財務の健全性に影響が出るおそれ)
③過当投機の観点から問題があると考えています。
考えはきわめて真っ当だと思います(「金融庁にしては珍しく」などとは申しません)が、一攫千金を夢見る人々(でもあくまでも「夢」なんですけどね・・・)からは反論が出ると思います(たとえば雑誌「SPA」の世界)。
だから依存性のある薬物は最初から禁止しないといけない、タバコの規制は難しいというのと同じですね。
実際、一定のインフラがあれば手っ取り早く参入できるので、ネット系の会社を中心に新規参入が増えています。
中には証拠金を「呑んで」しまって倒産したりしているところもありました。
「IT企業」と言っても(もう既に死語ですかね)最近はこういう実質的には貸金業で収益を上げているところが多いようです。
もっとストレートな貸金業としてはカードローンやリボ払いがあります。
ニュースのページを眺めてたら
<衝撃情報>今だけ年利1%■楽天×イーバンクおまとめローン■
というリンクがあったのでクリックしてみると、こんなページが
要するにカードローンをまとめるとキャンペーン金利が適用になりますよ、という話です。
ただ、このキャンペーン金利は8月31日までしか適用にならないので今だと2ヵ月半しか恩恵を受けられません。
申し込みと審査の期間を考えると2ヶ月を切るかもしれません。
おそらくカードローン各社は同じ信用情報機関を使っているので現在の適用金利や貸付額の各社あわせての総額も与信可能な額におさまっているはずなので、そういう優良顧客をキャンペーン金利で乗り換えさせて低リスクで「横取り」しようという戦略なのでしょう。
でも「優良顧客」といってもあくまでもカード会社にとってなので、つまりは比較的高金利の借入をしても返済が見込まれる人ということで、本当に財務体質が優良(健全)な人ならカードローンは借りないわけですよね。
その後の「通常金利」はどうなるかというと 商品概要説明書 によれば
ご利用限度額 お借入利率
50万円以上100万円未満 15.0%~17.8%
~200万円未満 9.6%~14.8%
~300万円未満 6.9%~14.8%
~400万円未満 4.9%~12.5%
~500万円未満 4.9%~8.9%
500万円以上 4.9%~7.8%
と、優遇期間の後も「お得」とはいえないようです。
(これも実際は金利の低い高額借入の方が上に書いてあります)
個人的にはにお金については「煽り」が冷静な判断を失わせやすいので、食品の産地偽装以上により厳しく見たほうがいいように思うのですが、この程度は問題ないようです。
レバレッジや金利などは計算して見ればわかる話なので情報の非対象性はなく、「投資・借金は自己責任」ということなのでしょうか。
「強欲資本主義」が崩壊して信用不安が起きましたが、「小欲資本主義」が崩壊すると社会不安が起きそうで心配です。