夢想。悦びに飢えた思想は、その手で、妻の首を絞めるだろう。アルキルは、その足で、湖畔を歩きながら孤独を満喫していた。七面鳥が鳴いているのが聞こえる。朝靄の雨だれ。アルキルは、その未亡人の様な足取りで、湖底へと目指す。何もかもが虚構に想えた。七並べの最後に置くカードは何か。アルキルは考える。死は極上の源へと帰化する為の道しるべに過ぎない。想像力が木霊している。川のから流れてくる死体の匂いは、この湖をコワクのものへと変容させる。稲穂が揺れては、その命を地中へと滲ませる。散漫とした話術に長けた詩人の憂鬱、そして、その全てを許容したアルキルの哀しみは、この世ではもう必要のない命の灯を感じている。爪先が水の中へと入り込む。冷たさと切なさが交錯するのは、一重に虚しいからである。静寂と虚勢がこの心を包み込む。水の感触の心地良さとは裏腹に、洗礼される黄泉の国への期待と不安。しばらく経ってから息を整えた。涙は、その重みで今にも溢れそうになる。アルキルの司令塔が、癇癪を破裂させる。お前は弱い奴だと。この世界では生きてはいられない屍なのだと。アルキルは、息を整える。地層深く沈んで、呼吸もままならない微生物のように、アルキルの心には、窮屈な劣等感だけが、ひしめいている。そして、水は孤独の心をまやかしの泉へと引きずり込んだ。意識の鎮静と、その煌めきは、アルキルの生存していた記憶の流れを断ち切った。零れ落ちる水の冷たさときたら。その言葉を訊くように耳を傾けたアルキルは、真っ先に地獄へと突き落とされてしまった。落葉樹が、その葉を落とすときに感じる寂しさのように、アルキルの精神は、朧な命の尊厳でさえ、見離すのである。アルキルは泣いた。意味も無く。ただ無情に身を任せるように。アルキルは、湖底を見た。そこには、幾万もの魂の叫びと肉片の塊が、魚に啄まれている光景が拡がっていた。これこそ真実なのだろうか。今宵宴が繰り広げられると聞いたが、それで、私の心は慰められるのであろうか。深海魚はその眼光で獲物の息の根を止める。崩れ去った積み木が、その轍の中で霧雨に打たれている。心地良いものが崩壊していく快楽に引き換え、北斗七星に彩られた逸脱の感情は、迷信のほかに何が存在しているというのだろうか。アルキルは考える。アルキルは苦しむ。もがき、雷に打たれ、身も心も魂をも、ミキサーにかけられた果物のように泥炭とかし、その呪詛に固められた魂の叫びを包括するのである。純白は、汚れのない心なのだろうか。三味線の音色は、何処か虚空を眺めている少年を想起させる。音楽は絶え間ない主旋律の最中に、人々の脳を焼き払う。清純な言葉はいらない。そしてアルキルは黙想する。自分の為に。世界の為に。
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