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電気炉ダストから亜鉛と鉄を同時に回収する手法を実証

2020-01-19 | 科学・技術
 科学技術振興機構(JST)は、開発課題「電気炉製鋼ダストからの高純度亜鉛と製鉄原料コプロダクションシステム」の開発結果を成功と認定した(令和元年12月26日)。この開発課題は、東北大学大学院工学研究科長坂徹也研究科長/教授らの研究成果をもとに、平成26年3月から平成31年3月にかけて株式会社豊栄商会(愛知県豊田市)に委託して、同社開発研究室が実用化開発を進めていたものである。
 ポイント
 〇電気炉で鉄スクラップを再溶解する時に発生する電気炉ダストは、処理費の負担と処理後残渣の取り扱いが電気炉メーカー共通の悩みとなっていた。
 〇石灰添加法により有害元素を除去し、真空加熱で金属亜鉛を還元回収、残留物を製鉄原料として再利用できる手法を開発し、ベンチスケールプラントで実証した。
 〇亜鉛と鉄を高効率に両方リサイクルでき、処理の一元化とともに、還元剤として炭材を使わないため二酸化炭素(CO2)排出量の低減効果も期待される。
 背景
 鉄鋼、自動車などの幅広い産業で発生する鉄スクラップをリサイクルするには、電気炉で再溶解して鉄鋼を生産する電気炉メーカーの存在が不可欠である。現在稼働している日本国内の電気炉からは、電気炉ダスト(煙灰)と呼ばれる微粒子物質が粗鋼生産1トン当たり16~17キログラム、年間約40万トン発生している。この電気炉ダストは特別管理産業廃棄物に指定されているが、通常、亜鉛が約20パーセント、鉄が約30パーセント含まれており、亜鉛需要の約80パーセントを輸入鉱石に頼る日本にとっては重要なリサイクル資源でもある。しかし、有害元素が含まれていることや、亜鉛および鉄の含有率が低いことから、亜鉛製錬業や鉄鋼メーカーには受け入れられず、多くは特別管理産業廃棄物の中間処理業者に処理費を払ってリサイクルを委託しているのが現状である。
 現状の電気炉ダストの中間処理には、炭素熱還元法であるウェルツ法が主に用いられているが、このプロセスが抱える課題は、以下の3点に集約される。
 ①亜鉛は還元され亜鉛蒸気になった直後に再酸化され酸化亜鉛としてしか回収できないため、金属亜鉛を得るために再度製錬する必要がある。
 ②回収した酸化亜鉛にはハロゲンや鉛も含まれるため、それを分離する必要がある。
 ③亜鉛を揮発させた後の残渣に含まれる鉄は再利用されず、廃棄されることが多い。
 このため、処理費の負担と処理後残渣の取り扱いが先進工業国の電気炉メーカー共通の大きな悩みとなっています。
 開発内容
 豊栄商会は、長坂教授らが開発した石灰添加法を採用した電気炉ダストの処理方法を開発した。まず電気炉ダストに石灰を添加し加熱することで有害元素を揮発除去し、次に還元剤として働く鉄と共に真空加熱することで、亜鉛は金属亜鉛として、鉄は製鉄原料となるカルシウムフェライトとしてそれぞれ回収するものである。電気炉ダストから亜鉛と鉄をそれぞれ有価物として同時にリサイクルする処理方法を、電気炉ダスト処理量で1日当たり1トンという中規模のベンチスケールプラントで実証した。
 石灰添加処理部では、電気炉ダストに加える石灰の比率や処理温度を最適化することで、電気炉ダストに含まれる難処理性の亜鉛フェライトを酸化亜鉛とカルシウムフェライトに転換するとともに、ハロゲンや鉛を除去できることが確認できた。さらに還元処理部では、適切な還元剤を用いて真空加熱処理をすることにより、亜鉛を高純度金属の形で分離回収できた。残留物は、カルシウムフェライトが主成分の新たな製鉄原料として再利用できる。
 期待される効果
 電気炉ダストから高純度の金属亜鉛と製鉄原料を同時にリサイクルすることがベンチスケールで実証できたことから、プラントスケールへと進むための足がかりが得られた。実用化すれば、これまで中間処理、製錬、廃棄物処理と複数の業種を経ていた処理を一元化できる可能性がある。高効率プロセスであり、消費電力は従来と比べて約30パーセント削減できる見通しである。酸化亜鉛の還元剤として一般的なコークスなどの炭材を使わないため、CO2排出量は約50パーセント低減でき、地球温暖化防止への貢献が期待される。
 ◆用語解説
 〇電気炉ダスト
 鉄スクラップを電気炉で再溶解して鉄鋼を製造するプロセスから発生する、微粒子状の物質。粗鋼生産1トン当たり16~17キログラム発生する。亜鉛を含有するのは、鉄スクラップに亜鉛メッキ鋼板などが含まれているためである。
 〇ウェルツ法
 世界的に電気炉ダストの中間処理で用いられているプロセス。電気炉ダストの主な亜鉛成分である亜鉛フェライトを、炭材を用いて高温還元する。発生した亜鉛蒸気のほとんどは空気中で再酸化されるため、亜鉛50~60パーセントの粗酸化亜鉛(ZnO)として回収する。一度還元したものが再酸化されるため非効率だった。
 〇亜鉛フェライト(ZnO・Fe2O3)
 電気炉ダストに含まれる亜鉛の主な形態の1つ。難還元性のため、ウェルツ法では強力な還元剤である炭材で還元する。
 〇カルシウムフェライト(2CaO・Fe2O3)
 製鉄原料の主要な鉄の形態の1つ。高炉内における還元性が良好で、石灰石を添加して製造するために必須な成分である。

 今日の天気は晴れ~曇り。風は弱く、ほとんどない状態。
 遠出散歩として、仙台飛行場に行ってきた・・バスと列車を乗り継いで・・連れ合いと。
 空港が充実した、とのこと・・お土産屋さんが充実してた。