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硫化水素や一酸化窒素をジワジワと放出する固体材料を開発

2020-02-11 | 科学・技術
 物質・材料研究機構 (NIMS)は、大気に触れると、硫化水素や一酸化窒素などのガスをジワジワと放出する固体材料を開発した。これらのガスは、低濃度では抗炎症や血管拡張など有用な生理活性があるが、濃度制御や保存が難しく、医療応用は限定的であった。安全・簡便にガスを放出できる本材料によって、ガスの医療応用が促進すると期待される。本研究は、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の石原伸輔主任研究員と井伊伸夫NIMS特別研究員によって行われた。本研究成果は、Nature Communications誌にて英国時間2020年1月23日10時 にオンライン掲載された。
 概要
 1.NIMSは、大気に触れると、硫化水素や一酸化窒素などのガスをジワジワと放出する固体材料を開発した。これらのガスは、低濃度では抗炎症や血管拡張など有用な生理活性があるが、濃度制御や保存が難しく、医療応用は限定的であった。安全・簡便にガスを放出できる本材料によって、ガスの医療応用が促進すると期待される。
 2.硫化水素や一酸化窒素は高濃度では有毒であるが、低濃度では抗酸化・抗炎症・血管拡張・インスリン分泌調節など有用な生理活性があり、体内でも微量に生成されて生体機能の制御に用いられている。近年、これらのガスを用いた医療が注目されていて、例えば、低濃度の一酸化窒素の吸入により肺血管が拡張し、いくつかの重篤呼吸障害 (新生児遷延性肺高血圧症や急性呼吸窮迫症候群) が改善できる。また、硫化水素を含む温泉が皮膚や循環器に効能があることは古くから知られていて、健康長寿医療への応用も期待される。しかし、これらガスの利用には高圧ボンベを含む大掛かりな設備が必要となる。取り扱い難さや安全上の懸念によって制限されてきたガスの医療応用を実現するため、ガスの保存や濃度制御を安全かつ簡易に行える固体材料が求められていた。
 3.研究チームは、層状複水酸化物と呼ばれる無機化合物を用いて、大気に触れるだけで硫化水素や一酸化窒素などのガスを所望の濃度レベルで徐々に放出する固体材料を開発した。本材料のベースとなったのは、マグネシウム (Mg) とアルミニウム (Al) を含む水酸化物の二次元ナノシートが層状に積み重なった構造を持つ物質である。この物質の層間に挟まれた炭酸イオンが、大気中の二酸化炭素と活発に交換するという、当研究チームが以前に発見した現象を応用し、層間にガス源となるイオンを入れて、大気中の二酸化炭素や水蒸気の刺激によって、硫化水素や一酸化窒素を発生させた。この時、ナノシートのMgとAlの割合を調整して、層間を狭めたりすることで、所望の濃度レベルで安定して放出させることに成功した。さらに、無電源で作動する携帯型一酸化窒素吸入器の試作にも成功している。本材料は、安価で無毒なMgやAlを原料としていて安全性に優れ、ガスを通さない袋で密閉することで保存でき、大気に接するだけで簡単に使える使い捨てカイロのように、大気と接して規定量のガス発生が可能である。
 4.今後、本材料を組み込んだ医薬品や医療機器を開発し、例えば在宅・外出先・途上国での一酸化窒素吸入法の実現など、これまでにない健康・救急医療の実現を目指す。また、本手法を拡張することで、他の機能性ガスを放出する新規材料の合成も期待される。
 ◆薬としての硫化水素・一酸化窒素
 〇硫化水素
 硫化水素(H2S)は我々の体の中で産生されている生理活性物質である。
 硫化水素イオンは体内の多くの器官系に影響を及ぼし、高濃度曝露の場合は吸入してすぐに意識を失い、呼吸不全および呼吸停止の結果、死に至る。
 硫化水素イオンには有害作用だけでなく、健康に良い働きもあることが近年明らかになる。
 私達の体の中には、酵素群によって硫化水素を生体内で産生するシステムが存在し、それが体に良い作用を示すことが分かってきた。硫化水素の善玉的側面については神経伝達の調節、血管平滑筋の弛緩、抗炎症作用、細胞保護作用など、特に2000年代以降、非常に数多くの報告がなされている。
 〇一酸化窒素
 一酸化窒素(nitric oxide, NO)は生体内で合成され、血管拡張作用や血小板凝集抑制作用など血栓症や止血と関わりの深い生理作用を持つ。
 NOは血管拡張作用があり、その不足は血管の内皮機能の低下や高血圧に関係する。また血管平滑筋増殖抑制作用は動脈硬化症の抑制、そして血小板凝集抑制作用は血栓症の制御に関連する。NOは平滑筋のCa2+感受性を抑制し、冠血管の攣縮を予防する。NOのドナーとなる物質やNO合成に関わるNOSの発現を制御する物質は高血圧症、動脈硬化症、血栓症、肺高血圧症などの疾患の治療薬として期待されている。狭心症治療薬のニトログリセリンや硝酸イソソルビドは細胞内でNOを発生することで血管平滑筋を弛緩する。

 今日は建国記念の日(2月11日)である。
 2月11日はかつての紀元節(きげんせつ)である。紀元節は日本書紀が伝える神武天皇の即位日(辛酉年春正月、庚辰朔)で旧暦の1月1日である。明治政府は当初(明治5年11月15日)に新暦に直して1月29日を即位日(紀元節)とした。しかし、1月29日は孝明天皇(こうめいてんのう:明治天皇の父)の命日である1月30日と近いため不都合が生じる事となった。このため、翌年の明治6年10月14日に神武天皇即位日を定め直して2月11日を紀元節とした。
 因みに、神武天皇即位の年を元年と定めた紀元(神武天皇即位紀元)が皇紀である。皇紀元年は西暦紀元前660年とされ、西暦2000年は皇紀2660年となる。
 朝起きたら一面雪。暫く積雪を見ていなかったから、季節に相応しい雪は歓迎だ。昼過ぎには、日陰を除いて溶けた。
 因みに、雪の異称には様々ある・・勉強になります。
 六花 / 六辺香 / 六出(りっか、ろっか)
  六角形の雪の結晶の形から。「むつのはな」ともいう。六弁の花の意。
 天花(てんか)
  雪の形容。「天華」とも書き、「てんげ、てんけ」で、天上界に咲く花を指す仏教用語。
 風花(かざはな、かざばな)
  晴天時に風に乗って舞う雪の形容。
 青女(せいじょ)
  古代中国における、霜や雪を降らすとされている女神のこと。そこから転じて、雪の形容。
 白魔(はくま)
  主に、災害に相当する大雪を悪魔に見立てるときなどに用いられる言葉。