北海道大学大学院工学研究院の佐藤久教授、セルスペクト株式会社の平野麗子研究員らの研究グループは、一度に多数のサンプル中の大腸菌数を早くて安価な上、簡単に測定できる技術の開発に成功した。本研究成果は、2020年1月25日(土)「Science of The Total Environment」誌に掲載。
ポイント
〇大腸菌が分解できる蛍光色素の蛍光強度を高感度で測り、大腸菌数を測定する技術を開発。
〇測定時間はわずか2時間、測定コストは約2円の上、一度に96サンプルも測定可能。
〇浄水場や食品加工場、開発途上国の井戸といった実際の現場での利用に期待。
背景
大腸菌は本来、その名のとおり大腸の中に存在する細菌であり、自然界や食品には存在しない。そのような大腸菌が河川や地下水・飲料水や食品に存在することは、それらが大腸の中にあるもの、すなわち糞便で汚染されていることを示している。ほとんどの大腸菌はヒトにとって無害であるが、糞便中には多種多様な病原菌が存在する可能性が極めて高く、糞便で汚染されたものを口にすることは好ましくないため、水や食品中の大腸菌数の測定が法律で定められている。また、大腸菌数の調査結果が出るまで安全性を保証できず水や食品を出荷できないため、製品が汚染されているかどうかをできるだけ早く調査する必要がある。
研究手法・研究成果
現在、大腸菌数は寒天培地や液体培地を用いて測定しているが、従来の方法では結果を得るまでに24時間程度かかる。研究グループは、大腸菌が持つ酵素を蛍光色素により高感度に検出することで、測定時間をわずか2時間に短縮することに成功した。また、蛍光強度は大腸菌数と比例するため大腸菌数も測定できるほか、一度に96サンプルも測定できるため1サンプルあたりの測定コストは約2円と非常に安価であることも特徴である。
今後への期待
本研究では下水しか測っていないが、研究グループは大腸菌数が 1 MPN/L程度という低濃度のサンプルの測定や河川水や牛乳中の大腸菌数の測定にも成功している。実験室での検証は終わっているため、今後は浄水場や食品加工場・開発途上国の井戸などの実際の現場で使用していく考えである。
◇新手法開発
この手法は大腸菌が持つ酵素に着目した点にある。この酵素は基質のみを分解する働きを持っているため、酵素に分解される前は蛍光を発せず、分解後にのみ蛍光を発する基質を用いることで、大腸菌の存在を知ることに成功した。
新手法では、下水のような汚れたサンプルでも事前の処理なく測定できた。新手法では10~10,000 MPN/mLの範囲であれば希釈しなくても測定できる。
本研究で用いた高感度の装置により、大腸菌が 増殖する前の培養開始直後の微弱な蛍光も30分以内に検出できた。そのため、わずか2時間で大腸菌の数を測定できた。また、分解能は高く80 MPN 6/mLと96 MPN/mLの差も十分判別できた。
◆用語解説
〇培地
微生物の培養に用いられるエサを含んだ液体や固体のこと。
〇コロニー
24時間程度微生物を培養すると目に見えるようになる微生物の塊のこと。
〇基質
ある酵素が分解できる特定の物質のこと。蛍光基質はこれに蛍光色素が付いたもの。
〇マイクロプレート
縦8cm×横13cm×高さ1.5cm程度の板状のプラスチック容器。0.2mLの液体が入る小さなくぼみが96個ある。
〇マイクロプレートリーダー
マイクロプレートの一つ一つのくぼみの中の蛍光強度を測る装置。
〇MPN
微生物の数の単位。正確には匹ではないが 1MPNは 1匹 1cfu と考えて差し支えない。
ポイント
〇大腸菌が分解できる蛍光色素の蛍光強度を高感度で測り、大腸菌数を測定する技術を開発。
〇測定時間はわずか2時間、測定コストは約2円の上、一度に96サンプルも測定可能。
〇浄水場や食品加工場、開発途上国の井戸といった実際の現場での利用に期待。
背景
大腸菌は本来、その名のとおり大腸の中に存在する細菌であり、自然界や食品には存在しない。そのような大腸菌が河川や地下水・飲料水や食品に存在することは、それらが大腸の中にあるもの、すなわち糞便で汚染されていることを示している。ほとんどの大腸菌はヒトにとって無害であるが、糞便中には多種多様な病原菌が存在する可能性が極めて高く、糞便で汚染されたものを口にすることは好ましくないため、水や食品中の大腸菌数の測定が法律で定められている。また、大腸菌数の調査結果が出るまで安全性を保証できず水や食品を出荷できないため、製品が汚染されているかどうかをできるだけ早く調査する必要がある。
研究手法・研究成果
現在、大腸菌数は寒天培地や液体培地を用いて測定しているが、従来の方法では結果を得るまでに24時間程度かかる。研究グループは、大腸菌が持つ酵素を蛍光色素により高感度に検出することで、測定時間をわずか2時間に短縮することに成功した。また、蛍光強度は大腸菌数と比例するため大腸菌数も測定できるほか、一度に96サンプルも測定できるため1サンプルあたりの測定コストは約2円と非常に安価であることも特徴である。
今後への期待
本研究では下水しか測っていないが、研究グループは大腸菌数が 1 MPN/L程度という低濃度のサンプルの測定や河川水や牛乳中の大腸菌数の測定にも成功している。実験室での検証は終わっているため、今後は浄水場や食品加工場・開発途上国の井戸などの実際の現場で使用していく考えである。
◇新手法開発
この手法は大腸菌が持つ酵素に着目した点にある。この酵素は基質のみを分解する働きを持っているため、酵素に分解される前は蛍光を発せず、分解後にのみ蛍光を発する基質を用いることで、大腸菌の存在を知ることに成功した。
新手法では、下水のような汚れたサンプルでも事前の処理なく測定できた。新手法では10~10,000 MPN/mLの範囲であれば希釈しなくても測定できる。
本研究で用いた高感度の装置により、大腸菌が 増殖する前の培養開始直後の微弱な蛍光も30分以内に検出できた。そのため、わずか2時間で大腸菌の数を測定できた。また、分解能は高く80 MPN 6/mLと96 MPN/mLの差も十分判別できた。
◆用語解説
〇培地
微生物の培養に用いられるエサを含んだ液体や固体のこと。
〇コロニー
24時間程度微生物を培養すると目に見えるようになる微生物の塊のこと。
〇基質
ある酵素が分解できる特定の物質のこと。蛍光基質はこれに蛍光色素が付いたもの。
〇マイクロプレート
縦8cm×横13cm×高さ1.5cm程度の板状のプラスチック容器。0.2mLの液体が入る小さなくぼみが96個ある。
〇マイクロプレートリーダー
マイクロプレートの一つ一つのくぼみの中の蛍光強度を測る装置。
〇MPN
微生物の数の単位。正確には匹ではないが 1MPNは 1匹 1cfu と考えて差し支えない。