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がん細胞排除の過程で生じるカルシウムウェーブの存在を発見

2020-02-13 | 医学
 北海道大学遺伝子病制御研究所の藤田恭之教授らの研究グループは、がん化の超初期段階において変異細胞が正常細胞層から排除される際に、変異細胞から周囲の正常細胞に向かってカルシウムイオンが花火のように同心円状に伝播することを突き止めた。このカルシウムウェーブを受けた正常細胞が変異細胞に向かって押し寄せるように動くことによって、変異細胞の排除を促進していることがわかった。変異細胞の排除に伴うカルシウムウェーブは,哺乳類培養細胞層及びゼブラフィッシュの皮膚細胞層の両者で同様に観察されることから、進化の過程で保存された普遍的な現象であることが示唆される。これらの研究成果は,これまでブラックボックスであったがんの超初期段階で生じる現象を明らかにするものであり、「世界初のがん予防薬」の開発につながることが期待できる。本研究成果は、 2020年1月31日公開のCurrent Biology誌にオンライン掲載。
 ポイント
 〇これまでブラックボックスであった、がん化の超初期段階で起こる現象を解明。
 〇変異細胞から周囲の正常細胞に伝播するカルシウムの波が変異細胞の排除を促進。
 〇新たながん研究分野の開拓、「世界初のがん予防薬」の開発につながることが期待。
 研究手法
 独自に確立した培養細胞系とマウスモデルを用いて、変異細胞が 正常細胞 層から排除される時の細胞内のカルシウムイオン濃度を解析した。
 研究成果
 変異細胞が正常細胞層から排除される際に変異細胞から周囲の正常細胞に向かってカルシウムイオンが同心円状に波のように伝播することを突き止めた。さらに、カルシウムウェーブを受けた正常細胞に様々な変化が生じ、その結果 正常細胞が変異細胞に向かって押し寄せるように動くことによって 変異細胞の排除を 押し出すように促進していることがわかった。
 今後への期待
 これらは,これまでブラックボックスであったがんの超初期段階で起こる現象を明らかにした研究成果であり、新たながん研究分野の開拓につながる可能性がある。この研究成果をさらに発展させることによって、世界初の「がん予防薬」の開発へつながることが期待される。
 ◆カルシウム
 カルシウムは原子番号20の金属元素。元素記号はCa。周期表第2族アルカリ土類元素の一種。
 人体に最も多いミネラルで、体重の約2%(約1kg)を占めている。生体ミネラルの中でCaが最も多く、生体の構造維持に必要な骨格を形成している。骨以外(体液中や細胞内)でCaはカルシウムイオン(Ca2+)として存在し、細胞内シグナル伝達を担う代表的なセカンドメッセンジャーの一つであり、広範な細胞機能の制御に関与している。
 体内のカルシウム濃度はビタミンD、副甲状腺ホルモン、カルシトニンの3つによって調節されている。カルシウム全体の99%は骨や歯の成分(ハイドロキシアパタイト)として存在する。脳神経系においても、神経伝達物質放出、シナプス可塑性、神経細胞死のトリガーとなるものであり、また各種グリア細胞機能の制御に不可欠である。