物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (WPI-MANA) の古月暁MANA主任研究者、王星翔NIMSジュニア研究員と、中国北京大学Renmin MA教授のグループからなる研究チームにより、「ハニカム型フォトニック結晶のトポロジカル特性による新規光閉じ込め現象を発見し、優れた指向性を示す微小レーザーの作製に成功した」。本成果は、「Nature Nanotechnology誌」にて英国時間2019年12月16日16時にオンライン掲載。
物質の性質が系の形状の変化に影響されない「トポロジカル特性」に関する研究が盛んに繰り広げられ、量子コンピューターの実現など、優れた新規機能開発につながることが期待されている。一般的に物質の持つトポロジカル特性は、系の表面や縁に局所的に現れる(バルク-エッジ対応)。それらを利用すれば、抵抗を伴わない電流や欠陥にも散乱されない光・電磁波伝播が実現できる。しかし、トポロジカル特性が、表面や縁だけでなく、系全体の性能の向上に役立つか否かは解明されてなかった。
研究チームは、トポロジカル特性を示す発光性半導体フォトニック結晶の周辺を、トポロジカル特性を持たないフォトニック結晶で囲むことで、その境界で光が反射され、中心部に閉じ込められた光モードが増幅する現象を発見した。このアプローチのユニークな点として、フォトニック結晶がトポロジカル特性を持つか持たないかは、三角空孔のハニカム配列をベースに、三角空孔の位置を、ハニカム配列の単位胞の中心からわずかに遠ざけるか近づけるかで作り分けることが可能である。このデバイスを用いた室温下での光照射レーザー発振は、微小なデバイスサイズにもかかわらず、共振器面に垂直な方向への優れた指向性を示す。さらに発光閾値などレーザー特性の指標も、IEEEやその他の工業規格を満たすことが確認された。
今後の展開
今回の研究によって、トポロジカルフォトニック結晶の全体にわたるレーザー発振が確認され、物質のトポロジカル特性が、系全体の性能の向上に役立つことが証明された。トポロジカル特性由来のレーザー発振原理は、マイクロレーザーのさらなる小型化、出力パワー向上や、光渦などの優れたレーザー性能探索などの研究開発の新しい指針になる。極小で優れた固体レーザー光源の開発は、近接場光学顕微鏡や、昨年ノーベル物理学賞の受賞で大きく注目された光ピンセットなど、ミクロな世界のレーザー技術をはじめ、医療・生命科学技術の革新にも寄与するものと期待される。トポロジカル特性由来の新しい反射機構は、光現象のみならず、電子系や弾性波を含む多くの振動現象にも応用でき、今回の研究成果は幅広い新規機能探索とデバイス開発につながると思われる。
◆用語解説
〇フォトニック結晶
誘電率や透磁率の異なる材料が周期的に並んでできた光の人工媒体のこと。材料の特性、構造の形状や周期配列の対称性など、さまざまなパラメーターの制御が可能であり、新規光機能の開発に利用されている。
〇トポロジカル特性
物体のつながり方を分類するための数学概念として、トポロジーが知られている。例えば、コーヒーカップとドーナッツに共に1つの空孔があるため、見かけ上違っているにもかかわらず、その二者はトポロジー的に同類である。連続変形に対して、空孔の数が変わらないからである。近年、一部の物質結晶中の電子やフォトニック結晶中の光モードの波動関数が、逆格子空間において特異なつながり方を示すことが明らかになった。その結果として現れる、サンプルの変形や欠陥からの影響を受けない輸送現象などがトポロジカル特性と呼ばれている。
〇バルク-エッジ対応
系全体の波動関数が非自明なトポロジカル特性を示す場合、必ずその表面や縁に新たな状態が現れる。表面や縁にある状態の強靭性は、系全体のトポロジカル特性によって担保されることが特徴である。
〇多重量子井戸構造
異なる物質の超薄膜の積層によって、垂直方向における電子の移動が束縛され、そのエネルギーが離散化される状態を得るための構造。レーザーなどでは、その構造を多重に繰り返すことによって発光効率が改善される。
〇トポロジカルフォトニック結晶
非自明なトポロジカル光特性を示すフォトニック結晶のことで、その表面や縁に、欠陥や鋭角経路にも散乱されない光・電磁波伝播経路が現れる。その実現方法として、磁場中で磁気光学特性を示すジャイロ物質を利用するものや、誘電体フォトニック結晶の対称性を利用するものが知られている。本研究は、発光性半導体のハニカムフォトニック結晶にわずかな変形を加え、モード反転を誘起することによって得られる光トポロジカル特性を利用している。
〇双極子モード、四重極子モード
方位角が一周するのに伴い、波動関数の値が正から負に変わった後に正に戻る、1回振動するモードのことが双極子モードと呼ばれる。この場合、波動関数が2つの方位角でゼロになっている。これに対して、四重極子モードでは、方位角が一周するのに伴い、波動関数が2回振動し、4つの方位角でゼロになっている。空間反転操作に対して、双極子モードの波動関数は符号を変えるのに対して、四重極子モードでは符号が変わらない。
〇モード反転
通常、波動関数のゼロ点を多く含むモードがより高いエネルギーや周波数を持つ。結晶の対称性や内部構造の設計によって、逆格子空間の一部において、ゼロ点の多いモードが逆に、ゼロ点の少ないものより低いエネルギーや周波数を取るようになることがモード反転と呼ばれる。ハニカム格子では、空間反転対称性の異なる双極子モードと四重極子モードが、同じエネルギーや周波数を示す。このため、ハニカム構造に微小な変形を加えることによって、容易にモード反転を引き起こすことができ、トポロジカル状態の創成に利用できる。
今日の天気は晴れ。でも気温は低くまだ春は来ない。
散歩での風景。田圃の中の神社、近くを走る新幹線、休耕田に作られたソーラーパネル・・現在の日本を象徴している様な風景だ。
小さな神社は、羽山神社。五穀豊穣の神社として遷座され、鎌倉・江戸時代には羽山権現社として奥州各地より参拝者があったと言われる。現在、周囲は田園であるが、藩政時代は奥の院もあり広い社地が鬱蒼とした杉に包まれていた様だ。
物質の性質が系の形状の変化に影響されない「トポロジカル特性」に関する研究が盛んに繰り広げられ、量子コンピューターの実現など、優れた新規機能開発につながることが期待されている。一般的に物質の持つトポロジカル特性は、系の表面や縁に局所的に現れる(バルク-エッジ対応)。それらを利用すれば、抵抗を伴わない電流や欠陥にも散乱されない光・電磁波伝播が実現できる。しかし、トポロジカル特性が、表面や縁だけでなく、系全体の性能の向上に役立つか否かは解明されてなかった。
研究チームは、トポロジカル特性を示す発光性半導体フォトニック結晶の周辺を、トポロジカル特性を持たないフォトニック結晶で囲むことで、その境界で光が反射され、中心部に閉じ込められた光モードが増幅する現象を発見した。このアプローチのユニークな点として、フォトニック結晶がトポロジカル特性を持つか持たないかは、三角空孔のハニカム配列をベースに、三角空孔の位置を、ハニカム配列の単位胞の中心からわずかに遠ざけるか近づけるかで作り分けることが可能である。このデバイスを用いた室温下での光照射レーザー発振は、微小なデバイスサイズにもかかわらず、共振器面に垂直な方向への優れた指向性を示す。さらに発光閾値などレーザー特性の指標も、IEEEやその他の工業規格を満たすことが確認された。
今後の展開
今回の研究によって、トポロジカルフォトニック結晶の全体にわたるレーザー発振が確認され、物質のトポロジカル特性が、系全体の性能の向上に役立つことが証明された。トポロジカル特性由来のレーザー発振原理は、マイクロレーザーのさらなる小型化、出力パワー向上や、光渦などの優れたレーザー性能探索などの研究開発の新しい指針になる。極小で優れた固体レーザー光源の開発は、近接場光学顕微鏡や、昨年ノーベル物理学賞の受賞で大きく注目された光ピンセットなど、ミクロな世界のレーザー技術をはじめ、医療・生命科学技術の革新にも寄与するものと期待される。トポロジカル特性由来の新しい反射機構は、光現象のみならず、電子系や弾性波を含む多くの振動現象にも応用でき、今回の研究成果は幅広い新規機能探索とデバイス開発につながると思われる。
◆用語解説
〇フォトニック結晶
誘電率や透磁率の異なる材料が周期的に並んでできた光の人工媒体のこと。材料の特性、構造の形状や周期配列の対称性など、さまざまなパラメーターの制御が可能であり、新規光機能の開発に利用されている。
〇トポロジカル特性
物体のつながり方を分類するための数学概念として、トポロジーが知られている。例えば、コーヒーカップとドーナッツに共に1つの空孔があるため、見かけ上違っているにもかかわらず、その二者はトポロジー的に同類である。連続変形に対して、空孔の数が変わらないからである。近年、一部の物質結晶中の電子やフォトニック結晶中の光モードの波動関数が、逆格子空間において特異なつながり方を示すことが明らかになった。その結果として現れる、サンプルの変形や欠陥からの影響を受けない輸送現象などがトポロジカル特性と呼ばれている。
〇バルク-エッジ対応
系全体の波動関数が非自明なトポロジカル特性を示す場合、必ずその表面や縁に新たな状態が現れる。表面や縁にある状態の強靭性は、系全体のトポロジカル特性によって担保されることが特徴である。
〇多重量子井戸構造
異なる物質の超薄膜の積層によって、垂直方向における電子の移動が束縛され、そのエネルギーが離散化される状態を得るための構造。レーザーなどでは、その構造を多重に繰り返すことによって発光効率が改善される。
〇トポロジカルフォトニック結晶
非自明なトポロジカル光特性を示すフォトニック結晶のことで、その表面や縁に、欠陥や鋭角経路にも散乱されない光・電磁波伝播経路が現れる。その実現方法として、磁場中で磁気光学特性を示すジャイロ物質を利用するものや、誘電体フォトニック結晶の対称性を利用するものが知られている。本研究は、発光性半導体のハニカムフォトニック結晶にわずかな変形を加え、モード反転を誘起することによって得られる光トポロジカル特性を利用している。
〇双極子モード、四重極子モード
方位角が一周するのに伴い、波動関数の値が正から負に変わった後に正に戻る、1回振動するモードのことが双極子モードと呼ばれる。この場合、波動関数が2つの方位角でゼロになっている。これに対して、四重極子モードでは、方位角が一周するのに伴い、波動関数が2回振動し、4つの方位角でゼロになっている。空間反転操作に対して、双極子モードの波動関数は符号を変えるのに対して、四重極子モードでは符号が変わらない。
〇モード反転
通常、波動関数のゼロ点を多く含むモードがより高いエネルギーや周波数を持つ。結晶の対称性や内部構造の設計によって、逆格子空間の一部において、ゼロ点の多いモードが逆に、ゼロ点の少ないものより低いエネルギーや周波数を取るようになることがモード反転と呼ばれる。ハニカム格子では、空間反転対称性の異なる双極子モードと四重極子モードが、同じエネルギーや周波数を示す。このため、ハニカム構造に微小な変形を加えることによって、容易にモード反転を引き起こすことができ、トポロジカル状態の創成に利用できる。
今日の天気は晴れ。でも気温は低くまだ春は来ない。
散歩での風景。田圃の中の神社、近くを走る新幹線、休耕田に作られたソーラーパネル・・現在の日本を象徴している様な風景だ。
小さな神社は、羽山神社。五穀豊穣の神社として遷座され、鎌倉・江戸時代には羽山権現社として奥州各地より参拝者があったと言われる。現在、周囲は田園であるが、藩政時代は奥の院もあり広い社地が鬱蒼とした杉に包まれていた様だ。