千葉大学グローバルプロミネント研究基幹の矢貝史樹 教授を中心とする国際共同研究チームは、酸素原子が1つ異なる2種類の分子を混ぜると、分子の認識で形成されたユニットが積層するという全く新しい超分子重合を実現した。さらに、ある温度帯で一気に構造が崩壊するというこれまでになかった熱応答性を示すポリマー材料の創製に成功した。この成果は、刺激に対して高速で応答して状態を変えるソフトマテリアルの設計指針となることが期待される。本研究の成果は、「Nature Communications」にて 2020年4月1日に公開。
研究の背景
分子(モノマー)が弱い可逆的な相互作用(非共有結合)によって結合したものは「超分子ポリマー」と呼ばれ、近年スマートソフトマテリアルとして注目を集めている。超分子ポリマーは、共有結合という強い結合で重合した従来のポリマーと比較して、多様な機能を持った分子を簡単に高分子化することができ、分解が容易で自己修復が可能であるなど、従来のポリマーにはない性質を持っている。分子構造を緻密にデザインした超分子ポリマーを開発することで、より高度な環境応答性を示すポリマー材料設計が可能になる。
研究成果
研究チームは、今回、わずかに分子構造の異なる2種類のモノマーを混ぜるだけで分子認識によるユニットの形成によって駆動される超分子重合法の開発に成功した。
研究チームではこれまで、脂溶性ナフタレン誘導体の1つが、有機溶剤中で水素結合によって風車状ユニットを形成し、このユニットが曲率を生み出しながら弱い力で積層(超分子重合)することで、リング状の超分子ポリマーを形成することを見出していた。また、そのナフタレン誘導体に酸素原子を1つ付加した分子は、電気陰性度が大きい酸素原子によってナフタレン
部位の電子密度が減少することで積層様式が変化し、曲がることなくまっすぐに伸びたファイバー構造を形成することも明らかにしていた。
今回、研究者らは、2つのナフタレン分子を混合することで、ナフタレン部位の電子密度の違いによって分子が引き合う力を利用し、超分子高次構造の曲率の度合いを制御できるのではないかとの仮説のもと、実験を行った。2種の分子を有機溶媒中で混ぜたのち、構造体を乾燥させて原子間力顕微鏡(AFM)で観察した結果、はじめにアモルファス構造と呼ばれる明確な構造がない状態が観察された。その後、このアモルファス構造溶液を室温で放置したところ、数日かけて徐々にらせん構造が形成していく様子が観察された。また、このらせん構造の形成は、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所フォトンファクトリーBL-10C における小角X 線散乱測定によっても確認できた。
続いて、このアモルファス構造から、らせん構造の形成メカニズムを明らかにするため、様々なスペクトルを測定した。その結果、アモルファス構造の状態では、赤と緑の分子がランダムに集合してできる多様な風車状ユニットで構成されているものの、らせん構造は、赤と緑の分子が交互に配列した統合型風車状ユニットからなることがわかった。この統合型ユニットが
形成される仕組みとして重要なのは、積層することで、電子に富んだ赤分子と電子が不足した緑分子の電子的な相互作用を最大にでき、エネルギーが安定化することであると考えられる。
研究チームは、この電子的な相互作用によって、風車状ユニット間が重合する力も強くなることから、統合型ユニットはリングで止まらずにらせん構造へと自発的に成長することを見出した。また、らせん構造の分解メカニズムを調べるため、らせん構造の溶液を加熱したところ、45 ℃から50 ℃という非常に狭い温度範囲でアモルファス構造へと一気に崩壊するという現象が確認された。従来、溶液中における超分子ポリマーの熱分解は、その末端や欠陥部位から徐々に起こることが一般的である。今回の超分子ポリマーにおいては、2つの分子が交互に並んだ統合型ユニットの積層は非常に強く、温度に対してある程度の耐性を示すが、その内部では、温度上昇に伴ってより乱雑になろうとする傾向が強くなる。このらせん構造は、ある温度においてエネルギーの均衡が崩れることで一気に崩壊するという、これまでにない分解メカニズムを持っていることが明らかになった。
今後の展望
本研究のプロジェクトリーダーである矢貝史樹 教授は次のように述べています。「今回、モノマーが風車状のユニットを介して階層的に超分子ポリマーを形成し、そのユニットの組成が超分子ポリマーの形成を支配することが明らかになりました。また、この仕組みを利用すれば、温度に対して鋭敏に応答する高分子材料を生み出すことができることもわかりました。今後、さらに多様な分子を用いることで、より様々な刺激に対して高速に応答する新たなソフトマテリアルの材料の創出が可能になると期待されます。」
◆用語解説
〇分子認識
分子が他の分子を見分ける現象。水素結合、配位結合、疎水効果、ファンデルワールス力、π.π 相互作用、静電相互作用などの分子間相互作用によって起きる。例えば、生体内でDNA は遺伝情報を保存するために二重らせんを形成しているが、この二重らせんを形成するための対となるDNA 鎖を構成要素間の水素結合によって分子認識している。
朝から晴れ。気温は、最高気温18℃と温かい・・でも風はヒヤリと冷たい。
建物の敷地にある植生地、”ツクシ”の林となっている。
”ツクシ”はスギナの胞子茎(胞子穂、胞子体とも言う)で、胞子茎(ほうしけい)とは胞子嚢(ほうしのう、胞子が入っている袋)をつける茎。ツクシの後に続いて、横から栄養茎(主軸の節ごとに取り巻くように細い線状の葉が付く)が出てくる・・これがスギナ(杉菜)。”ツクシ”群の中に、”スギナ”がまだ見えない。
名(ツクシ)の由来は、”スギナ”に付いているから付子(ツクシ)説、ツクヅクシ(突く突くし、突出している様子)の転訛のツクシ説、突々串〈つくつくくし、串の様に突き出ている)からの説、澪標(みをつくし、航路標識:水から突きでた柱)からの説、などがある。漢字での「土筆」は、土から伸びる筆の姿を表している。
因みに、ツクシは食用となる・・「胞子のほろ苦さと茎の歯ざわりは最高」らしい。
ツクシ(土筆、付子)
英名:horsetail(馬の尻尾)
スギナ(杉菜)の胞子茎、スギナはトクサ科トクサ属
出る時期は、桜の開花と同じ頃の3月下旬~4月上旬
スギナ(杉菜);緑色の細い葉は4月頃に見る
研究の背景
分子(モノマー)が弱い可逆的な相互作用(非共有結合)によって結合したものは「超分子ポリマー」と呼ばれ、近年スマートソフトマテリアルとして注目を集めている。超分子ポリマーは、共有結合という強い結合で重合した従来のポリマーと比較して、多様な機能を持った分子を簡単に高分子化することができ、分解が容易で自己修復が可能であるなど、従来のポリマーにはない性質を持っている。分子構造を緻密にデザインした超分子ポリマーを開発することで、より高度な環境応答性を示すポリマー材料設計が可能になる。
研究成果
研究チームは、今回、わずかに分子構造の異なる2種類のモノマーを混ぜるだけで分子認識によるユニットの形成によって駆動される超分子重合法の開発に成功した。
研究チームではこれまで、脂溶性ナフタレン誘導体の1つが、有機溶剤中で水素結合によって風車状ユニットを形成し、このユニットが曲率を生み出しながら弱い力で積層(超分子重合)することで、リング状の超分子ポリマーを形成することを見出していた。また、そのナフタレン誘導体に酸素原子を1つ付加した分子は、電気陰性度が大きい酸素原子によってナフタレン
部位の電子密度が減少することで積層様式が変化し、曲がることなくまっすぐに伸びたファイバー構造を形成することも明らかにしていた。
今回、研究者らは、2つのナフタレン分子を混合することで、ナフタレン部位の電子密度の違いによって分子が引き合う力を利用し、超分子高次構造の曲率の度合いを制御できるのではないかとの仮説のもと、実験を行った。2種の分子を有機溶媒中で混ぜたのち、構造体を乾燥させて原子間力顕微鏡(AFM)で観察した結果、はじめにアモルファス構造と呼ばれる明確な構造がない状態が観察された。その後、このアモルファス構造溶液を室温で放置したところ、数日かけて徐々にらせん構造が形成していく様子が観察された。また、このらせん構造の形成は、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所フォトンファクトリーBL-10C における小角X 線散乱測定によっても確認できた。
続いて、このアモルファス構造から、らせん構造の形成メカニズムを明らかにするため、様々なスペクトルを測定した。その結果、アモルファス構造の状態では、赤と緑の分子がランダムに集合してできる多様な風車状ユニットで構成されているものの、らせん構造は、赤と緑の分子が交互に配列した統合型風車状ユニットからなることがわかった。この統合型ユニットが
形成される仕組みとして重要なのは、積層することで、電子に富んだ赤分子と電子が不足した緑分子の電子的な相互作用を最大にでき、エネルギーが安定化することであると考えられる。
研究チームは、この電子的な相互作用によって、風車状ユニット間が重合する力も強くなることから、統合型ユニットはリングで止まらずにらせん構造へと自発的に成長することを見出した。また、らせん構造の分解メカニズムを調べるため、らせん構造の溶液を加熱したところ、45 ℃から50 ℃という非常に狭い温度範囲でアモルファス構造へと一気に崩壊するという現象が確認された。従来、溶液中における超分子ポリマーの熱分解は、その末端や欠陥部位から徐々に起こることが一般的である。今回の超分子ポリマーにおいては、2つの分子が交互に並んだ統合型ユニットの積層は非常に強く、温度に対してある程度の耐性を示すが、その内部では、温度上昇に伴ってより乱雑になろうとする傾向が強くなる。このらせん構造は、ある温度においてエネルギーの均衡が崩れることで一気に崩壊するという、これまでにない分解メカニズムを持っていることが明らかになった。
今後の展望
本研究のプロジェクトリーダーである矢貝史樹 教授は次のように述べています。「今回、モノマーが風車状のユニットを介して階層的に超分子ポリマーを形成し、そのユニットの組成が超分子ポリマーの形成を支配することが明らかになりました。また、この仕組みを利用すれば、温度に対して鋭敏に応答する高分子材料を生み出すことができることもわかりました。今後、さらに多様な分子を用いることで、より様々な刺激に対して高速に応答する新たなソフトマテリアルの材料の創出が可能になると期待されます。」
◆用語解説
〇分子認識
分子が他の分子を見分ける現象。水素結合、配位結合、疎水効果、ファンデルワールス力、π.π 相互作用、静電相互作用などの分子間相互作用によって起きる。例えば、生体内でDNA は遺伝情報を保存するために二重らせんを形成しているが、この二重らせんを形成するための対となるDNA 鎖を構成要素間の水素結合によって分子認識している。
朝から晴れ。気温は、最高気温18℃と温かい・・でも風はヒヤリと冷たい。
建物の敷地にある植生地、”ツクシ”の林となっている。
”ツクシ”はスギナの胞子茎(胞子穂、胞子体とも言う)で、胞子茎(ほうしけい)とは胞子嚢(ほうしのう、胞子が入っている袋)をつける茎。ツクシの後に続いて、横から栄養茎(主軸の節ごとに取り巻くように細い線状の葉が付く)が出てくる・・これがスギナ(杉菜)。”ツクシ”群の中に、”スギナ”がまだ見えない。
名(ツクシ)の由来は、”スギナ”に付いているから付子(ツクシ)説、ツクヅクシ(突く突くし、突出している様子)の転訛のツクシ説、突々串〈つくつくくし、串の様に突き出ている)からの説、澪標(みをつくし、航路標識:水から突きでた柱)からの説、などがある。漢字での「土筆」は、土から伸びる筆の姿を表している。
因みに、ツクシは食用となる・・「胞子のほろ苦さと茎の歯ざわりは最高」らしい。
ツクシ(土筆、付子)
英名:horsetail(馬の尻尾)
スギナ(杉菜)の胞子茎、スギナはトクサ科トクサ属
出る時期は、桜の開花と同じ頃の3月下旬~4月上旬
スギナ(杉菜);緑色の細い葉は4月頃に見る