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ヒト皮膚線維芽細胞からヒト褐色脂肪細胞を誘導する方法を開発

2020-04-12 | 健康・病気
 京都府立医科大学大学院医学研究科細胞再生医学戴平研究教授らの研究グループは、ヒト皮膚由来線維芽細胞を最適化された数種類の低分子化合物を添加した無血清誘導培地を用いて培養することにより、褐色脂肪細胞を誘導する方法を開発した。本研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」(英国時間:2020年2月28日)に掲載。
 褐色脂肪細胞は、脂肪を蓄えるための細胞ではなく、脂肪を燃焼し熱を産生する細胞として知られており、体温の維持や代謝の向上によって、肥満や糖尿病の予防に重要な役割を果たしていると考えられている。研究グループは、ヒト皮膚由来線維芽細胞から数種類の低分子化合物を添加した無血清培地を使用し、褐色脂肪細胞を簡便かつ短期間で誘導する方法を開発した。この誘導方法は、遺伝子の導入を行う必要がなく、動物由来成分や未知の成分を含む血清を使用しないため、基礎研究だけでなく、創薬研究にとって極めて重要である。また、この褐色脂肪細胞は上記の理由から安全性が高いことが想定され、将来的な臨床応用や細胞移植治療を行う上で大きなメリットとなる。今後、ciBAsを用いて褐色脂肪細胞がヒトの体内で発生する仕組みの解明や、体内の褐色脂肪細胞を増加させる機能性食品や薬の評価、個別化医療などに利用されることなどが期待される。
 研究成果のポイント
 ○数種類の低分子化合物を添加した無血清誘導培地を使用し、ヒト皮膚線維芽細胞から、褐色脂肪細胞ciBAs (chemical compound-induced brown adipocytes)を誘導する方法を開発した。
 ○ciBAs は、褐色脂肪細胞に特徴的な遺伝子発現を示し、ミトコンドリアによる酸素消費量が増加していることから、新規なヒト褐色脂肪細胞モデルとして利用可能である。
 ○ciBAsは、無血清培地を用いて簡便かつ短期間に誘導されることから、褐色化を促進する機能性食品の成分や既存薬の探索を目的とした創薬研究に最適であると考えられる。
 ○ciBAsは、個別化医療の他、将来的な細胞移植治療への臨床応用が期待される
 研究概要
 研究の背景
 食事や運動などの生活習慣において、エネルギーの摂取が消費を超えると肥満の原因となり、糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞などの重篤な疾患を発症する大きな要因となる。病的な肥満だけでなく、加齢に伴う基礎代謝の減少による軽度の肥満であっても、長期的にはこれらの代謝疾患のリスクと関連することが指摘されている。脂肪細胞には大きく分けて2種類あり、通常の脂肪を蓄える白色脂肪細胞と、脂肪を消費して熱に変換する褐色脂肪細胞がある。我々ヒトでは個人差が大きいですが、褐色脂肪細胞は首回りや胸回りの脂肪内に散在しており、活発な糖や脂肪の代謝を行っている。これらの褐色脂肪細胞は、褐色化(Browning)という現象により白色脂肪細胞から性質が変化したベージュ細胞に近いと考えられている。褐色化によるベージュ細胞の増加は、長期的な寒冷刺激や運動などによって起こると報告されているが、その発生メカニズムの詳細はまだ明らかとなっていない。
 -- --ダイレクトリプログラミング
 分化した細胞に特定の遺伝子を人為的に発現させることによって、目的の細胞を直接誘導する手法をダイレクトリプログラミングと言う。しかし、遺伝子の導入に基づいた方法では、細胞の機能や遺伝情報を損なう危険性がある。また、多能性幹細胞などから特定の細胞を分化させても、未分化の幹細胞が残留することによる腫瘍化のリスクが存在する。
 そこで我々はこれまで、細胞のシグナル伝達経路や転写因子を制御する低分子化合物を複数用いて、ヒト線維芽細胞から神経細胞や褐色脂肪細胞を誘導することに成功した。このように、遺伝子の導入を行わず低分子化合物のみで直接誘導することによって、安全性が高い細胞を短期間で誘導することができる。以前の研究から、5種類の低分子化合物を用いて低分子化合物誘導性褐色脂肪細胞ciBAs の誘導に成功したものの、創薬研究や臨床への応用には、誘導培地中の血清の使用が障害となっていた。
 本研究では、血清を使用しない無血清培地と、これに最適化された化合物カクテルを新たに同定し、簡便かつ短期間にciBAs を誘導する方法を開発した。
 研究の内容
 本研究では、まず褐色脂肪細胞の分化に重要なBMP7(骨形成タンパク質)というサイトカインを新たに使用すると同時に、前回ciBAs の誘導に使用した5種類の低分子化合物の組み合わせについて検討した。その結果、この5種類の中で骨形成タンパク質の機能を阻害する2種類の化合物を除くと、BMP7 はciBAs の誘導効率には影響を与えないものの、褐色脂肪細胞のマーカー遺伝子であるUcp1( Uncoupling protein 1 ) の発現を活性化させることがわかった。次に、無血清培地において、血清の代わりに特定の脂肪酸のみが結合したアルブミンを使用することで、脂肪酸の供給と細胞の安定性の向上を図った。この時、上記のBMP7 を使用した新しい化合物の組み合わせが、無血清培地下での誘導においても有効であることがわかった。また、血清の存在下ではciBAs の誘導に、TGF.シグナル伝達経路の阻害剤が必要であったが、無血清培地ではこの経路が活性化しておらず、この阻害剤を使用しない方がより効率よく誘導されることが判明した。
 このように最適化された化合物カクテル( Rosiglitazone 、Forskolin 、BMP7)を添加した無血清培地を用いて線維芽細胞を培養することで、2.4週間以内にciBAs が誘導される。また、このciBAs は、ヒトの褐色脂肪細胞(ベージュ細胞)に特徴的な遺伝子発現を示し、アドレナリン受容体作動薬によるUcp1 遺伝子の発現上昇が検出された。また、ミトコンドリアによる酸素消費量が増加していることから、細胞内の脂肪酸代謝が活性化していることを証明した。
 今後の展開
 近年、世界中で肥満者の増加が社会問題となっており、日本においても肥満が引き起こす糖尿病や循環器疾患が医療費高騰の大きな要因の一つとなってる。本研究では、ヒト皮膚線維芽細胞から数種類の低分子化合物と無血清培地を用いて、簡便かつ短期間に褐色脂肪細胞ciBAs を誘導する方法を開発した。この誘導方法は、遺伝子の導入を行う必要がなく、また動物由来成分や未知の成分を含む血清を使用しないため、基礎研究だけでなく創薬研究にとって必須の誘導方法となる。採取が難しいヒト褐色脂肪細胞(ベージュ細胞)の代わりに、ciBAs を新規な褐色脂肪細胞モデルとして用いることで、褐色化を促進する機能性食品の成分や既存薬の探索といった創薬研究に最適であると期待されるす。
 そして、これまで具体的な方法がなかった、日々の生活から機能性食品などの摂取により、体内でベージュ細胞を増加させることができれば、安全で画期的な肥満や糖尿病の予防になると期待される。また、ciBAs を用いて褐色脂肪細胞がヒトの体
内で発生する仕組みの解明に資することが期待されます。他にも我々の開発した誘導法により、複数の人から採取した線維芽細胞をciBAs に誘導し食品成分や薬の効果を解析することで、個々の人に合わせたより効果的な食品成分や薬の選択、また副作用の有無を解析するといった個別化医療への応用にも道が開けると期待される。無血清培地と低分子化合物で誘導されるciBAsは安全性が高いことが想定され、将来の臨床応用や細胞移植治療を行う上でも重要であると考えられる。

 今日の天気は晴れ。風も穏やか。明日は雨の予報なので、畑作業は雨の準備。
 畑までの道沿い、お庭に”ジューンベリー”の花が咲いていた。葉が完全に展葉する前に白い花が咲く。名(ジューンベリー)の如くに、6月(june:ジューン)には実が熟す。因みに、”ジューンベリー”の果実は酸味が弱く味に締りが感じられないので、酸味を補ってジャムなどにした方が味的には美味しい、と言う。
 ”ジューンベリー(June berry)”と呼んでいるのは、ザイフリボク属の同じ様な果実が付く種の総称であるが、”アメリカザイフリボク”とも呼ばれる。”ザイフリボク”との違いは、”ザイフリボク”は雄しべが20個・雌しべの花柱が5個で下部が合着している、”アメリカザイフリボク(ジューンベリー)”は雄しべが18個、1つの花柱の先が5分裂している。
 ジューンベリー
 別名:アメリカザイフリボク
 英名:Juneberry
 学名:Amelanchier canadensis
 バラ科ザイフリボク属
 落葉性広葉樹、低~中木
 原産地:北アメリカ北東部
 開花時期:4月~5月
 花は5弁で白色、果実は6月頃に熟す
 果実はスグリほどの小さな実で、熟すと赤から濃い紫へと色付く