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キラル結晶の右手系・左手系で反転する放射状スピン構造を発見

2020-04-20 | 科学・技術
 東京大学大学院工学系研究科の坂野昌人助教、理化学研究所創発物性科学研究センターの平山元昭研究員、東京工業大学科学技術創成研究院の笹川崇男准教授、東京大学物性研究所の近藤猛准教授らの研究グループは、東京工業大学理学院の村上修一教授、産業技術総合研究所の三宅隆研究チーム長、広島大学放射光科学研究センターの奥田太一教授らの研究グループ、高エネルギー加速器研究機構の組頭広志教授らの研究グループ、東京大学大学院工学系研究科の岩佐義宏教授らおよび石坂香子教授らの研究グループと共同で、キラルな結晶構造に由来して発現する固体内スピンの特性を、テルル単体を用いた実験から明らかにした(公開日:2020年03月04日)。本研究成果は、米国物理学会学術誌「Physical Review Letters」に米国東部時間3月10日に掲載、特に重要な論文としてEditors’ Suggestionに選出された。
 ポイント
 〇キラルな結晶構造が発現するスピン特性を、テルル単体に着目した実験から解明した。
 〇鏡映しの関係にある右手系・左手系結晶では、放射状構造を持つスピンの向きが逆転することを見出した。
 〇電流印加や光照射でスピン流を原理的に生成可能なことから、スピントロニクスの応用に繋がることが期待される。
 キラルな結晶構造を持ち、かつ強いスピン軌道相互作用を伴う物質では、電子の磁石としての性質であるスピンに由来した磁気的性質が、非磁性材料にも関わらず発現し得ることが、20世紀の半ばから知られていた。ところが、その物性を司るスピン偏極した電子構造の直接的な観察は、これまで成功していない。本研究では、最も単純なキラル結晶構造を有し、かつ強いスピン軌道相互作用を合わせ持つテルル単体に着目し、スピン分解・角度分解光電子分光実験を行った。その結果、キラルな結晶構造を持つ物質に対して初めて、スピン偏極した電子構造の観察に成功した。さらに、キラルな結晶の特徴として、スピン構造が放射状となること、また、それらのスピンの向きが“右手系結晶”と“左手系結晶”で反転することを実験的に示した。今回の結果は、強いスピン軌道相互作用を有するキラルな結晶が、有望なスピントロニクス材料であることを示しており、今後、電子・スピン変換デバイスの研究開発への進展が期待される。
 研究の背景
 自然界には、右手と左手、あるいは右ネジと左ネジのように、鏡に映した姿がもとの姿と重ならないものがあり、これらの性質をキラルであると言う。2つの非等価なキラルな結晶、いわゆる右手系と左手系の結晶は、自然界において、生物学的、化学的、物理的にそれぞれ異なる反応を示す。また、キラルな結晶構造の内部では、電気と磁気がお互いに関係しあうことが知られている。一方、固体内電子の電気的・磁気的関係を結びつけるためには、スピン軌道相互作用が必要であり、原子番号の大きな重い元素を持つ化合物で特にその作用が強くなる。
 キラルな結晶構造を持ち、かつ強いスピン軌道相互作用を合わせ持つ物質は、非磁性であっても、スピン流などの磁気的性質を引き出し得ることから、スピントロニクス分野で特に注目されている。しかしながら、その特異な電気磁気特性の起源となるスピン偏極した電子構造を直接的に観測した例がこれまでになく、キラル結晶内の電子とスピンの結合状態は未解明であった。
 研究内容と成果
 本研究では、キラルな結晶構造を有するテルル単体を研究対象とし、スピン分解・角度分解光電子分光を用いて、スピン構造の直接観測を行った。重元素であるテルル原子は強いスピン軌道相互作用を有しているため、電子とスピンが強く結合した状態が期待される。本研究では、熱濃硫酸で表面処理した際にできる腐食孔の形によって右手系結晶と左手系結晶を判別し、それぞれの試料に対して、詳細な電子構造およびそれに付随するスピン偏極構造を観察した。
 左手系結晶に対してスピン分解・角度分解光電子分光実験を行い、スピン構造を調べた。その結果、電子のz方向の運動量が、z方向のスピンのみと結合していることがわかった。通常、スピン軌道相互作用は、電子の運動量と垂直な向きにスピンを結合させたがる性質がある。しかし、今回の結果は、それに反して、運動量と平行方向にスピンが結合していることを示している。つまり、スピンが運動量空間において放射状に広がる特異な振る舞いを同定したことになる。さらに、右手系結晶の測定も行うことで、左手系結晶とはスピン構造が反対向きになることを見出した。スピン構造に見られるこれらの特異性は、キラルな結晶構造に特有の電子状態に由来するものであるといえ、第一原理電子構造計算によって再現されることを確認している。
 今後の展望
 今回、最も単純なキラル結晶であるテルル単体において、キラルな結晶構造特有のスピン状態を実験的に解明した。本結果を起点として、さまざまなキラル結晶におけるスピン状態の解明が進むものと考えられる。また、スピンが電子の運動量と平行に向き放射状となる特異なスピン構造からは、非従来型のスピントロニクス機能が創発できる可能性があるため、キラル構造を有する物質をデバイス応用させる発展研究が今後期待される。
 ◆用語解説
 〇キラルな結晶構造
 右手と左手の関係のように、一方を鏡映しにしたときには他方と重なるが、平行移動では互いに重ならない2つの非等価な結晶構造を持つもの。
 〇スピン分解・角度分解光電子分光
 物質に光を照射すると、電子(光電子)が試料から真空中へ放出される。その光電子の運動エネルギー、および脱出角度を調べることによって、物質中の電子のエネルギーと運動量を直接観測できる実験手法である。さらに、スピン検出器を用いて光電子のスピンを測定することにより、物質中の電子スピンの向きを調べることもできる。物質中の電子が有する運動量、エネルギーおよびスピンが分かると、(スピン状態までを含めた)電子構造を完全に理解することができる。
 〇スピントロニクス
 電子の電荷を基にした現代社会を支えるエレクトロニクスを超えて、電荷だけでなく磁石的性質であるスピンをも利用して応用する分野のこと。
 〇スピン軌道相互作用
 電子自身が持つ磁気的性質(スピン角運動量)と電子の軌道によって発生する磁気的性質(軌道角運動量)との相互作用のこと。
 〇テルル
 テルル(英:tellurium)は原子番号52の元素。元素記号はTe。原子量は127.60。第16族元素の一つ。
 〇第一原理電子構造計算
 量子力学の基礎的な方程式を用いて、物質を構成する原子の種類と位置の情報から電子構造を計算する手法。結晶構造さえ決まれば非経験的に電子構造を得ることができるため、性質の不明な新物質に対しても威力を発揮する。

 朝から小雨。予報では夜まで、となっている。
 散歩は雨の中。塀越しに見える”ナシ”に花が咲きだしている。
 梨の種類は、大別して3種あり、和なし(日本なし、Pyrus pyrifolia var. culta )、中国なし (P. bretschneideri) 、洋なし(西洋なし、P. communis )である。これらの実は、何れも食用として栽培される。日本語で”ナシ(梨)”と言えば通常、このうちの”和なし”を指す。雨に打たれた”ナシ”も”和なし”。
 ”ナシ”の語源には諸説がある。
  中酸(なす):江戸時代の学者新井白石は中心部ほど酸味が強いことから、中酸が転じたと述べている。
  風なし:風があると実らないから
  中白(なかしろ)・色なし:果肉が白いから
  梨子(らいし):漢語の梨子の転じたもの
 ”ナシ”という名前は「無し」に通じることからこれを忌ん(忌み言葉)で、家の庭に植えることを避けたり、「ありのみ(有りの実)」という反対の意味を持たせた呼称が用いられることがある。しかし、「無し」という意味を用いて、盗難に遭わぬよう家の建材にナシを用いて「何も無し」、鬼門の方角にナシを植えることで「鬼門無し」などと、縁起の良い利用法もある。
 ナシ:梨 (なし)
  その果実もナシ
 別名:有の実(ありのみ)
 ”ナシ”の種類には、皮が黄緑色の青梨:二十世紀など、皮が褐色の赤梨:幸水・豊水などのの2種類に分けられる
 学名:Pyrus pyrifolia var. culta
 バラ科ナシ属
 原産地:中国を原産とし中国や朝鮮半島、日本の中部地方以南に自生する野生種ヤマナシ(ニホンヤマナシ、P. pyrifolia var. pyrifolia )を基本種とする栽培品種群のこと。
 日本でナシが食べられ始めたのは弥生時代頃とされ、登呂遺跡などから多数食用にされたとされる根拠の種子などが見つかっている。文献に初めて登場するのは「日本書紀」であり、持統天皇の693年の詔において五穀とともに「桑、苧、梨、栗、蕪菁」の栽培を奨励する記述がある。
 開花時期:4月頃、桜から1週間ほど遅れて開花する
 白い5弁花