(承前)
札幌国際芸術祭のゲストハウス×ギャラリープロジェクト Sapporo ARTrip「アートは旅の入り口」をめぐる4日連載の最終回。
めざましサンド店(中央区南3東4)で、相川みつぐさん「季節は巡る」。
飲食店の中の壁に直接ペインティングしている。
樹木や川が、単純な図形として処理されて描かれているのがユニーク。
テーブルに隠れて、絵の下のほうが見づらいのがちょっとざんねん。
お店の人に
「芸術祭が終わったら塗りつぶすんですか」
と尋ねたら、しばらくこのままにしておく予定とのことだった。
11月半ば過ぎに店の前を通りがかったらまだこの絵が見えたので、今も鑑賞可能だと思われる。
さて、第1回でもチラッと書きましたが、この Guest House × Gallery Project はどうやら、関係者からも一般の鑑賞者からも、札幌国際芸術祭の本筋のプログラムではないと認識されていたフシがあるようだ。
最終日の夜、芸術祭の公式ツイターアカウントでさえ、次のようにツイートしていた。
筆者はこの日、仕事で出社していた。
翌朝は早出だったにもかかわらず、芸術祭が終わるのが名残惜しくて、サッポロッジ(中央区南5東1)まで行って、入り口のバーカウンターでビールをのんでいた。
ここには、東京から帯広を経て、十勝管内浦幌町に拠点を移した白濱雅也さんの「熊の神」が展示されていた。
もともとこのスペースには、オーナーの集めた熊の木彫りが何個も置かれている。
なかでも1本の丸太から木登りする親子をほりだした大作は、オーナー自慢の一品のようだ。
(網走駅のプラットフォームに似た作品がある)
木をふんだんに用いた内装とあいまって、非常に「北海道色」みたいなものを濃く感じられる空間になっている。「北海道色」というより、山小屋ふうといったほうがいいかもしれない。
カウンターの反対側の壁に、白濱さんによる熊の頭部が並んでいる。
彩色もさまざまで、民芸的なものとは異なるイメージだ。
Guest House × Gallery Project のサイトには、おそらく白濱さんによるものと思われるステイトメントが載っていた。
この文章があると無いとでは大違いなのである。
今回の芸術祭で、市資料館の熊の木彫り展は、一般には好評だったようだが、アイヌ民族とのかかわりなど歴史的な視点が欠落していたのはたいへん残念だった。
木彫りコレクターの努力には敬意を表したいが、単なる造形的なすごさに話を終わらせてしまった感のあるキュレーティングについては、疑問が残った。
ステイトメントの全文は次の通り。
この展示やステイトメントからは、歴史や自責の中身までは読み取れないが、それは今後の課題なのだろう。
ゲストハウスの話は以上で終わりで、けっきょく、UNTAPPED HOSTEL(北区北18西4)とWAYA(豊平区豊平2の4)には時間切れで足を運ぶことができなかった。
大友さんの挑戦状?(※後註「ぜんぶ回った記者さんがいたらビールをおごります」というアレ) に応えることができなかったのは残念だ。
ただ、このプロジェクトを通して
「アートに興味ない人が来る場所や、アートの存在を予期しない人にとって、展示はどうあるべきか」
という、次回への大きな課題は残ったように思う。
実は、500m美術館のスキーの展示は、そのあたりをうまいことクリアしていたともいえそうだ。
ここまで、長文におつきあいいただき、ありがとうございました。
札幌国際芸術祭のゲストハウス×ギャラリープロジェクト Sapporo ARTrip「アートは旅の入り口」をめぐる4日連載の最終回。
めざましサンド店(中央区南3東4)で、相川みつぐさん「季節は巡る」。
飲食店の中の壁に直接ペインティングしている。
樹木や川が、単純な図形として処理されて描かれているのがユニーク。
テーブルに隠れて、絵の下のほうが見づらいのがちょっとざんねん。
お店の人に
「芸術祭が終わったら塗りつぶすんですか」
と尋ねたら、しばらくこのままにしておく予定とのことだった。
11月半ば過ぎに店の前を通りがかったらまだこの絵が見えたので、今も鑑賞可能だと思われる。
さて、第1回でもチラッと書きましたが、この Guest House × Gallery Project はどうやら、関係者からも一般の鑑賞者からも、札幌国際芸術祭の本筋のプログラムではないと認識されていたフシがあるようだ。
最終日の夜、芸術祭の公式ツイターアカウントでさえ、次のようにツイートしていた。
少しずつ色んな会場が終了していっていますが、まだ間に合うところもありますよ。HUGは19時半まで、金市舘、北専プラザ、AGSは20時まで、りんごは21時まで、500m美術館は22時までご覧いただけます。24時に藻岩山の明かりが消えるまで、SIAF2017をお楽しみください。
— 札幌国際芸術祭 (@SIAF_info) 2017年10月1日 - 18:48
筆者はこの日、仕事で出社していた。
翌朝は早出だったにもかかわらず、芸術祭が終わるのが名残惜しくて、サッポロッジ(中央区南5東1)まで行って、入り口のバーカウンターでビールをのんでいた。
ここには、東京から帯広を経て、十勝管内浦幌町に拠点を移した白濱雅也さんの「熊の神」が展示されていた。
もともとこのスペースには、オーナーの集めた熊の木彫りが何個も置かれている。
なかでも1本の丸太から木登りする親子をほりだした大作は、オーナー自慢の一品のようだ。
(網走駅のプラットフォームに似た作品がある)
木をふんだんに用いた内装とあいまって、非常に「北海道色」みたいなものを濃く感じられる空間になっている。「北海道色」というより、山小屋ふうといったほうがいいかもしれない。
カウンターの反対側の壁に、白濱さんによる熊の頭部が並んでいる。
彩色もさまざまで、民芸的なものとは異なるイメージだ。
Guest House × Gallery Project のサイトには、おそらく白濱さんによるものと思われるステイトメントが載っていた。
この文章があると無いとでは大違いなのである。
今回の芸術祭で、市資料館の熊の木彫り展は、一般には好評だったようだが、アイヌ民族とのかかわりなど歴史的な視点が欠落していたのはたいへん残念だった。
木彫りコレクターの努力には敬意を表したいが、単なる造形的なすごさに話を終わらせてしまった感のあるキュレーティングについては、疑問が残った。
ステイトメントの全文は次の通り。
北海道といえばこれが思い出されるほど、ポピュラーな木彫りの熊。偶像をほとんど彫らなかったアイヌの人々が「なぜこれを彫らねばならなかったか」という、アイヌと日本人を巡る歴史はほとんど知られていない。そこに埋もれたままの自責や呵責を抱きつつ、消費の波の中で通俗化し磨耗した木彫りの熊や面を精霊的神像としてリノベーションを試みる。
この展示やステイトメントからは、歴史や自責の中身までは読み取れないが、それは今後の課題なのだろう。
ゲストハウスの話は以上で終わりで、けっきょく、UNTAPPED HOSTEL(北区北18西4)とWAYA(豊平区豊平2の4)には時間切れで足を運ぶことができなかった。
大友さんの挑戦状?(※後註「ぜんぶ回った記者さんがいたらビールをおごります」というアレ) に応えることができなかったのは残念だ。
ただ、このプロジェクトを通して
「アートに興味ない人が来る場所や、アートの存在を予期しない人にとって、展示はどうあるべきか」
という、次回への大きな課題は残ったように思う。
実は、500m美術館のスキーの展示は、そのあたりをうまいことクリアしていたともいえそうだ。
ここまで、長文におつきあいいただき、ありがとうございました。
このゲストハウスシリーズの記事は興味深く読んでいました。
私は結局、一か所も行かなかったのですが、言い訳がましく理由を書くと、ゲストハウスだけにフルタイムでやっているかどうかわからなかったということでしょうか。
かつ、場所が微妙に面倒なところにあったせいもあります。
こうやって、後から少しだけでも見られるというのが、ありがたいことです。
ある関係者から「午後とか、普通の時間帯でいいんです」と言われ、あまり深く気にせずまわることにしました。
もっとも、サッポロッジのように夕方から開く会場もありましたが…(白濱さんは、開店前でも見せてくれるハズ、と言ってました)。
公式サイトなどには開いてる時間が書いてあると思います。
カフェと同じく、飲み物代がいちいち必要な会場も多かったですが、そこはSHさん的にはむしろオーケーかと(笑)。