![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/0b/4d67675482152eb4e17213869ea46960.jpg)
道立近代美術館で、日本画メインの展覧会が二つ開かれていて、とても対照的なのがおもしろかったです。
右側の展示室で、STVが主催してガンガン宣伝している展覧会は、美術全集や画集に登場するような大家の名品が並んでいます。
半面、おもに所蔵品展に用いられている左側の部屋は、道立近代美術館の単独主催で、戦後の革新的な日本画を展示しています。
つまり、オーソドックスな、いかにも一般に流布しているイメージ通りの日本画の展覧会を、反対側の部屋で見事にちゃぶ台返しをしているわけです。
それにしても、国立美術館などと遜色ない、そうそうたる顔ぶれです。
竹内栖鳳、横山大観、菱田春草、今村紫紅、村上華岳、土田麦僊、川合玉堂、結城素明、橋本関雪、川端龍子、安田靫彦、速水御舟、小林古径、鏑木清方、福田平八郎、上村松園、伊東深水…。
日本画の歴史に太文字で記されているような画家たちの、しかも素描などではない、優品ばかりです。
筆者が好きな川合玉堂は「夕月夜」(1913)と「鵜飼」(1931)の2点。
前者は墨画淡彩で、シンプルな中にも深い余韻を漂わせます。
菱田春草は「紫陽花」(1902)。
さすが初期院展を支えた俊才らしい、完璧な構図です。
竹内栖鳳「雨霽」(1928)。
日本資本主義の父ともいわれる実業家渋沢栄一が依頼しながら、その後は幻の大作といわれていた六曲一双の屏風。
セキレイやトビ、木の枝を、輪郭線を排しながらも実在感をもって描き、空間に充実感があります。
山本春挙「瑞祥」(1931)
不老不死の薬があるという蓬莱山の伝説を描いた二曲一双(213.7×224.8センチ)の大作。
人物の列は左の下側から右へ向けて続いており、皇帝の一行とおぼしき馬車もみられます。左側の石の門には「不老文」と刻まれ、右下の文には「満寿洞」と書かれた扁額がかかっています。ここをくぐった道は山中へと続いているようです。
一方、空気遠近法でかすむ向こう側の地上には、人物の姿はまったくありません。峨々たる山は、ロジャー・ディーンの描く、ロックバンド「YES」のアルバムジャケットのようです。
そして全体にわたって緑青の点が、細かく打たれて、画面に輝かしさを与えています(澁谷俊彦さんのピンによる作品を思い出しました)。
また、日中間に戦争が始まっていた時代に、悠々とこういう画題の大作を描いていたことは、大したものだと思いました。
上村松園「娘深雪」(1914)
看板やフライヤーなどに採用されている作品。
上村松園の不思議なのは、代表作「序の舞」なんかもそうなんですが、止まっているのに、動きが感じられるんですよね。
漫画のように、動きを表す線が補われているわけでもない。ドラクロワの「革命の女神」のように動作の途中を描いているわけでもありません。なのに、動いているように見える。
どうしてなんでしょうね。
なお、展覧会の後半は北大路魯山人の陶器です。
この人は非常に器用な人で、織部、古九谷、赤絵、信楽、などなど、なんでも作れちゃうんですね。
その半面、この人ならではという特色が見えづらいというふうにも感じられます。
ただ、意地悪な見方をすると、この美術館のコレクターの好みや個性がまったく見えてこない展覧会という言い方はできそうです。
そして「名品を集めた」ということ以外に、キュレーティング(キュレーション)の特徴もない展覧会なのです。
図録(1300円)は簡易版で、日本画は39点中14点の図版しか掲載されていません。
2023年9月16日(土)~11月12日(日)午前9時半~午後5時
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
一般1700(1500)円、高大生1000(800)円、中学生700(500)円、小学生以下無料(要保護者同伴)
かっこ内は10人以上の団体、リピーター割引など。65歳以上は1500円
□公式サイト https://www.stv.jp/event/adachi/index.html
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」で降車、すぐ(小樽、手稲方面行きは、都市間高速バスを含め全便が停車します)
・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分
・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分
・ジェイアール北海道バス「桑11 桑園円山線」(JR桑園駅―円山公園駅―啓明ターミナル)で「大通西15丁目」降車、約400メートル、徒歩5分
・ジェイアール北海道バス「54 北5条線」(JR札幌駅―西28丁目駅)「58 北5条線」(JR札幌駅―琴似営業所)で「北5条西17丁目」降車、約540メートル、徒歩7分
・ジェイアール北海道バス「50 啓明線」「51 啓明線」「53 啓明線」(JR札幌駅―啓明ターミナル)で「南3条西16丁目」降車、約830メートル、徒歩11分
※指定駐車場は北1西15の「ビッグシャイン」です。徒歩3分
右側の展示室で、STVが主催してガンガン宣伝している展覧会は、美術全集や画集に登場するような大家の名品が並んでいます。
半面、おもに所蔵品展に用いられている左側の部屋は、道立近代美術館の単独主催で、戦後の革新的な日本画を展示しています。
つまり、オーソドックスな、いかにも一般に流布しているイメージ通りの日本画の展覧会を、反対側の部屋で見事にちゃぶ台返しをしているわけです。
それにしても、国立美術館などと遜色ない、そうそうたる顔ぶれです。
竹内栖鳳、横山大観、菱田春草、今村紫紅、村上華岳、土田麦僊、川合玉堂、結城素明、橋本関雪、川端龍子、安田靫彦、速水御舟、小林古径、鏑木清方、福田平八郎、上村松園、伊東深水…。
日本画の歴史に太文字で記されているような画家たちの、しかも素描などではない、優品ばかりです。
筆者が好きな川合玉堂は「夕月夜」(1913)と「鵜飼」(1931)の2点。
前者は墨画淡彩で、シンプルな中にも深い余韻を漂わせます。
菱田春草は「紫陽花」(1902)。
さすが初期院展を支えた俊才らしい、完璧な構図です。
竹内栖鳳「雨霽」(1928)。
日本資本主義の父ともいわれる実業家渋沢栄一が依頼しながら、その後は幻の大作といわれていた六曲一双の屏風。
セキレイやトビ、木の枝を、輪郭線を排しながらも実在感をもって描き、空間に充実感があります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/8a/2ebdef7168d422885fa2bf2151f7fa45.jpg)
山本春挙「瑞祥」(1931)
不老不死の薬があるという蓬莱山の伝説を描いた二曲一双(213.7×224.8センチ)の大作。
人物の列は左の下側から右へ向けて続いており、皇帝の一行とおぼしき馬車もみられます。左側の石の門には「不老文」と刻まれ、右下の文には「満寿洞」と書かれた扁額がかかっています。ここをくぐった道は山中へと続いているようです。
一方、空気遠近法でかすむ向こう側の地上には、人物の姿はまったくありません。峨々たる山は、ロジャー・ディーンの描く、ロックバンド「YES」のアルバムジャケットのようです。
そして全体にわたって緑青の点が、細かく打たれて、画面に輝かしさを与えています(澁谷俊彦さんのピンによる作品を思い出しました)。
また、日中間に戦争が始まっていた時代に、悠々とこういう画題の大作を描いていたことは、大したものだと思いました。
上村松園「娘深雪」(1914)
看板やフライヤーなどに採用されている作品。
上村松園の不思議なのは、代表作「序の舞」なんかもそうなんですが、止まっているのに、動きが感じられるんですよね。
漫画のように、動きを表す線が補われているわけでもない。ドラクロワの「革命の女神」のように動作の途中を描いているわけでもありません。なのに、動いているように見える。
どうしてなんでしょうね。
なお、展覧会の後半は北大路魯山人の陶器です。
この人は非常に器用な人で、織部、古九谷、赤絵、信楽、などなど、なんでも作れちゃうんですね。
その半面、この人ならではという特色が見えづらいというふうにも感じられます。
ただ、意地悪な見方をすると、この美術館のコレクターの好みや個性がまったく見えてこない展覧会という言い方はできそうです。
そして「名品を集めた」ということ以外に、キュレーティング(キュレーション)の特徴もない展覧会なのです。
図録(1300円)は簡易版で、日本画は39点中14点の図版しか掲載されていません。
2023年9月16日(土)~11月12日(日)午前9時半~午後5時
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
一般1700(1500)円、高大生1000(800)円、中学生700(500)円、小学生以下無料(要保護者同伴)
かっこ内は10人以上の団体、リピーター割引など。65歳以上は1500円
□公式サイト https://www.stv.jp/event/adachi/index.html
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」で降車、すぐ(小樽、手稲方面行きは、都市間高速バスを含め全便が停車します)
・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分
・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分
・ジェイアール北海道バス「桑11 桑園円山線」(JR桑園駅―円山公園駅―啓明ターミナル)で「大通西15丁目」降車、約400メートル、徒歩5分
・ジェイアール北海道バス「54 北5条線」(JR札幌駅―西28丁目駅)「58 北5条線」(JR札幌駅―琴似営業所)で「北5条西17丁目」降車、約540メートル、徒歩7分
・ジェイアール北海道バス「50 啓明線」「51 啓明線」「53 啓明線」(JR札幌駅―啓明ターミナル)で「南3条西16丁目」降車、約830メートル、徒歩11分
※指定駐車場は北1西15の「ビッグシャイン」です。徒歩3分
旅先で美術館に寄る、というのは、楽しいですね。
もっとも私は、ぜんぜん時間がありませんが…
山本春挙「瑞祥」はロジャー・ディーンみがありましたね(←「○○み」って、言ってみたかっただけです)。
「一通り名品がある」という意味では文句のない展覧会でしたね。
左側展示スペースでは豊橋市美術博物館の作品が目立ちました。
今回は札幌に来てくれたわけですが、地方の美術館に行って、所蔵展を見る楽しさを思い出しました。
またどこか、旅に出たいものです。