(長文です)
主体美術は、1964年に自由美術から分かれて発足しており、団体公募展のなかでは歴史の新しい部類に入ります。
創立会員のひとりに、道内画壇に重きをなした故小谷博貞さんが名を連ねており、道内関係者も多いです。部門は絵画のみで、いまも東京都美術館を会場としています。
最近では、若者の出品料を無料にするとうたって話題を呼びました。
北海道展は1994年スタートし、2-3年おきに開かれています。道内在住者のほか、ゆかりのメンバーも出品します。
他の公募展の道支部展と異なる点として、展覧会とあわせて関係者の個展なども同時多発的に開くことです。ことしも、会員の個展が前後につづき、ちょっとした「主体ウイーク」のようになっています。
ことしは、札幌時計台ギャラリーの2階3室すべてを会場としています。
A室で気になったのは、渡辺良一さん(網走管内美幌町)の「地」です。
横長の、三連画的な構成の画面で、左右の幅には、横に5列、縦13列の横長の長方形が規則的に正しく貼りつけられています(左右とも、ところどころ欠落があるため、いずれも108個ずつになっています)。中央部には、茶色の不定形の板が貼りつけられ、ところどころ赤い線で区分されています。筆者の目には、どこかの土地と国境を模した地図のようにみえてしまいます。
A室で気になったのは、渡辺良一さん(網走管内美幌町)の「地」です。
横長の、三連画的な構成の画面で、左右の幅には、横に5列、縦13列の横長の長方形が規則的に正しく貼りつけられています(左右とも、ところどころ欠落があるため、いずれも108個ずつになっています)。中央部には、茶色の不定形の板が貼りつけられ、ところどころ赤い線で区分されています。筆者の目には、どこかの土地と国境を模した地図のようにみえてしまいます。
これが、たとえば「ファルージャ」とか「クルディスタン」といった題がついていれば、政治的な含意があることが一目瞭然です。漠然とした題と画面であるがゆえに、見る者に考えさせる作品になっているといえるかもしれません。
また、続橋守さんの3点を見て、ちょっとびっくり。
3年前の個展にくらべると、かなり抽象化が進んでいました。
齋藤典久さんも道外勢。緑を帯びた青が画面を広く覆っています。
黒木孝子さん、永井美智子さんは安定した抽象画を出品しています。
香西富士夫さんも人間をデフォルメして戯画化した、いつもの独特の画風。
釧路の門屋武史さんは、機械と、神話の人物を同居させたような、ふしぎな世界をつくっています。
B室にはいろいろなタイプの作品が集まりました。
なんといっても目を引くのは、かつて札幌で活躍していた橋本礼奈さん。屏風型の作品です。モティーフになっているのは4人の裸の乳幼児。赤い毛布の上で立ったり寝転がったりしています。
わざわざ毛布のほうを題名にしているのがおもしろい。
「ミトラマ」と題した個展でおなじみの水戸麻記子さんの作品もでかいです。夏の夕べ、ゆかた姿で室内に寝そべる女性が構図の中心になっていますが、ちゃぶ台の上には「鬼太郎のおやじ」のように茶碗につかっているこびとがいるし、奥でファミコンをやってる男性が見ているテレビはチャンネルのついた1960年代のものだし(接続できるのか!?)、縁側にはシーサーをはじめ得体の知れないものがひしめいているし、まさにミトラマワールド全開。
従来と異なるのは、オレンジと緑系で画面が統一されていることで、これも、現実離れした性格を画面にあたえています。
森昌子さんの作品は初めて拝見しましたが、2点とも横位置の抽象画です。
「さし向かいの孤独」は、2本の太い帯が画面を横断しており、現実の人間社会についていろいろ考えさせられました。
寒色を多用したシャープな画風を展開する前川アキさんは、これまで縦横に画面を走り回っていた水色の太い線がやや減っています。
C室では、巨大な画面にパウンドケーキを思わせる緑の塊をどーんと描いた十河幸喜さんの大作に驚かされます。
船川照枝さんの絵がすっかり抽象化していました。
もともと、モティーフが「こわれる」ことに抵抗感がない人でしたが…(うまく言えなくてすいません)。
非常に多くの色がちりばめられています。
全体的に、抽象画や写実的な絵など、かなりバラエティに富んだ展覧会でした。
ベテラン野本醇さんの姿がないのが気になります。
出品作は、次の通り。
浅野 修 虚と実の大地 120×120センチ
畑 110×227センチ
石崎哲男 須弥山 194×224センチ
大場律子 流木1 F100
流木2 F100
門屋武史 記憶の扉 F130
工藤悦子 悠久の華 S120
黒木孝子 連なる M150
香西富士夫 会話=ふ・ん F100
会話=へ・ん F100
近藤健一 風景の中の形 F130
齋藤典久 kilronan F100
竹島俊之 桟橋のある群像A F100
桟橋のある群像B F100
続橋 守 黒の構成 93×132センチ
遺構 F30
足尾 M30
十河幸喜 Me-Shi-A-Ga-Re 182×237センチ(4枚組み風景)
永井美智子 シャンテ 162×145センチ
長嶋完治 砂の柩1 F100
砂の柩2 F100
橋本礼奈 薔薇色の毛布 182×260センチ
東原こずえ 刻 S100
波紋 S100
藤代康子 廃船I F100
廃船II S100
船川照枝 古いトロッコ F100
廃車2台(トロッコ) F100
前川アキ 氷原 S100
氷原 S100
水戸麻記子 草々 162×224センチ
水戸部千鶴 レクイエム M60
トルソ F50
小さなトルソ 100×50センチ
森 昌子 浪漫 P100
さし向かいの孤独 P100
森 幸子 フーガI S100
フーガII S100
渡辺良一 地 130×320センチ
2009年6月8日(月)-13日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
□http://www.shutaiten.com/top.html
■第44回主体展(2008年)
■第6回主体美術北海道グループ展(2006年、画像なし)
■第5回(2004年、画像なし)
■主体美術8人展(2001年)
■黒木孝子個展(2008年)
■永井美智子個展(2008年)
■工藤悦子個展-悠久の華(2008年)
■水戸麻記子展 MITORAMA 14(2008年)
主体美術は、1964年に自由美術から分かれて発足しており、団体公募展のなかでは歴史の新しい部類に入ります。
創立会員のひとりに、道内画壇に重きをなした故小谷博貞さんが名を連ねており、道内関係者も多いです。部門は絵画のみで、いまも東京都美術館を会場としています。
最近では、若者の出品料を無料にするとうたって話題を呼びました。
北海道展は1994年スタートし、2-3年おきに開かれています。道内在住者のほか、ゆかりのメンバーも出品します。
他の公募展の道支部展と異なる点として、展覧会とあわせて関係者の個展なども同時多発的に開くことです。ことしも、会員の個展が前後につづき、ちょっとした「主体ウイーク」のようになっています。
ことしは、札幌時計台ギャラリーの2階3室すべてを会場としています。
A室で気になったのは、渡辺良一さん(網走管内美幌町)の「地」です。
横長の、三連画的な構成の画面で、左右の幅には、横に5列、縦13列の横長の長方形が規則的に正しく貼りつけられています(左右とも、ところどころ欠落があるため、いずれも108個ずつになっています)。中央部には、茶色の不定形の板が貼りつけられ、ところどころ赤い線で区分されています。筆者の目には、どこかの土地と国境を模した地図のようにみえてしまいます。
A室で気になったのは、渡辺良一さん(網走管内美幌町)の「地」です。
横長の、三連画的な構成の画面で、左右の幅には、横に5列、縦13列の横長の長方形が規則的に正しく貼りつけられています(左右とも、ところどころ欠落があるため、いずれも108個ずつになっています)。中央部には、茶色の不定形の板が貼りつけられ、ところどころ赤い線で区分されています。筆者の目には、どこかの土地と国境を模した地図のようにみえてしまいます。
これが、たとえば「ファルージャ」とか「クルディスタン」といった題がついていれば、政治的な含意があることが一目瞭然です。漠然とした題と画面であるがゆえに、見る者に考えさせる作品になっているといえるかもしれません。
また、続橋守さんの3点を見て、ちょっとびっくり。
3年前の個展にくらべると、かなり抽象化が進んでいました。
齋藤典久さんも道外勢。緑を帯びた青が画面を広く覆っています。
黒木孝子さん、永井美智子さんは安定した抽象画を出品しています。
香西富士夫さんも人間をデフォルメして戯画化した、いつもの独特の画風。
釧路の門屋武史さんは、機械と、神話の人物を同居させたような、ふしぎな世界をつくっています。
B室にはいろいろなタイプの作品が集まりました。
なんといっても目を引くのは、かつて札幌で活躍していた橋本礼奈さん。屏風型の作品です。モティーフになっているのは4人の裸の乳幼児。赤い毛布の上で立ったり寝転がったりしています。
わざわざ毛布のほうを題名にしているのがおもしろい。
「ミトラマ」と題した個展でおなじみの水戸麻記子さんの作品もでかいです。夏の夕べ、ゆかた姿で室内に寝そべる女性が構図の中心になっていますが、ちゃぶ台の上には「鬼太郎のおやじ」のように茶碗につかっているこびとがいるし、奥でファミコンをやってる男性が見ているテレビはチャンネルのついた1960年代のものだし(接続できるのか!?)、縁側にはシーサーをはじめ得体の知れないものがひしめいているし、まさにミトラマワールド全開。
従来と異なるのは、オレンジと緑系で画面が統一されていることで、これも、現実離れした性格を画面にあたえています。
森昌子さんの作品は初めて拝見しましたが、2点とも横位置の抽象画です。
「さし向かいの孤独」は、2本の太い帯が画面を横断しており、現実の人間社会についていろいろ考えさせられました。
寒色を多用したシャープな画風を展開する前川アキさんは、これまで縦横に画面を走り回っていた水色の太い線がやや減っています。
C室では、巨大な画面にパウンドケーキを思わせる緑の塊をどーんと描いた十河幸喜さんの大作に驚かされます。
船川照枝さんの絵がすっかり抽象化していました。
もともと、モティーフが「こわれる」ことに抵抗感がない人でしたが…(うまく言えなくてすいません)。
非常に多くの色がちりばめられています。
全体的に、抽象画や写実的な絵など、かなりバラエティに富んだ展覧会でした。
ベテラン野本醇さんの姿がないのが気になります。
出品作は、次の通り。
浅野 修 虚と実の大地 120×120センチ
畑 110×227センチ
石崎哲男 須弥山 194×224センチ
大場律子 流木1 F100
流木2 F100
門屋武史 記憶の扉 F130
工藤悦子 悠久の華 S120
黒木孝子 連なる M150
香西富士夫 会話=ふ・ん F100
会話=へ・ん F100
近藤健一 風景の中の形 F130
齋藤典久 kilronan F100
竹島俊之 桟橋のある群像A F100
桟橋のある群像B F100
続橋 守 黒の構成 93×132センチ
遺構 F30
足尾 M30
十河幸喜 Me-Shi-A-Ga-Re 182×237センチ(4枚組み風景)
永井美智子 シャンテ 162×145センチ
長嶋完治 砂の柩1 F100
砂の柩2 F100
橋本礼奈 薔薇色の毛布 182×260センチ
東原こずえ 刻 S100
波紋 S100
藤代康子 廃船I F100
廃船II S100
船川照枝 古いトロッコ F100
廃車2台(トロッコ) F100
前川アキ 氷原 S100
氷原 S100
水戸麻記子 草々 162×224センチ
水戸部千鶴 レクイエム M60
トルソ F50
小さなトルソ 100×50センチ
森 昌子 浪漫 P100
さし向かいの孤独 P100
森 幸子 フーガI S100
フーガII S100
渡辺良一 地 130×320センチ
2009年6月8日(月)-13日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
□http://www.shutaiten.com/top.html
■第44回主体展(2008年)
■第6回主体美術北海道グループ展(2006年、画像なし)
■第5回(2004年、画像なし)
■主体美術8人展(2001年)
■黒木孝子個展(2008年)
■永井美智子個展(2008年)
■工藤悦子個展-悠久の華(2008年)
■水戸麻記子展 MITORAMA 14(2008年)