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■高橋靖子展 (9月30日まで)

2007年09月29日 00時30分16秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 日記を書き継ぎ、日々を紡ぐように線を集積させ続ける高橋靖子さんが、深川市内の2会場で個展をひらいています。
 深川駅前のアートホール東洲館では、ここ20年ほどの油彩を、回顧展ふうに展示。
 駅から徒歩20分ぐらいの、しずかな住宅街のなかで、渡辺通子さん(全道展会友)が主宰する小さな建物「うなかがめーゆの美術館」では、刺繍を主体に、水彩やコラージュなどの小品をならべています。


 話は変わって…。

 1994年にベストセラーになった「大往生」(永六輔著、岩波新書)の帯に、子どもの問いとして、こんなことばが書かれていました。

 どうせ死ぬのにどうして生きてるの?

 究極の質問です。

 もしかしたら、答えがこの中に書いてあるかもしれない。
 そう思って読みましたが、書いてありませんでした。

 よく考えれば、あたりまえの話です。
 600円かそこらですぐわかれば、苦労はしません。

 生きとし生けるものにはすべて寿命があります。
 絵筆をとる人は
「もしかしたら、作品はじぶんよりも生きながらえてくれるかもしれない」
と思いながら、筆を走らせているのかもしれません。
 それと同時に、将来のことをわすれて画面に没入できるからこそ、制作しているのかもしれません。

 永遠(=作品が残ること)。
 そして、永遠としての現在(=制作への没入)。


 高橋さんも、じぶんが生きている(いた)ことのあかしとして、絵を描いているのではないか。
 しかも、絵としてかたちをねりあげるのもじれったくなってきて、直接に、日々を生きたあかしを、キャンバスに刻もうとしているのではないだろうか…。
 造形ということをすっかり放棄したかのような、オールオーバーに文字や点がかかれた近作を見ていると、そんな思いに駆られます。

06年8月20日(日曜日)曇り後晴レ 真夏日32℃
大麻エポア 絵画教室ぐるーぷ心もよう

終戦記念日
06年8月15日火曜日くもりむし暑し

06年8月5日土曜日快晴暑イ1日
山の手ギャラリー 田村佳津子展

ピーナッツ入りぜんざい 200円

1945年8月15日 かたばみの葉


 「0'6記」(2005年、120F)に、もっぱら白の文字でかかれていたことばの一部です。
 キャンバスには、これらのことばのほかに、おびただしい数の短い線がオールオーバーにひかれ、古い切手がコラージュされています。
 そして、みずからの「生」をアピールするかのように、名前のイニシャルである「Y」の文字が、あちこちにかかれています。

 目を引くのは、気象関係の記述と、知己の命日など死に関する記述が多いことです。
 読んだ本や、見た映画の題名などもありますが。

 筆者の考えすぎかもしれませんが、画面に記された日記のような文字から、高橋さんの
「生きたい!」
という痛烈な思いが、つたわってくるような気がしました。

 一方「うなかがめーゆの美術館」のほうは、刺繍といっても、絵画作品と共通するような抽象作品。
 オールオーバーに、縦横無尽に、糸が走ります。
 これも、高橋さんの日々の行為の集積です(その意味では、高橋さんの作品は、楢原武正さんと共通するものがあるかもしれません)。


 高橋さんは、自由美術協会会員、全道展会員。江別在住。 

 出品作は次の通り。
◎アートホール東洲館=大きさが明記してあるものは油彩
線と点 03年(水彩)
兎小屋 80年 60F
コーヒーミルのある静物 82年 100F
傘を差す女 81年(水彩)
S字 93年 120F
0'5記 05年 100S
円・A 98年 130F
円・B 98年 130F
0'7記 06年 120F
0'6記 05年 120F
黒地の絵 92年(水彩)
律動 94年 130F
ストライプ(BLUE) 90年 130F
深緑色のストライプ 91年 120F
ストライプ(RED) 89年 100F
グラデーションII 2000年 120F
グラデーションI 2000年 120F
0'4記 04年 120F

◎うなかがめーゆの美術館
蠢くものたち
虫の巣穴
無題
無題A
無題B
無題C
無題D
プータン2
果実
蝶と花と 2003-2005
夜と昼の間
横に流れるもの
無題
ピリオド
こぼれる

黒猫の散歩道
人形(素描)
林檎(同)


07年9月17日(月)-30日(日)10:00-18:00(最終日-16:00)、火曜休み、アートホール東洲館(深川市1-9、深川駅前)
9月16日(日)-30日(日)10:30-17:30(最終日-16:00)、月・金曜休み、うなかがめーゆの美術館(深川市9-17)




自由美術/北海道グループ展(07年)
同上(03年)
同上(02年、画像なし)

05年の個展「祝祭へ」の作品画像
03年の個展(画像なし)
札幌の美術2003

高橋靖子展(01年、画像なし)
Ryoさんのえーとあーと。関聨ファイル


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2 コメント

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究極の問い (shino)
2007-09-29 08:05:41
興味深く拝見しました。
最近、身近な人が出産したのですが、
新生児をみていると、命を持って生きようとすることそれだけで尊いと感じました。
「なぜ表現するか」常々不思議に感じてきましたが、
少し繋がった気がしました。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2007-09-29 22:26:04
 shinoさん、こんばんは。
 舌足らずな文章を最後まで読んでいただいて恐縮です。
 深川は特急で1時間あまり。どうですか、最終日に行ってみては。
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