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■第59回毎日書道展北海道展 (9月30日まで)

2007年09月29日 21時31分06秒 | 展覧会の紹介-書
 日展とならび、国内最大の書展の地方展。
 「わが県は◎◎が盛ん」「この地方は▲▲のメッカ」
というときは、時として割り引いて聞いたほうがよいこともあるけれど、北海道が書の盛んな土地であることは、本当らしいです。
 毎日展も、審査会員が、首都圏1都3県に次いで多い部門もあります(つまり、大阪府や愛知県より多い)。
 そのせいか、両会場に展示されているのは7部門1397点(26日夕刊の毎日新聞より)! この大半が、道内からの入選作なのです。
 筆者は、市民ギャラリー会場には初めて行ったけれど、すごい量でしたよ。道展、全道展の2段がけなんて、問題じゃない。とにかく作品と作品の隙間を詰めて、第1室にも移動壁を総動員し、ぎゅうぎゅうに詰め込んでいました。
 ちょうど、作品解説の時間にあたっていたので、観客の数もかなりのものでした。
 筆者は知らなかったのですが、解説って、各部門それぞれ同時並行でやるのですね。
 近代詩文と漢字のどっちも出してる人とかって、いるでしょうに。まあ、いいけど。

 見るだけの人なら、審査会員の作品はスカイホールに集中しているので、そちらだけ見れば事足りるかもしれません(じつは、「見るだけの人」があまりいないのが、書壇にとって大きなモンダイなんじゃないかと思うんですけど)。
 毎日展も、書のすそ野を広げようと、いろいろな取り組みをしているようです。
 近年、「秀作賞」と一般入選の間の賞として「佳作賞」があらたにもうけられました。これだと「わたしにも手がとどくかも」と、出品者の意欲をそそります。
 また、「U-23」(アンダー23歳)部門も新設されました。この部門の出品作を見ていても、筆者のようなしろうとには、オトナの作品とどこがちがうのか、よくわからないほど、堂々とした作品ぞろいでした。
 森田絢美「海鳴りの…」は空白のとりかたが大胆。
 木野田舞の前衛書も、思い切った造形。木野田さんは近代詩文では奨励賞を得ていました。
 大和大拙「花びら」は、部首ごとにいったんバラバラにしたような組み立てが斬新です。
 U23の毎日賞は、本間恵美子「如轉蓮」と西川竜星「漂ふ光の環」が受賞。
 前者は安定感があり、墨の潤渇もみごと。後者は、右肩上がりに統一した筆勢に感心しました。

 市民ギャラリーの白眉は、会員賞のコーナーでしょう。
 同会場でここだけは、道外からの作品も陳列されています。全国の会員でわずか26人という難関で、事実上の同展のグランプリです。
 その中で、道内からは、帯広の野坂武秀の前衛書「ZENのリズム2007 原点」と、深江京州の近代詩文書「靡く漣の旋律」がえらばれました。
 前者は黒が壁のように紙を埋め尽くすパワフルな作品、後者は淡墨による線としぶきが紙全体に激しく、しかしバランスを保って展開する作品です。

 この会場で閉口したのは、漢字の多字数書が非常に多いこと。
 見ても、どこが良くて、どこが悪いのか、ぜんぜんわからないんですよ。
 ただ、関口ユリ子の作品は、字と字との間を離した独創的な配置が目を引きました。賞には漏れていましたが。
 井上夕霞も、直線を多用しつつ堅くならず、字と字のつながりに妙味を感じました。

 かなは、意外に少ないです。
 道内もかなの作家は読売書法展に移った人があり、その影響が尾を引いているのでしょうか。
 見ておもしろいのは近代詩文と前衛。
 近代詩文では、松田亢雪「旅人かえらず」が、地味ながらぼくとつな味わいで、見ていてしみじみしちゃいました。西脇順三郎の詩。
 福嶋和子「花火」は白秋の詩。詩そのものの持つリズムと、筆のリズムとが一致しています。詩句をただの素材にするのではなく、ちゃんと読み込んで作品にしている点に好感をもちました。

 前衛では、このblogでもおなじみの八重柏冬雷「遊び」が、まるで水墨画の抽象みたいな、独自の世界をつくっています。
 鈴木添幽も、細かい部分と、大胆な切れ味とが同居した、シャープな作品でした。


07年9月26日(水)-30日(日)10:00-18:00(最終日-16:30)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)~会員、会友、公募
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B)~審査会員・役員

作品解説会
=26日10:30、札幌市民ギャラリー。中西春湖(漢字I)、新谷谿雪(漢字II)、大川壽美子(かな)、我妻緑巣(近代詩文書)、竹下青蘭(前衛・大字書)、越坂久雄(篆刻)
=30日11:00、札幌市民ギャラリー。出村太幹(漢字I)、河原啓雲(漢字II)、安喰のり子(かな)、高橋陌遥(近代詩文書)、西田徹心(前衛・大字書)、越坂久雄(篆刻)

(文中の敬称は略させていただきました)

□毎日書道会 http://www.mainichishodo.org/index.php


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2 コメント

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感謝です (toraian)
2007-09-30 19:52:33
毎日書道展、そして我が師の長沼透石書個展を取り上げていただき感謝申し上げます。

ヤナイさんのおっしゃるとおり、
「書道はわからないから見ない。」という人たちに
どう足を運んでいただくか。
我々の責任、そして課題だと思います。
返信する
Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2007-10-01 05:38:21
toraianさん、ありがとうございます。
このエントリではスカイホールのほうにぜんぜんふれられませんでした。
余裕があれば、書き足したいと思います。

こんどは連盟展ですね。
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