日展とならび、国内最大の書展の地方展。
「わが県は◎◎が盛ん」「この地方は▲▲のメッカ」
というときは、時として割り引いて聞いたほうがよいこともあるけれど、北海道が書の盛んな土地であることは、本当らしいです。
毎日展も、審査会員が、首都圏1都3県に次いで多い部門もあります(つまり、大阪府や愛知県より多い)。
そのせいか、両会場に展示されているのは7部門1397点(26日夕刊の毎日新聞より)! この大半が、道内からの入選作なのです。
筆者は、市民ギャラリー会場には初めて行ったけれど、すごい量でしたよ。道展、全道展の2段がけなんて、問題じゃない。とにかく作品と作品の隙間を詰めて、第1室にも移動壁を総動員し、ぎゅうぎゅうに詰め込んでいました。
ちょうど、作品解説の時間にあたっていたので、観客の数もかなりのものでした。
筆者は知らなかったのですが、解説って、各部門それぞれ同時並行でやるのですね。
近代詩文と漢字のどっちも出してる人とかって、いるでしょうに。まあ、いいけど。
見るだけの人なら、審査会員の作品はスカイホールに集中しているので、そちらだけ見れば事足りるかもしれません(じつは、「見るだけの人」があまりいないのが、書壇にとって大きなモンダイなんじゃないかと思うんですけど)。
毎日展も、書のすそ野を広げようと、いろいろな取り組みをしているようです。
近年、「秀作賞」と一般入選の間の賞として「佳作賞」があらたにもうけられました。これだと「わたしにも手がとどくかも」と、出品者の意欲をそそります。
また、「U-23」(アンダー23歳)部門も新設されました。この部門の出品作を見ていても、筆者のようなしろうとには、オトナの作品とどこがちがうのか、よくわからないほど、堂々とした作品ぞろいでした。
森田絢美「海鳴りの…」は空白のとりかたが大胆。
木野田舞の前衛書も、思い切った造形。木野田さんは近代詩文では奨励賞を得ていました。
大和大拙「花びら」は、部首ごとにいったんバラバラにしたような組み立てが斬新です。
U23の毎日賞は、本間恵美子「如轉蓮」と西川竜星「漂ふ光の環」が受賞。
前者は安定感があり、墨の潤渇もみごと。後者は、右肩上がりに統一した筆勢に感心しました。
市民ギャラリーの白眉は、会員賞のコーナーでしょう。
同会場でここだけは、道外からの作品も陳列されています。全国の会員でわずか26人という難関で、事実上の同展のグランプリです。
その中で、道内からは、帯広の野坂武秀の前衛書「ZENのリズム2007 原点」と、深江京州の近代詩文書「靡く漣の旋律」がえらばれました。
前者は黒が壁のように紙を埋め尽くすパワフルな作品、後者は淡墨による線としぶきが紙全体に激しく、しかしバランスを保って展開する作品です。
この会場で閉口したのは、漢字の多字数書が非常に多いこと。
見ても、どこが良くて、どこが悪いのか、ぜんぜんわからないんですよ。
ただ、関口ユリ子の作品は、字と字との間を離した独創的な配置が目を引きました。賞には漏れていましたが。
井上夕霞も、直線を多用しつつ堅くならず、字と字のつながりに妙味を感じました。
かなは、意外に少ないです。
道内もかなの作家は読売書法展に移った人があり、その影響が尾を引いているのでしょうか。
見ておもしろいのは近代詩文と前衛。
近代詩文では、松田亢雪「旅人かえらず」が、地味ながらぼくとつな味わいで、見ていてしみじみしちゃいました。西脇順三郎の詩。
福嶋和子「花火」は白秋の詩。詩そのものの持つリズムと、筆のリズムとが一致しています。詩句をただの素材にするのではなく、ちゃんと読み込んで作品にしている点に好感をもちました。
前衛では、このblogでもおなじみの八重柏冬雷「遊び」が、まるで水墨画の抽象みたいな、独自の世界をつくっています。
鈴木添幽も、細かい部分と、大胆な切れ味とが同居した、シャープな作品でした。
07年9月26日(水)-30日(日)10:00-18:00(最終日-16:30)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)~会員、会友、公募
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B)~審査会員・役員
作品解説会
=26日10:30、札幌市民ギャラリー。中西春湖(漢字I)、新谷谿雪(漢字II)、大川壽美子(かな)、我妻緑巣(近代詩文書)、竹下青蘭(前衛・大字書)、越坂久雄(篆刻)
=30日11:00、札幌市民ギャラリー。出村太幹(漢字I)、河原啓雲(漢字II)、安喰のり子(かな)、高橋陌遥(近代詩文書)、西田徹心(前衛・大字書)、越坂久雄(篆刻)
(文中の敬称は略させていただきました)
□毎日書道会 http://www.mainichishodo.org/index.php
「わが県は◎◎が盛ん」「この地方は▲▲のメッカ」
というときは、時として割り引いて聞いたほうがよいこともあるけれど、北海道が書の盛んな土地であることは、本当らしいです。
毎日展も、審査会員が、首都圏1都3県に次いで多い部門もあります(つまり、大阪府や愛知県より多い)。
そのせいか、両会場に展示されているのは7部門1397点(26日夕刊の毎日新聞より)! この大半が、道内からの入選作なのです。
筆者は、市民ギャラリー会場には初めて行ったけれど、すごい量でしたよ。道展、全道展の2段がけなんて、問題じゃない。とにかく作品と作品の隙間を詰めて、第1室にも移動壁を総動員し、ぎゅうぎゅうに詰め込んでいました。
ちょうど、作品解説の時間にあたっていたので、観客の数もかなりのものでした。
筆者は知らなかったのですが、解説って、各部門それぞれ同時並行でやるのですね。
近代詩文と漢字のどっちも出してる人とかって、いるでしょうに。まあ、いいけど。
見るだけの人なら、審査会員の作品はスカイホールに集中しているので、そちらだけ見れば事足りるかもしれません(じつは、「見るだけの人」があまりいないのが、書壇にとって大きなモンダイなんじゃないかと思うんですけど)。
毎日展も、書のすそ野を広げようと、いろいろな取り組みをしているようです。
近年、「秀作賞」と一般入選の間の賞として「佳作賞」があらたにもうけられました。これだと「わたしにも手がとどくかも」と、出品者の意欲をそそります。
また、「U-23」(アンダー23歳)部門も新設されました。この部門の出品作を見ていても、筆者のようなしろうとには、オトナの作品とどこがちがうのか、よくわからないほど、堂々とした作品ぞろいでした。
森田絢美「海鳴りの…」は空白のとりかたが大胆。
木野田舞の前衛書も、思い切った造形。木野田さんは近代詩文では奨励賞を得ていました。
大和大拙「花びら」は、部首ごとにいったんバラバラにしたような組み立てが斬新です。
U23の毎日賞は、本間恵美子「如轉蓮」と西川竜星「漂ふ光の環」が受賞。
前者は安定感があり、墨の潤渇もみごと。後者は、右肩上がりに統一した筆勢に感心しました。
市民ギャラリーの白眉は、会員賞のコーナーでしょう。
同会場でここだけは、道外からの作品も陳列されています。全国の会員でわずか26人という難関で、事実上の同展のグランプリです。
その中で、道内からは、帯広の野坂武秀の前衛書「ZENのリズム2007 原点」と、深江京州の近代詩文書「靡く漣の旋律」がえらばれました。
前者は黒が壁のように紙を埋め尽くすパワフルな作品、後者は淡墨による線としぶきが紙全体に激しく、しかしバランスを保って展開する作品です。
この会場で閉口したのは、漢字の多字数書が非常に多いこと。
見ても、どこが良くて、どこが悪いのか、ぜんぜんわからないんですよ。
ただ、関口ユリ子の作品は、字と字との間を離した独創的な配置が目を引きました。賞には漏れていましたが。
井上夕霞も、直線を多用しつつ堅くならず、字と字のつながりに妙味を感じました。
かなは、意外に少ないです。
道内もかなの作家は読売書法展に移った人があり、その影響が尾を引いているのでしょうか。
見ておもしろいのは近代詩文と前衛。
近代詩文では、松田亢雪「旅人かえらず」が、地味ながらぼくとつな味わいで、見ていてしみじみしちゃいました。西脇順三郎の詩。
福嶋和子「花火」は白秋の詩。詩そのものの持つリズムと、筆のリズムとが一致しています。詩句をただの素材にするのではなく、ちゃんと読み込んで作品にしている点に好感をもちました。
前衛では、このblogでもおなじみの八重柏冬雷「遊び」が、まるで水墨画の抽象みたいな、独自の世界をつくっています。
鈴木添幽も、細かい部分と、大胆な切れ味とが同居した、シャープな作品でした。
07年9月26日(水)-30日(日)10:00-18:00(最終日-16:30)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)~会員、会友、公募
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B)~審査会員・役員
作品解説会
=26日10:30、札幌市民ギャラリー。中西春湖(漢字I)、新谷谿雪(漢字II)、大川壽美子(かな)、我妻緑巣(近代詩文書)、竹下青蘭(前衛・大字書)、越坂久雄(篆刻)
=30日11:00、札幌市民ギャラリー。出村太幹(漢字I)、河原啓雲(漢字II)、安喰のり子(かな)、高橋陌遥(近代詩文書)、西田徹心(前衛・大字書)、越坂久雄(篆刻)
(文中の敬称は略させていただきました)
□毎日書道会 http://www.mainichishodo.org/index.php
ヤナイさんのおっしゃるとおり、
「書道はわからないから見ない。」という人たちに
どう足を運んでいただくか。
我々の責任、そして課題だと思います。
このエントリではスカイホールのほうにぜんぜんふれられませんでした。
余裕があれば、書き足したいと思います。
こんどは連盟展ですね。