筆者は池澤夏樹の良い読者ではない。
でも、そうした人でもたのしめる展覧会だと思う。
文学館の展覧会というと、自筆原稿とか古い本とか、地味な印象がある。でも、今回は、池澤夏樹が世界で撮った写真が壁せましと展示されており、おもしろかった。
ほんとうに、この人は「旅する作家」なんだなあと思った。
彼の写真の腕がなかなかのものなのは、読売新聞連載の小説に毎日、じぶんで撮影した写真を添えていることからも知っていた。
でも、あらためて見ると、北海道、沖縄、南洋、インドネシア、イラク、欧洲など、その土地土地の空気感がつたわってくる、いい写真だった。もちろん、職業写真家が撮るような本格的なものではないのだが、それでいいのだと思う。
筆者が最初に池澤夏樹の名前を知ったのは、1970年代後半の「現代詩手帖」だった。彼はエジプトを題材にした詩を書いていた。
だから、今回の展覧会が、ナセル湖など、エジプトを撮った写真で始まっているのは、なつかしかった。
つぎに彼の名に親しむのは、80年代の北海道新聞日曜版である。
当時、日曜版の2面には、池澤夏樹と出久根達郎がエッセーを連載していた。
どちらもめっぽうおもしろく、日曜版をひらくのが楽しみだった。
池澤は芥川賞をとる前だし、出久根は直木賞をとる前で、一般には名前を知られていないのだから、そのころの北海道新聞の目のつけどころのよさには、筆者が言うのもなんだけど、脱帽してしまう。
なお、そのときの連載のエッセーは現在、みすず書房から「読書癖」という題で出版されている。
それにしても、これだけ豊富な読書経験を有する作家が、これほど転居と旅を重ねているというのは、ふしぎでしかたがない。
蔵書は、いったいどうしているのだろう?
じつは筆者は、1度だけ池澤氏にお会いしている。
5年ほど前だったと思うが、筆者の職場を訪れたのだ。
デスクがインタビューして、筆者は横でそれを書き写していた。
どうして沖縄に移り住んだのか-といった話をしていたと思うのだが、どういうわけか、そのときの記憶はほとんどない。
その後「イラク戦争」が起こった。
彼は本橋成一とともにイラクに飛び、「イラクの小さな橋を渡って」を書き、短編映画「DO YOU BOMB THEM?」を制作した。
この17分間のビデオは会場で流れていた。
市場や、食堂や、古本市が写っていた。遊園地も。
そうだ。イラクにも遊園地があるのだ。
いまでもあるのだろうか。
池澤夏樹は、イラク戦争に反対した。彼なりの意思表示を、きちんと行った。
筆者は、それだけでも偉いと思う。
あれから3年。
イラクは混迷の度を深めている。
10月14日(土)-11月26日(日)9:30-17:00(入場は-16:30)
道立文学館(中央区中島公園)
でも、そうした人でもたのしめる展覧会だと思う。
文学館の展覧会というと、自筆原稿とか古い本とか、地味な印象がある。でも、今回は、池澤夏樹が世界で撮った写真が壁せましと展示されており、おもしろかった。
ほんとうに、この人は「旅する作家」なんだなあと思った。
彼の写真の腕がなかなかのものなのは、読売新聞連載の小説に毎日、じぶんで撮影した写真を添えていることからも知っていた。
でも、あらためて見ると、北海道、沖縄、南洋、インドネシア、イラク、欧洲など、その土地土地の空気感がつたわってくる、いい写真だった。もちろん、職業写真家が撮るような本格的なものではないのだが、それでいいのだと思う。
筆者が最初に池澤夏樹の名前を知ったのは、1970年代後半の「現代詩手帖」だった。彼はエジプトを題材にした詩を書いていた。
だから、今回の展覧会が、ナセル湖など、エジプトを撮った写真で始まっているのは、なつかしかった。
つぎに彼の名に親しむのは、80年代の北海道新聞日曜版である。
当時、日曜版の2面には、池澤夏樹と出久根達郎がエッセーを連載していた。
どちらもめっぽうおもしろく、日曜版をひらくのが楽しみだった。
池澤は芥川賞をとる前だし、出久根は直木賞をとる前で、一般には名前を知られていないのだから、そのころの北海道新聞の目のつけどころのよさには、筆者が言うのもなんだけど、脱帽してしまう。
なお、そのときの連載のエッセーは現在、みすず書房から「読書癖」という題で出版されている。
それにしても、これだけ豊富な読書経験を有する作家が、これほど転居と旅を重ねているというのは、ふしぎでしかたがない。
蔵書は、いったいどうしているのだろう?
じつは筆者は、1度だけ池澤氏にお会いしている。
5年ほど前だったと思うが、筆者の職場を訪れたのだ。
デスクがインタビューして、筆者は横でそれを書き写していた。
どうして沖縄に移り住んだのか-といった話をしていたと思うのだが、どういうわけか、そのときの記憶はほとんどない。
その後「イラク戦争」が起こった。
彼は本橋成一とともにイラクに飛び、「イラクの小さな橋を渡って」を書き、短編映画「DO YOU BOMB THEM?」を制作した。
この17分間のビデオは会場で流れていた。
市場や、食堂や、古本市が写っていた。遊園地も。
そうだ。イラクにも遊園地があるのだ。
いまでもあるのだろうか。
池澤夏樹は、イラク戦争に反対した。彼なりの意思表示を、きちんと行った。
筆者は、それだけでも偉いと思う。
あれから3年。
イラクは混迷の度を深めている。
10月14日(土)-11月26日(日)9:30-17:00(入場は-16:30)
道立文学館(中央区中島公園)