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鈴木昭男「点音」コンプリート・続き

2017年10月07日 12時48分56秒 | 札幌国際芸術祭
(承前)

 札幌芸術の森・工芸館の向かいにある「有島武郎旧邸」では、鈴木昭男さんのアーカイブ展示が行われていました。

 前回の芸術祭では立体作品が展示されてれっきとした会場のひとつという感じだった有島旧邸ですが、今回は芸術祭に割いているスペースは一部分で、1階などはいつもとおなじように、有島武郎関係の資料が並んでいます。

 2階の部屋に、これまでの、インタビューなどを載せた書籍や雑誌、展覧会の小冊子などが置かれ、かなりの分量の資料を手にとって読むことができます。

 その資料によると、これまで「点音」は、和歌山、名古屋、多治見(岐阜県)、一宮(同)、柏(千葉面)、トリノ(イタリア)、ブリュッセル(ベルギー)、ニューカッスル(英国)、ボン(ドイツ)などで行われてきていることがわかりました。そういうわけで、資料には英語などの文献もたくさん交じっています。
 道内での展開は初めてです。

 また、これまでは一般の街路で行うことが多く、野外彫刻群の中というのはめずらしいようです。


 膨大な資料をぱらぱらとめくっていると、鈴木さんが書いたエッセーが目に留まりました。
 あまり映画を見るほうではないが、タルコフスキーの『ストーカー』は繰り返し見た、という意味のことを書いていました。


 鈴木さんは1941年(昭和16年)生まれ。
 日本でのサウンドアートの先駆者的存在で、欧洲での活動も多く、87年にはドクメンタに参加しています。
 東経135度を舞台にした催しに出品したのを機に、京都府北部に移住し、いまも京丹後市在住です。

 今回招かれたのは、大友さんなりの、先駆者への敬意(リスペクト)だったのかもしれません(刀根康尚さんも同様)。

 次の画像にあるように、「点音おとだて」マークが、有島旧邸の2階の廊下に一つだけ置いてありました。

 ここの点音マークの特徴は、靴をぬいでいるので、マークの感触が直接足の裏に伝わってくることです。


 こんなことを書くと、あるいは「美術中心史観」とのおしかりを受けるかもしれませんが、鈴木さんの、あまりにも外界に介入しない制作姿勢を見ていると、戦後日本の美術で大きなエポックであった「もの派」を思い出さざるを得ません。

世界は世界のままあるのに、どうして創造することができようか。ぼくにできるのはせいぜい、ありのままの世界の中でありのままにしていること、それをあざやかに見せることにしかない。


 李禹煥 リ ウ ファンが引いた関根伸夫の言葉です。
 『美術のゆくえ、美術史の現在』(平凡社)所収の森口まどか論文から引きました。

 世界の中に、力業による作品を持ち込むのではなく、世界は世界のままにあることを提示する。いわば「ありのままの哲学」が、もの派と鈴木さんに共通する姿勢ではないかと思いました。


 なお、8月11日に鈴木さんが行ったパフォーマンスについては筆者は見ていません。まわりでは評判が良かったことを、書き添えておきます。


□公式サイト http://www.akiosuzuki.com/


(この項了) 


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